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変わらない時間と叶わない夢の話

これは #プリッカソン Advent Calendar 2020 - Adventar の7日目です。

プリパラの新作が発表された。
かなわないかもしれないと思いつつ、心のどこかで願い続けていた夢。
それがかなった。
だから、それはすごく嬉しい。嬉しいのだけれど。
少しだけ、申し訳ない気持ちになってしまった。

昔思っていたけれど、いつの間にか忘れようとしていたこと。
気持ちの整理をつけるために、向き合おうと思う。

その夢を知ったのは、アイドルタイムプリパラの終盤に差し掛かった頃だった。
その頃のらぁらは、もう立派に一人前の神アイドルだった。

みんなトモダチ、みんなアイドル。
誰も傷つけない、みんなの夢がかなう場所。
そんな夢のような世界のプリパラにおいても数々の奇跡を起こしてきたらぁらは、まさにプリパラの体現者だった。

パックとの戦いのさなか、らぁらはゆいたちを庇って眠りについてしまう。

眠りの世界。そこで、ぼくたちはらぁらの夢を知ることになる。
中学生になり、高校生になり、そしてみんなと一緒にプリパラを続けていくこと。
それは、きっと多くの人にとっては簡単なことだ。
でも小学六年生を三年間続けてきたらぁらにとっては、まさに憧れの夢だったに違いない。

やがて世界は元に戻る。
らぁらのその後の姿は描かれることもなく、いつもの小学六年生のままでプリパラは幕を閉じた。
プリパラらしい幕引きだった。

4月からプリチャンが始まったときのことは、よく覚えている。
プリチャンはとてもワクワクした。この後どうなるのか、ドキドキもした。
そして、もうプリパラに、らぁらに会えないことを寂しく思った。
でもその一方で、少し安堵もした。

四年近く、主人公としてずっと走り続けたらぁら。
小学生であり続けた彼女の夢を、ぼくたちは知っていたから。

らぁらは今頃、夢の中学生活を楽しんでいるだろうか。
もう、いろんなものを背負う必要はない。
きっと今は、相変わらず愉快な仲間たちと新しい生活を始めたに違いない。
羽を伸ばして、楽しんでくれているといいな。そう思った。

本当は、そこで満足すべきだったのかもしれない。
それでも、気持ちは抑えられなかった。
いつも心のどこかで、プリパラが、らぁらが帰ってくるのを願っていた。
そう願うことが何を引き起こすか知っていたのに。
ぼくはそれを見ないふりをして、そしていつか忘れてしまっていた。

プリパラは夢がかなう場所。
だから、らぁらは帰ってきた。

小学六年生のままで。


そう。
ぼくたちが「あの時の」プリパラが終わらないでと願う限り、らぁらはずっと小学生のままだ。

夢のかなうプリパラが続く限り、唯一らぁらの夢だけはかなわない。

らぁらは優しくて強い子だ。友達のためなら、躊躇なく身を投げうつ。
自分の夢は誰にも話さずそっとしまい込んで、きっとぼくたちにはいつもの底抜けに明るい姿を見せてくれるだろう。

とはいえ、それでらぁらが悲しむとは思わない。
何せまたアイドルとして活動できる、プリパラの楽しさをみんなと分け合えるのだ。
きっと今頃は、またプリパラで遊べることにウズウズしているに違いない。
らぁらの時間は変わらなくても、時計の針は再び進み始めた。
パックの世界から解放されたあの時と同じ。静止した寂しい世界から、夢にあふれた世界へ。


再会は喜ぶべきことだ。
だからぼくも、めいっぱい新しいプリパラを楽しもうと思う。

でも、ちゃんと心の片隅には覚えておこう。
誰よりも強くて優しい女の子が、そっと胸にしまい込んでいる夢を。

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