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書籍レビュー

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本を読んで学んだ知識や、普段思ったことをまとめます。
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#小説

今こそビジネスマンは『おぢいさんのランプ』を読むべきかもしれない

『ごんぎつね』『手袋を買いに』で有名な新美南吉の作品。 多くの人は教科書でしか読む機会のない作家だと思う。 (自分もそうだった) 自分はたまたまSNS上でこの作品を知り、読むに至った。 80年前の作品だが、物事の本質を突いた作品なので紹介したい。 この先はネタバレありで書評をしてきたいと思う。 1.未知との遭遇この話は、技術の進歩によって職を失う人間の心情をリアルに描いている。 巳之助(主人公)は、町でランプの存在を知り、行燈の時代が終わることを知る。 文明開花を肌で感

観たもの、聴いたもの、読んだもの(2023.06)

01.書籍01.プロジェクトヘイルメアリー 火星でのんびり農業ライフをする『オデッセイ』の作者の新作。 地球のピンチに1人の科学教師が立ち向かうというスケールの大きい話。 久しぶりの上下巻構成だったので、読むのに時間がかかった。 特に上巻の終盤は、状況が脳内で想像しづらくて苦労した。 下巻まで行けばスラスラ進むのだが、SF初心者には翻訳文のハードルが高いと思う。 主人公の相棒が大変かわいい存在なのだが、ネタバレになるので語れないのが残念。 登場人物も意外と少ないので読みやす

観たもの、聴いたもの、読んだもの(2023.05)

01.書籍01.ゾンビ3.0 国産ゾンビ小説という珍しいジャンル。 世界中が同時多発的にゾンビパンデミックに襲われた世界。 ただし、舞台は予防感染研究所内を中心に展開される。 ゾンビというとB級映画の代名詞のような存在だが、この作品は感染症に重点を置いており、科学的な側面が強かった。 他の方のレビューにも書かれているが、日本版『ワールド・ウォーZ』と呼べると思う。 映像化向きなので、是非とも邦画でお願いしたい。 (日韓同時刊行なので、韓国の方が上手く映画化しそうだけど)

【書評】掃除婦のための手引き書

Twitterでフォローしていた広田雅将氏がオススメしていた作品。 オートフィクションというジャンルで、エッセイにフィクション要素が混じった内容。 どこまでがホントの話か分からないが、印象に残る話が多かった。 日本で言うと『ちびまる子ちゃん』と同じようなジャンルだと思う。 以下は個人的に好きだった話を挙げていく。 ★付きは2回以上読み返した話。 01.掃除婦のための手引き書表題作。 掃除婦たちのルールや、家の人間に対する評価が面白い。 掃除婦という地味な職種をこれほどユー

読書の秋に読んだ本

読書の秋ということで10月に読んだ本をサラッとレビューしていく。 伴名練さんのSF作品もガッツリ読んだのが、それは別の記事でまとめたい。 1.人類にとって「推し」とは何なのか、イケメン俳優オタクの僕が本気出して考えてみたイケメン俳優推しの男性によるコラム。 『推しエコノミー』を読んで「推し」というモノの正体を知りたくて読んでみた。 推しに対する賞賛の言葉が表現豊かに語られており、自分の感情を分析しているのが面白かった。 この本を読めば、推し活にハマる人のことを理解できるよう

最も恐ろしい犯人像

最も恐ろしい犯人像とはなんだろうか? 自分なりに考えてみた。 多分、最も恐ろしいのは「動機が見つからない」ことだと思う。 「ムシャクシャしてやった」といった動機は、無差別殺人等で耳にするが、犯人のバックボーンを調べていけば納得できることが多い。 (不幸な家庭環境や、学生時代のイジメなど) こういった犯人はメディアが適当に理由を探してくれるので、ニュースを見ている側も「そういうことか」と腑に落ちる。 しかし、犯人が 学生時代から優等生でリーダーシップもあり、スポーツマンでイケ