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【評論】『銀河鉄道の夜』宮沢賢治

ー本当の幸いをめぐる、ジョバンニを通してー


本当の幸せって、なんだろう?
これまで、幸せってなに?ずっと、疑問ばかりが浮かんでいた。
本書を読み、悲しくも、切ない、本当の幸せの意味を見つけました。
『銀河鉄道の夜』の物語の序盤は、何気ない学校の授業風景から始まる。
先生は、星座の図にある白くけぶった銀河帯のところを指して、教室の生徒たちに問い掛ける。
これはなんでしょう?と。
ジョバンニは答えは知っている。しかし、躊躇っている。
親友のカムパネルラや他の生徒たちも手を上げる様子を見て、手を上げようとするもそのままやめてしまう。
先生は、ジョバンニに答えを知っているんじゃないかと問われます。結局、答える事が出来なくなってしまいます。
代わりに、カムパネルラへ問われるが、カムパネルラも答える事が出来ませんでした。
ですが、二人とも答えが星だという事を理解しています。
カムパネルラの家で、読んだ雑誌に描かれたあの銀河の絵の記憶を。

ここで、描かれる興味深いところは登場人物たちの感情表現によるものです。
ジョバンニの内気な性格、カムパネルラの友を思う思いやりのある心についてなど。共通して思うところは、二人の繊細な内面性を窺う事が出来るということだと思います。

そして、場面展開する中で特に印象深いシーンは村の大きなお祭りがある星祭の為に、生徒たちは烏瓜を取りに行くはずが、ジョバンニだけが活版所へ仕事をしに行くところであります。
私自身はこの当時の文字拾いという仕事が具体的にどのような仕事なのかという事を詳しく理解していませんでした。本作を読んで内容を理解する上でとても勉強になり、当時の時代背景に関しての知識も一緒に学べた事はとても大きな経験だと感じた。
ジョバンニの家庭というのは貧しく、母は病であり、父は遠洋漁業の仕事で家にいないという過酷な環境です。
いつも届いているはずの牛乳が今日に限って届いていなく、牛乳屋に牛乳を取りに行きます。しかし、牛乳屋はジョバンニを追い払います。仕方なく帰ると、いじめっ子のザネリとその仲間たち、そこには親友のカムパネルラもいました。
ザネリは、父親の事をバカにする言葉をジョバンニに浴びせて、彼は思わず丘の上の天気輪の柱の下で体を草に投げます。
満天の星空を眺め、ぼーっとしていると気付けばジョバンニは列車の中に座っています。そして、驚くべき事は目の前にはカムパネルラが座っているというところであります。
ここから、ジョバンニとカムパネルラの銀河鉄道の旅が始まります。

『銀河鉄道の夜』で描かれた天の川と賢治自身のイーハトーブの世界観は賢治の芸術性、思想性によるものが顕著に見られる。
物語を読んでいく中で、カムパネルラがジョバンニに対して気になるフレーズが二ヶ所見受けられる。

「ザネリはもう帰ったよ。お父さんが迎いにきたんだ。」(p.173)
「おっかさんは、ぼくをゆるして下さるだろうか。」(p.176)

北十字から白鳥の停車場、鷲の停車場とそして南十字までの道のりで銀色の空のすすきが風に揺られ、波を立てる美しい描写。
芝草の中に、紫のりんどうの花が咲いている自然豊かな風景描写。
そして、奇妙な鳥を取る人など。ユニークな人物たち。鷺や雁を捕まえて、食べるとお菓子のような味がするというところは何度も読み返し、とても面白い場面でもありました。
物語の後半に進むと、鷲の停車場に着くとたくさんの人が列車に乗ってくるところが描かれます。
彼らは、氷山にぶつかって船が沈んだエピソードを話していく中で、ジョバンニは嫌な予感を覚える事となります。
列車は時間と共に進んでいき、気付けばジョバンニとカムパネルラの二人だけとなってしまいます。
しかし、南十字でカムパネルラが突如いなくなり、気付けばジョバンニはもとの丘の上で涙を流して起きていました。
そして、ジョバンニは丘を下っていき牛乳屋に行き牛乳を母の為に持って帰ります。
帰り道に、大きな橋の方にたくさんの人が集まっているところを見てしまいます。ジョバンニは、近くの人に事情を聞くと川に子供が落ちた事を知ってしまいます。
詳しく聞くと、川に落ちたザネリを救う為にカムパネルラが飛び込み代わりに犠牲になった事を知らされます。この瞬間に、銀河鉄道でカムパネルラがジョバンニに発した言葉の意図を理解する事ができるでしょう。

最後に、賢治が『銀河鉄道の夜』という物語を通して読者である私たちに何を伝えたかったのでしょうか?
ジョバンニの見る世界から、私たちは友人の死というものを体感しました。
死の現実をしっかりと受け止めて、夢の世界と離れる姿は孤独や苦しみから乗り越えた、たくましい強い心を持ったジョバンニの姿が目の前に写し出されています。
そういった、心の源というのは思い遣りの持った真の優しさなのかもしれません。

ー優しさがあれば、どこまでも強い人になれる。
『銀河鉄道の夜』は、これからの未来を生きていく中での原動力となりました。

【参考文献】
『新編 銀河鉄道の夜』宮沢賢治 (新潮文庫)

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