最高裁判所裁判官国民審査
期日前投票のお手伝いをしました。ローテーションでいろいろなところを手伝うのですが、国民審査の用紙交付を担当して感じたことがあります。
一番驚いたのは、国民審査を大事なことと思っていない方が少なからずいるということでした。どの裁判官が対象になるのか、その裁判官がどんな判決をだしたのかという情報がなかなか入手しにくいということはわかります。
私の場合は、2021年6月の夫婦別姓を認めない民法と戸籍法の規定が「合憲」か「違憲」かの判断をした裁判官の氏名をメモしていました。国民審査は、私の想いとは違う意見を出した裁判官に、少なくとも国民の一人は「違うと思う」と伝える貴重な手段ですから、制度を有効活用したいと思っていたからです。
もちろん世間には「夫婦別性」に関心のない方もいるとは思います。しかし、「投票1票格差」、「非正規労働者への退職金不支給」「タクシー運転手の残業手当」「石綿問題」など、多くの方たちにも少なからず関わる事項が最高裁判所で結審されています。
それらの判決に賛同するか、違うと思うか、判決前の裁判官の意見を見て、その結果、その裁判官をやめさせたいと思うならば、投票用紙に「×」を付けるというのが国民審査です。やめさせたいと思わなければ何もつけないで投票します。「×」は無理につけなければならないものではありません。
大変残念ながら、用紙交付をしていた時に耳にした言葉は「わかんない」「情報がない」「この制度はやめた方がいい。わからないもの」「裁判官の名前なんて覚えてない」などなど。
「わからなければ、自分で情報収集してほしい!」と思いつつも、現場ではそのようなことはお伝え出来ません。
「なにも付けなくってもいいんでしょ」という方にも「やめさせたいと思う方がいなければ、そのままで投函してくださって結構です」とお伝えすることまでしかできません。従事者に判断を求めないでほしい・・・。
「わかんないから、適当でいいや」と思っている方に「棄権」できることを積極的にお伝えするのも、せっかくの制度があるのに、もったいない。
というわけで、「なんの情報もない」という方には「選挙公報と一緒に審査公表も配布されているのですが、お手元に届いていませんか?」というのが精いっぱい。「届いてない」という方に「この投票会場にも用意していますが、ご覧になりますか」と聞いても、「なにを今更!」という方もいました。
確かに期日前投票開始日には審査公表は我が家にも配布されていませんでしたので、お手元に届いていなかった場合もあるとは思います。そういう意味では選挙行政に改善すべき点は多々あります。
とはいえ、審査公表を「見たい」と言ってくださって、じっくりと読まれた方も複数いらっしゃいました。投票行為に責任を持つ社会人として、かっこいいなと思いました。
また、情報不足で、不用意に容認したくないので、「棄権する」とおっしゃった方もいます。これも責任ある一つの方法だと思いました。
事前に情報収集した方の中には、情報を手持ちのメモやスマホに入れてこられて、「これを見ながら投票していい?」と聞く方もいらっしゃいました。実際、ちゃんと考え行動されている方も多いのです。
今のこの時代、新聞に加えて、インターネット、NHKなどいろいろな媒体で情報を提供しています。もう少し私たちが暮らしている社会をよりよくしたいと思って情報収集をして、自分の意見や考え方を決めれば、そしてその制度を有効に使えばいいのになと思って業務に従事していました。
次の国民審査の機会には、状況が少しでも改善されていればいいと思いつつ。
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