【書評】『本心』平野啓一郎
ー‘‘本心’’とは?内在される心を巡ってー
心というものの真義について、深く考えさせられたある小説に出会いました。
平野啓一郎先生が記されました、『本心』という物語であります。
物語を読み、私自身が感じたこと、考えたことについて、簡潔にまとめてみました。
最新技術による、VFにより転生された母。朔也は‘‘自由死’’というものが合法化された近未来を舞台に自ら死を選択した母の‘‘本心’’を巡る。
母と交友のあった人たちから、ぼくは本当の母の存在を知る。‘‘死の一瞬前’’、‘‘自己決定’’、そして、‘‘最愛の人の他者性’’について。
本作で印象的な一文があります。「僕は母の人生を、一人の女性の人生として見つめ直していた。その心の色合いは、僕がずっと見定めたいと願っていたよりも、遥かに複雑に混ざり合っていた。」(P.427より引用)
確かに、一人の人間の形成された人格、心というものは非常に複雑な仕組みであると感じました。
現代社会の大きな問題意識としてある、‘‘経済格差にみる貧困’’、‘‘幸福とは何かについて’’など、あらゆるテーマがこの物語には内包されていると感じました。
‘‘自由死’’を巡っての論考は極めて難しいものではありますが、‘‘生と死’’に対しての魂の遍歴を辿ることで私たちは‘‘本心’’の意味を知ると思う。
誰しも、心というものにはその人自身の人格を形成する核というものが存在するものだと思いました。
本心を語ること、それは容易なことではないと考えられます。
心の明暗による、それぞれの形、色合いというものは人によって違っているものだと感じます。
魂の遍歴を辿ることで、今まで見えていなかったものが見える瞬間というのが訪れることがあると思います。
私たちが人と関わりを持ち、本心を巡って、相手のことを理解しようと努めるということはごく自然なことであると感じられます。
言葉には、その人の本心というものが内在されているものであり、私たちは本作から、本心が意味していることを様々な多様性な視点から学ぶ必要があると深く考えさせられました。
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