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『カルトブランディング』書籍まとめ

1.カルトブランディングとは

カルトブランディングはその名の通り、「カルト宗教」からヒントを得ている。
カルト宗教の信者が持つ「極めて高い忠誠心」の秘密はどこにあるのか。この観点で、カルト宗教の学術研究や書籍から、ブランディングに使えるノウハウやメソッドを抽出して生まれたとされる。

カルトブランディング

カルトブランドの見分け方については以下の2点がある。

  1. イデオロギーが革新的であること
    ※普遍的だったり既視感があったりする場合、カルトブランドには該当しない。

  2. 明確なコミュニティーを持っていること
    ※外に開かれていない、アンダーグラウンドすぎるコミュニティーはカルトブランドとして認められない。

また、車に貼られているステッカーはカルトブランドであることが多い。
敢えてコストと労力をかけて貼っているということは「信者」になっている可能性が高い。

2.カルトブランディングが必要な理由

サイバーセキュリティ企業「カスペルスキー」が実施した調査によると、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う外出自粛期間中、日本人の約4割が「孤独を感じた」という
同調査では、日本人の実に2人に1人が、新型コロナ流行前から孤独を感じていたことも説明している。

カルトブランディング

カルトブランドは、孤独を癒やしてくれる存在である。
生きる意味を提示し、信者は「自分らしくあれる」と感じることができる。主体的に生きることができ、自分の人生を歩むことができる。
疎外感や妬みは生まれず、幸福感が孤独を打ち消してくれる。

カルトブランドの信者は、プロダクトではなく体験を買っているのだ。
さらには「仲間」を買っているともいえる。
コミュニティに入ることで、人との交流機会を得ることができるからである。

3.カルトブランドのキーワード

  1. 革新的なイデオロギーを持っていること
    尖ったイメージを消費者が抱くのも革新的なイデオロギーによるものであり、これが弱ければカルトブランドとは呼べない。
    例)環境保護を謳うパタゴニア

  2. 異端児であること
    2番煎じではいけない。新たに独自のポジションを確立させる必要がある。
    例)「本格的な軽四輪駆動車」であるジムニー

  3. 外に開かれたコミュニティが存在していること
    そのブランドを愛する人間たちのコミュニティの存在も、カルトブランドの必須要件となる。
    例)スズキのジムニー「JCJ」(ジムニークラブオブジャパン)

  4. 強力なリーダーシップがあること
    強力なリーダーシップは、カルトブランドに必要な要素である。
    創業者や経営者が強力なリーダーシップを発揮するケースもあれば、ブランドが業界のリーダーとして走り続けるというケースもある。

  5. 敵の存在があること
    世の中をよくするための「共通の敵」を見つけ、「問題・原理・原因」を明らかにすることで、戦いに勝利しよう、とのメッセージを届ける。
    この一連の流れをストーリーテリングコンテンツとしてまとめることで、オーディエンスの統一が可能となる。

  6. 象徴が存在すること
    カルトブランディングにおいても、象徴は不可欠な存在だ。
    「○○の象徴」のように、何かのシンボルとしてのポジションを獲得することが重要となる。

  7. 共感を生むストーリーがあること
    人類はストーリーとともに生きてきた。それは数千年前に描かれた洞窟壁画からも見て取れる。
    ストーリーで伝えることで、物事が記憶に残りやすくなる。

  8. ライフスタイルが提示されていること
    ほとんどすべてのカルトブランドは、ライフスタイルを売っている。
    例)デス・ウィッシュ・コーヒー。プロダクトの売りの一つが「カフェイン200%」「世界一強いコーヒー」を標榜している。

  9. 聖地があること
    宗教には聖地が存在する。
    同様に、カルトブランドにも聖地が存在することが多い。
    例)創業の地や創業のきっかけとなった場所。

  10. 不変であること
    カルトブランドは「変えてはいけないもの」をいくつも抱えている。
    ポイントは、信者に「それはやってほしくなかった」と思わせないことである。
    顧客がなぜ信者になってくれたのか、その理由をよく考えてから行動を起こす必要がある。
    不変であることを信者は求めている。

4.カルトブランドを作るためのプロセス

カルトブランドをつくるプロセス

ブランディングにおいては、ターゲット層を定めることが基本である。
架空のターゲットの人物像のことを、ブランディングやマーケティングの世界では「ペルソナ」と言う。

ペルソナは、3つのステップで設定していく。
すなわち「属性」「ライフスタイル」「悩み・思考」である。

  • 属性
    名前、年齢、性別、職業、居住地、家族構成、年収、趣味

  • ライフスタイル
    どういった生活を送っているのか。
    平日と休日それぞれ、朝起きてから寝るまでを描写していく。
    どのタイミングで、どのようにしてブランドの情報に触れるのかをイメージしていく。

  • 悩み・思考
    ペルソナがどういった悩みを抱えているのか、どういった思考なのかを、吹き出しに入れるイメージで列挙していく。

補足であるが、以前まとめた『アイデアのちから』の中に似たような手法が出てきた。

サドルバック教会は、教会に来てほしい人物像を何年もかけて詳細に描きだし、信徒数を5万人に増やすという大成功をおさめた。
宗教にマーケティングを用いたのである。

5.カルトブランドの事例紹介

1.スズキ ジムニー
この本の中で度々紹介されるカルトブランディングの代表例。
3層のペルソナを狙う戦略が見事にヒットしている。

2.デス・ウィッシュ・コーヒー
強烈なイデオロギーが顧客を魅了するコーヒーブランド。
メインとなるプロダクトは、カフェインの含有量が通常のコーヒーの2倍
一般的なコーヒーは100ミリリットルあたり 60 ミリグラム含むとされ
るので、100ミリリットルあたりの含有量は120ミリグラムと推定さ
れる。

話題になったCMを貼っておく。
商品の魅力がシンプルに伝わってくる。

3.グレイトフル・デッド
グレイトフル・デッドは、何度も業界の常識を壊してきた。
その最たるものが「テーピング」、つまりライブ中の録音の許可である。
※当初、テーピングは許可されていなかったが、黙認されていた。
しかし、テーピングを行なうファンの数が増えるにつれて、問題視されるようになっていった。
バンドメンバーは許可するか禁止するかで議論し、最終的には特別チケットを販売し、チケットを所持している者だけ録音を許可することとした。
録音専用のスペースを設け、トラブルが発生しないようにしたのである。
録音テープの取り扱いについては、商用利用を禁じる一方で、ファン同士で交換することは認めた
テープ交換という文化がコミュニティを強固にしたのである。

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