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【笛吹市春日居郷土館】「わが町の八月十五日展~学校日誌で振り返る八月十五日~」を見に行く

はじめに

 笛吹市春日居郷土館・小川正子記念館は、笛吹市の郷土資料館であるとともに笛吹市春日居町出身の小川正子の記念館を併設する施設です。もとは、2004年(平成16年)の町村合併により笛吹市の一部となった春日居町の郷土資料館でした。
 山梨県内は平成の大合併が積極的に進められましたが、合併後は博物館、美術館といった類似施設が複数ある場合は統合され(南アルプス市、北杜市など)、1館のみの場合には展示内容はほぼ旧町村時代のまま存続している(中央市など)といったケースに分かれるようです。笛吹市の春日居郷土館の場合は後者のケースといえるでしょう。
 春日居支所や春日居ふるさと図書館が隣接しており、ここが旧役場機能の集まる場所であることが分かります。

後方からの外観

春日居郷土館

 春日居郷土館の中に入るとエントランスホールの天井に届きそうなくらいの三重塔の模型があります。至近に白鳳時代の寺院と推定される寺本廃寺遺跡と塔の遺構があることによるものです。

寺本廃寺の三重塔の推定模型

 ただしこちらに、考古資料に関する常設展示はありません。日本遺産「星降る中部高地の縄文世界」に笛吹市も含まれていますが「三十三番土偶札所巡り」のご朱印になっている土偶の「みさかっぱ」「ヤッホー」ほか「肩こり土偶」「妊婦土偶」が受付の横のケースに展示されてれているのみです。ほかには深鉢土器があるだけでした。

「みさかっぱ」「ヤッホー」の後方に深鉢土器

 企画展示室で年数回テーマに合わせた展示をしており、考古資料もそうしたテーマのひとつとしてでないとまとまった展示はされません。

小川正子記念館

 小川正子に関する資料は通年展示されています。この郷土館が、旧春日居町が小川正子を名誉町民として顕彰するために建設された施設だからです。

記念館は撮影不可

 小川正子(1902年~1943年、明治35年~昭和18年)は旧春日居町出身の医師でハンセン病患者救済活動を行った人物です。正子が勤務していたハンセン病養施設長島愛生園に関する資料や著書『小島の春』に関する資料などが展示されています。『小島の春』は1938年(昭和13年)に出版され、1940年(昭和15年)には映画化され、当時のブームになりました。
 屋外展示として正子が療養した実家の離れが移築されています。こちらは撮影可能になっています。

人影が・・・と驚いたら正子の人形でした

わが町の八月十五日展

 「わが町の八月十五日展」(2022.7.13~8.29)は、合併前の春日居町時代から続く恒例の戦争の記憶に関する展示です。今回で25回目になります。この「ハ月十五日展」の期間中は無料で入館できます。
 広い展示室には笛吹市内で出征して亡くなった人たち千人余の遺影が並べられています。およそ笛吹市内の戦没者の半分弱というから大がかりなものです。また、遺族提供の遺品も展示されています。 

広い企画展示室に遺影が並ぶ

 職員の方の説明によれば、遺族も高齢化していて若い世代の遺族に対して遺影の展示の理解が得られないことが増えているといいます。またはじめは遺族会が進めた展示ですが、遺族会も高齢化していて、次の世代に受け継げるか懸念があるそうです。

学校日誌で振り返る八月十五日

 今年のテーマは「学校日誌で振り返る八月十五日」ということで、昭和20年8月15日を記録した学校日誌を展示しています。戦前から今も現地に存在する学校には日誌が保存されていることがあるそうです。これには驚きました。また、学校に頼んで古い保存資料をひっくり返し、探してもらったといいいます。

学校日誌を紹介
展示資料を紹介


 展示されている笛吹市内の4校の学校日誌を見ると「天皇陛下重大放送」「大東亜戦争終結」と日誌は意外にも淡々と記載されていました。日誌は事実のみを伝えるという特性からでしょうか。それとも、後の時代の私たちが思うほど8月15日という日が時代の変換点であると思っていなかったのでしょうか。
 さらに、古くなった学校史を手書きで写し綴った、沿革誌というものも展示されています。そちらの8月15日はもう少し細かに記録されています。 

中央に並ぶケースの中が日誌

 実は昨年も学校日誌をテーマに展示していたそうです。しかし、展示を始めて数日でコロナ拡大に伴うまん延防止法のため、休館になってしまったという経緯があります。予定していた学校日誌に沿革誌も加え今年は展示数が充実したといいます。

おわりに

 対応いただいた職員の方からは「八月十五日展」の経緯について分かりやすく説明していただきました。「八月十五日展」は町村合併しても意義深い展示を続けている好例だと思います。

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