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書籍レビュー

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本を読んで学んだ知識や、普段思ったことをまとめます。
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#書評

今こそビジネスマンは『おぢいさんのランプ』を読むべきかもしれない

『ごんぎつね』『手袋を買いに』で有名な新美南吉の作品。 多くの人は教科書でしか読む機会のない作家だと思う。 (自分もそうだった) 自分はたまたまSNS上でこの作品を知り、読むに至った。 80年前の作品だが、物事の本質を突いた作品なので紹介したい。 この先はネタバレありで書評をしてきたいと思う。 1.未知との遭遇この話は、技術の進歩によって職を失う人間の心情をリアルに描いている。 巳之助(主人公)は、町でランプの存在を知り、行燈の時代が終わることを知る。 文明開花を肌で感

観たもの、聴いたもの、読んだもの(2024.01)

01.活字本01.スローターハウス5 山田玲司がYou Tubeで絶賛していたSF。 『タイタンの妖女』と同じヴォネガット作品。 古いSFということもあって文章は読みにくい。 そして、時間が頻繁に跳躍するため話がわかりにくい。 称賛すべき点は、トラルファマドール星人という過去と未来を同時に見ることが出来る宇宙人を描いたこと。 この設定は最近のSFの『メッセージ』でも出てきたし、ジョジョ第6部のプッチ神父の目指した世界にも通じるところがある。 02.逡巡の二十秒と悔恨の

観たもの、聴いたもの、読んだもの(2023.11)

01.活字本01.アマニタ・パンセリナ 中島らものヤク中エッセイ。 今風に言うと『麻薬を色々やってみた』系。 作者はアル中として有名だが、薬物にも造詣が深いことに驚いた。 また、色々な薬物に手を出しながら、シャブだけは否定するところに優しさを感じた。 ペヨーテ(幻覚剤)の為に買ったサボテンに愛着を持ってしまい、切るのに躊躇する所も良い。 アルコール耐性がない人がヤク中になるそうなので、下戸の自分は気をつけたい。 02.ツインスター・サイクロン・ランナウェイ3 百合SF

観たもの、聴いたもの、読んだもの(2023.09)

01.活字本01.トキオウィルス 都市伝説をまとめた短編集。 SFのあとがきで紹介されていたのを読んで購入。(伴名練) 人から聞いた噂という形で語られる。 1つの話が数ページしかないため、スキマ時間に読めるのが良い。 個人的には『祈りの箱』という出稼ぎ外国人を救うコインロッカーの話が良かった。 僅かなお金でも人の人生を変えるきっかけになるのは良い。 02.はぐれ宮司の 事故物件 お祓い事件簿 1500件超の現場を浄化! 事故物件を祓う宮司の事件簿。 心霊体験を中心に活

観たもの、聴いたもの、読んだもの(2023.08)

01.書籍 01.推し、燃ゆ ★★★☆☆ 電子書籍で安くなったので購入。 (以前は1,000円以上) 推しというテーマで芥川賞を受賞した作品。 文章は一文が長くてやや読みにくいが、内面を掘り下げた描写が上手かった。 主人公はADHD(注意欠如・多動症)っぽいところもあり、飲食店でマルチタスクが出来ないところはリアリティがあった。 また、不向きながらも推しの為にバイトを頑張る姿は、信仰のために身を粉にする聖職者に近いものを感じた。 日本人は神様の代わりにアイドルを崇拝している

【書評】人生を変えるサウナ術

Kindle Unlimitedで無料。 ここ数年、サウナにハマっているので迷わず飛びついた。 いきなりの名言。 導入部分から心をガッと掴まれた。 『BLEACH』の単行本と同じ構成である。 1.ずっと間違えていた日本のサウナ日本のサウナの歴史は1957年から始まったが「ロウリュ」をすることができない湿度も極端に低いドライなサウナが、一般的な日本のサウナとして定着してしまった。 (サウナ室内の温度が90~100℃近い) 本場のフィンランドではサウナの温度は 75 ~ 8

最近読んだSF作品について(4選)

ほとんど伴名練作品のレビューになるが、最近読んで面白かったSF作品を上げていく。 意識せずに読んだのだが、全てが百合SF。 ガンダムといい、最近はこの手のジャンルが流行りらしい。 時代にはあっていると思う。 現実も性別の壁を突破しようとしているし、ハリウッドも優しいポリコレ世界を構築しつつある。 1.なめらかな世界と、その敵表紙絵とタイトルに惹かれて購入。 ジャンルがSFというのも読むまで知らなかった。 SF短編集なのだが、どの話も結構エモい。 表題作は、自分の好きな世界

オタク経済圏創世記+推しエコノミー

中山 淳雄さんの本を2冊読んだので、内容をまとめた。 著者はブシロードの執行役員であり、ゲーム業界を熟知した猛者である。 2冊とも満足度が高かったので、今後も中山さんの本は買い続けるだろう。 1.オタク経済圏創世記本書では、オタク文化が世界でどれだけの経済規模に発展するかを述べている。 サブカル市場の誕生から発展までを知りたい人には大いに役立つだろう。 著者自身がエンタメの前線で戦ってきた人なので、読んでいて説得力を感じる。 1.なぜ日本のマンガは強いのか シンプルに言