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自由エントリー型オンラインフェスを開催してみた備忘散文

# 備忘録を書くには少し時間が空いてしまった
# 書きたいことを全部書いた散らかし長文になりますのでご了承下さい
# 長い長い自分語り

Bluegrass Lockdown Music Festival

一言で言えば,「事前に音楽の動画をエントリーしてもらい,当日それをストリーミングで司会付きで流す」やつだ。詳細や,どうだったかについては 元祖ブルーォグラスさん愛に溢れた記事を書いてくださったので,これを見てもらうのがうれしい。かなり怪しい開催手法だったにもかかわらず,30を超える質の高いエントリーをもらい,視聴してくれた人や動画でエントリーしてくれた人の多くに好評をもらい(悪評を自分に伝えようとする人がいなかっただけでもあるが),後日,意外なところから見てましたとか,ブルーグラスに興味を持ちました,とか,しばらく離れていたけど楽しさを思い出したなど反応をもらったりして嬉しかった。そもそも僕自身が最高に楽しかった。

エントリー期間はたった3週間しかなかったし,その間にエントリー機能を含むウェブサイトの実装を(そんな必要もあるかと言われればないのに)やったのは確かに狂気だったと思うが,それ以上に,この短期間であれだけの質の高い動画を用意してくれた人たちの狂気がそれを上回り,最高の相乗効果を産んだのはとても嬉しい誤算だった。みんな大好き。

## 参加型?

ブルーグラス音楽の界隈のフェスは自由参加型が多い。出演者は選ばれるのではなく,自主的にエントリーしステージに出る。基本的には選考などはなく,ステージには知り合いや界隈の有名人,出身大学のサークルの後輩,先輩,様々な背景の人たちが集まって展開されるワクワク感や発見があり,そのお仕着せでない自由な雰囲気が好きだ*1 。そんな良さを踏襲したものにしたかった。オンラインフェスというもの自体はご時世もあってわりと開催されているが,多くはプロを集めたものだったり,主催者が声をかけて出演してもらうなどの形態であり,自由エントリーのものはなかなか見つからなかった。「もしかしたらブルーグラスに特有なのか?(しらんけど),これやったら結構新しくて面白いかも?」と思ったのでやってみたかった。

# 開催の背景

ことの始まりは3月下旬。とろくさい病気が警戒され,なかなか集まってフェスも出来ないね,というような雰囲気の中,でオンラインで何かフェス的なものやりたいねえ,などと,僕の生息地である Twitter 上で話していた。その時はホーンまあいずれやれればいいな〜と思っていたが,思った以上に「面白そう」と食いついてくれる声が多く,ブルーォグラスの DMK さんがマジにやろうぜと焚き付けてくれ,自身のフェス開催経験を生かした草案を作ってくれた時点ですべてが動き出した。じゃあ本格的にやってみようか,となったのが4月上旬。そこから準備・エントリーを募集して5月の GW 中の開催に至る。

強行と言ってもいいほどかなり無理矢理な日程だったが,GW 中になんとかやりたかったのはいくつか理由があった。社会人でも学生でも広範囲に視聴しやすい期間であるということ,また時流もあって家にいやすいというタイミングだったこと,これをすぎるとなんとなく間延びをしてしまうような気がしてしまったこと,そして思いついたら割とすぐやりたいという性格だったこと。会場を押さえたりする必要もないし,こういうのは鮮度が大事だと思った。

## 問題意識

オンラインでフェスをやってみること自体の動機は,思えば実は数年前からずっとあった。学生時代に一緒にやっていたブルーグラスの仲間たちは,卒業と就職のタイミングで全国へ散逸してしまう。このタイミングで自然消滅するバンドは多く,また個人単位でも仕事の忙しさや日々の生活の疲れ,結婚,出産,海外出張などのライフイベントに忙しく,音楽から離れ,やがてフェスでも姿を見ることが出来なくなってしまったり,「これは音楽の危機である。音楽的ディアスポラである。」とさえ思っていた。フェスもこのままでは OB/OG 層が世捨て人のようなヤベー奴ばっかになる。大学生などの若い層との溝はますます深まり,鑑みられないやべーやつたちは承認欲求を積もらせ老害化し,保守化し,コミュニティを硬質化させ,やがて緩やかに腐らせてしまう(かどうかは僕の妄想だが)。

まあそんな大きい話でなくても,個人的に,ずっと応援していたり,自分で続けていたバンドの形がなくなるのはとても寂しく,特にもっと個人的には自分の所属する Unripened Stringplunkers (以降 USP) が上記のような理由でほとんど活動できていない問題意識があった。そのため,年に一度はフェスに出ると決めてみる,とか,連絡に Slack を導入してみるとか,誰かが欠けても出れるようにする,とか,SoundTrap というオンラインで使える非同期複数人編集可能な MTR サービスを使って遠隔でバンド練習してみるとか,色々対策を講じてみたのだが,いまいちしっくり来なかった。

また,仲間が各地に散るようになって,自由人 :-) というバンドで浜松などで演奏する機会がよくあり,そこでも「フェスはなかなか出れないが長く地元で続けている,とてもいいバンド」と出会うことも多かった(e.g. Kingsize)し,東京でも,「少年たちのサッカー部の追い出し会のためだけに活動していたバンド」(僕も後に参加: A-rize たまにライブをするようになりました)があったり,「おしゃれなカフェでたまにひっそりとやっている」とか,先輩たちに出会うことがかなりあった。こんなにいい演奏や曲が世の中に点在して,知る人ぞ知ると眠っている…もったいなさすぎる。といつも思っていた。

そして大きかったのは,この時流で演奏の多重録画動画がかなり多く出回るようになったことだ。多くはアプリで離れたところにいる人達の演奏が重ねられていて,「もしかしたら個人レベルでもそこまで大変ではなく多重録画動画作れるのでは」と思ったことに起因する(しかしこれは,後で発覚するが,普通に大変な作業だった)

前述の問題が,多重録画動画/ライブ動画をエントリーするオンラインフェスというものを開催することによって,ある程度の解決をみるのではないか?と,開催のアイディアを固める中で感じていったのが,本格的に力を入れてやってみよう,と思った心理的背景となる。

多重録画動画の一例:

概要や目的として社会的価値を主張してはみたが,実際のところ自分が楽しむのが主目的だったようなものだ。言ってしまえば自分が楽しむついでにみんなに楽しんでもらえばいい,くらいのノリで始めてみたことだった。そんなんで人を巻き込むのは気が引けたが,事前に内輪でアンケートを取ってみたところ,かなり参加に興味を持ってもらえたのでやってみることにした。

準備

## 所感

大変だった。放送システムを構築すること自体はニコ生ができる前のなんでも実況VIPの時代からゲーム実況をおいかけていたのでそこまで大変ではなかった。が,作らなくても良かったはずのエントリーシステムをなぜか自前で作った*2 うえ,同時に,エントリーが集まらなかったときのために3つのバンド(自由人,USP,原宿限界タピオカボーイズ)に声をかけていて,その録音と録画と動画編集を流れ的に僕がやることになったので,工数的にブラック労働必至だった。実際,本当に開催運営だけに集中していたら,全然苦労なかったと思う。その想定で締め切りなどをギリギリに設定したせいで,つらい目を見てしまった。自業自得。タスク管理出来てない。

ただかなり多くの人が自発的に協力してくれ,その御蔭でびっくりするくらいスムーズに事が運び,運良くエントリーシステムもそこまでバグらず(ちょっとバグってた)に開催を迎えることができた。

## 草案の考慮と募集

ざっくりと草案を作った時点で,Twitter 上で告知を行った。草案を Google Docs で作っていたので,まずはそれを公開し時間を稼ぎ,その後公式ページを開いた。草案には悩みの跡が見られるが,募集にあたって考えたことで一番大事だったのは,どうすれば,面白さを担保しつつも,間口を広く気軽にエントリーしてくれるか?だったと思う。これについては,草案時点で過去動画も募集対象にすることでまず敷居を下げ,先述の多重録画動画のアプリの紹介などをサイトに乗せるなどした。個人の単独動画も大いに期待した。また Iwashita Mandolins & Guitars のゆたかさんが家で弦楽器を弾けるかどうかというアンケートをとってくれたので,大いに参考にした。7割程度,何らかの手段で動画をとることが可能そうなら,まあまあいけるのではないかという判断だ。

また,Youtube にアップロードする方法がわからないという人にも参加してほしかった。なので,エントリーページに動画アップロードの機能をつけた。これは割とつらかった(とくに複数アップロードするための UI がめんどかった)

あとは懸念点を一つづつ*2 潰していった。

## フェス感

集めた動画を垂れ流ししてもつまらない。のは容易に予想できた。それならばただのリンク集であって,一定の価値はあると思うのだけど,時空間を共有しているという楽しさや,相互のやり取りといったフェス感が生まれづらい。最終的に司会を入れることにした。これだけでフェス感が担保されるかどうかは正直わからなかったが,自分ひとりでなく他の人にも協力を仰ぎ,Discord でビデオ通話をつなぎそれを画面に表示すれば「そこにいて,やってる」感じが少しは共有されることが想像できたので,バランスのいい MC になるようメンバーを考え,自身の所属するバンド USP に協力を要請した。自由人のメンバーは自由すぎて収集がつかず,タピオカボーイズは全員狂人なので収集がつかないと思ったためこうなった。フェスなどで MC になれた人たちにお願いすることも考えたが,今回は要請が大変なことと,あまり慣れすぎていても面白くないかなと思い見送った。今後は形を考えて少し取り入れたい気がしている。

加えて,リアルタイムチャットがあるので,そちらでの書き込みに期待した。もし盛り上がらなかったらどうしようという不安はあったが,これに関してはチャットにアカウントが必要なことを担保にした。もし匿名であったら,発言に責任が軽くなり,「つまんねー」「この演奏はクソ」とか言うかも知れない。わざわざそれを言うために匿名アカウントを作成してチャットに参加するほどのヤバイやつが現れたらそれはもうしょうがないが(むしろ愛あるファンといえるレベルだが),そこまでするほどの規模のイベントでもないし,最悪運営側で非表示にする手段もある。もちろん個人の意見や感想の検閲になるのでできるだけ避けたい手段ではある。ただしこれはもし規模が大きい場合はかなり比重をおいて考慮しなければならない点だろうと思う。

そして放送後のアーカイブの問題。GW中は残すことは確定していたが,その後はどうするか。結局の判断としては,GW後は非公開とした。無意識的にでさえ「いつでも見れる」と思ってしまった時点でフェス感が薄れてしまうと思った。なので,見逃しは補完できるがずっとは見れない,というバランスを取ってGW中のみに一旦仮ぎめした。しかし未だに若干悩んでいる(後述)。

## エントリー動画の質や数,ジャンル

実際,個人で募集した謎のフェスにそこまでエントリーが集まると思っていなかったので,あまり気にしてはいなかった。初回なので多少アングラな感じでも,ある程度なんでもありな雰囲気で行けばいいと思った。僕の好きなブルーグラス界隈の雰囲気を実現したかっただけだけれど。本当に数が多く集まってしまったら開催を複数日に分ければよいし,ジャンルについても幅広いほうが楽しいし制限しないほうが良いと思った。

##  演奏曲の著作権

エントリー動画がカバー曲演奏だった場合だが,Youtube であれば包括契約を結んでいるので,カバー演奏などであれば著作権法違反にはならない(と,規約を読んで思った)。ただ動画内で AI (笑)によって著作権によって保護された楽曲が検知されると,すぐさま管理画面に黄色マークがついて動画の収益化はできなくなるのだが,そうなるとわかっていたので最初から収益化(広告やスーパーチャットなど)は設定しなかった。そもそも条件合致してなくて設定できない気もするし,途中で広告入ってもうざいし,お金稼ぐためにやってるわけでもなかったのでそれでむしろよしと判断した。

## 人気投票と賞

実は当初,人気投票自体はやろうとは思っていたが,賞品を出すには考えるのも大変だしやらないつもりだった。しかし,そんな中,またも Iwashita Mandolins & Guitars のゆたかさんが,超太っ腹な提案をくれた。楽器職人であるゆたかさんが,楽器のリペアをやってくれるという最強の景品を提供してくれるとのことだった。この僥倖とも言える申し出に僕は完全にゆたかさんに惚れた(人的な意味で)。以前急に訪ねたときも嫌な顔一つせず話をしてくれて梨まで食べさせてくれた最高のナイスガイだとは思っていたが,ここまでイケメンだとは。いくつかメッセージをやり取りして景品と順位と配分を固めていった。単純に労働力を提供してくれるという申し出だったことも,なんだか資本主義とは違う産業構造を想起させ,感激した。その後のやり取りの中でもつねにゆたかさんはイケメンだった。
そして,この景品を発表したあとエントリーが爆発的に増えた。どう見てもリペアのおかげです。本当にありがとうございました。

加えて,後輩のザウルス氏も,当時話題の和牛券を提供してくれることになった。和牛は今後金本位制に変わる通貨となりうるほどのポテンシャルを秘めた最高のマテリアルだ。和牛券が発表されたあと「和牛が食べたい」といった旨のエントリーが増えた。本当にありがとうございました。

そして最後に,人生の先輩・米屋氏からも当時話題のコロナビールを提供していただけることになった。コロナビールはいま品薄・生産中止でかなりレアリティが高い。エントリー締め切りに近かったが,「ビール飲みてえ」という旨のエントリーが増えた。本当にありがとうございました。

## 告知

告知については Twitter 上で行うのみと決めていたが,本来は SNS で言えば Facebook は外せなかった。ただ,私は思想上の理由から Facebook についてはいい印象を持っていなく,使うことを躊躇わせていた。それを見かねて数人が FB 上で宣伝してくれ,本当に助かった。そのおかげでエントリーや当日の視聴者数は確実に無視できないレベルで増えた実感がある。ここは課題だと思う。

## 構築した放送システム

この節は技術的な話。放送には当初 Chromebook と Lightstream を使って,デスクトップ画像を直接 Youtube に流すことを考えた。しかし,Lightstream がわりと不安定だったことと,デスクトップを直接では,せっかくエントリーが高音質・高画質で作成されているものに対して,かなり劣化したものを流すことになる。それでは音楽のイベントとしてお粗末だし,楽しめるかわからない。直接動画を Youtube の RTMP に流す方法が必要だった。

結局 Mac を使うことになった。マイクはまったく標準の Mac 内臓のもので,放送のソフトウェアは高機能かつ OSS で有名な OBS を利用した。OBS はクロスプラットフォームで主要な OS では大体動く信頼性の高いソフトウェアだ。OBS 上でまずシーンを複数作成し,オープニング画面,MCの画面,エントリー画面にわけ,オープニング画面には Google Slides で作ったアイキャッチ画像とマサオカ氏から許可をもらった曲(California Blue Sky 発売中)が流れるように設定し,エントリーは動画をメディアソースとして設定してシーン一つにエントリー一つ(複数動画がある場合は複数シーンになる)を設定し,放送時はこれを切り替えていくことにした。放送時のレートなどの設定は一般的なものに準じた。

MC画面は少し苦労した。画面自体は Discord のビデオ通話画面が別ウィンドウに切り離せたので,それをウィンドウキャプチャして背景と重ね合わせた。問題はBGMと,MC である Discord 上のビデオ通話音声,自分の声をミックスして,かつハウリングしない方法でモニタしながらストリームのメディアソースにミックスしなければならないことだった。これには Ladiocast / Soundflower を利用した。Ladiocast は Mac 上のサウンドデバイスを自由にリルートでき,しかも音量調整や切り替えも自由自在というソフトウェアである。Soundflower は仮想サウンドデバイスであり,Mac 上に利用可能なサウンドデバイスを拡張できる。まず Discord 上の音声出力を Soundflower の一つの仮想デバイス (2ch) に割当て,自分のマイク音声入力とともに Ladiocast で Soundflower の別デバイス (64ch) に重ねてリルート設定する。そして Mac 上の音声出力を Soundflower (64ch) からとるようにし,これをモニタ用としてイヤフォンで聴く。また 64ch をメディアソースとして OBS シーンに設定すれば,放送には自分の音声と Discord 音声が乗ることになる。全体の設定としては以下のようになる。

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MC 画面からエントリー動画の放送画面に切り替えたときは,OBSが内部でメディアソースを切り替え,この 64ch からの音声入力は放送に乗らなくなる。このため,動画が流れながらも主催者側は Discord 上で会話を行うことができる。

# 構築したエントリーシステム

これも技術的な話。実はサイト自体は少し前に @tempakyosuke と作っていて,これはジャム会をするときにお互いのレパートリーから共通項をくくり出せるアプリがあったらいいよね,とのコンセプトのもと開発したもので,それは思いっきり開発途中なのだけれど,それを間借りしてフェスエントリーサイトを載せた。まずアーキテクチャは以下のようにした。(マジで適当に描いたのであまり気にしないで)

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構成は SPA Nuxt on Firebase の一般系である。 PWA モードで構築したので,スマホのダッシュボード画面にショートカット追加することでネイティブアプリ的に使えるには使える。画面のコンポーネントフレームワークとして Vuetify を選んだが,マテリアルデザインがあんまり好きじゃないのでふつうに Bootstrap にすればよかった。デザインセンスがないので普通にダサくなった。Firebase 上に構築したことでフェス開催中の運営費は3円で済んだ。実装は最終的には結構大変になったが,作業通話に協力してくれる人がいてなんとか完遂できた。本当にありがとうございました。

Authentication は素直な実装だが,一旦 plugin で onAuthStateChanged を監視することで,ログイン情報をリアクティブにしアプリ側利用をやりやすくした。このあたりは,siodaifuku さんの「Nuxt.jsとFirebaseを使って爆速で何か作る前に読む本」がとても参考になった。てか丸パクリした。
サインアップされたときユーザ情報を Firebase Functions の onCreate トリガで監視して,Firestore に転記して持っておいているのだが,これは現状 UID とアカウント名だけで,サイト上で使ってるわけではなく,今後プロフィールなどの追加情報を入れるときに使おうと思って作っておいたものだ。ただ,二重管理にどうしてもなってしまうので,Authentication 側のカスタムクレームを使ってもよいかもとは思い直してきている。

エントリー情報は Nuxt アプリを通して Firestore Database に記録し,その中で,Storage にエントリーとしてアップロードされた動画のパスを記録しておく。編集ページも用意し,あとから更新・削除できるようにした(削除はちょっとバグってた)。再アップロードもできるようにとか,登録動画を削除できるようにとか,若干実装が面倒だった。ちょっと悩んだのはファイルのパスで,これは今後複数フェスを開催するときに重複しないよう,以下のようにした

const filesRef = storageRef.child(
  'users/' +
  this.form.userId +
  '/events/' +
  this.form.eventId +
  '/entries/' +
  result.id +
   '/' +
  file.name
)

つまり,ファイルパスは ユーザID/イベントID/エントリID/ファイル名 となって,複数イベントがでてきたときにも対応できるようにした。同名ファイルは勝手に上書きされる。

Firestore/Storage を使う上で一番苦労したのはセキュリティルールだった。Firebase では API キーがデプロイ時点で全世界に大公開されてしまうため,セキュリティルールで縛らなければだれでもデータを削除したりいじれてしまう。基本的にはアカウント独自のデータは認証済みの当該アカウントからのみ触れるようにする。

match /entries/{id} {
  allow read, write: if request.auth.uid != null; 
}

read と write は本当は権限が強すぎるので,get や list など細分化するべきだが,後のタスクにした。全体に関するマスタデータは管理画面コンソールからいじればいいので,基本的にすべて禁止。

SEO 対策的に OGP を設定した。といっても一般的なメタタグの指定と Twitter card のみだが,微妙に文法が違ったりしてちょっと手間取った。最初 layouts/default.vue で head を設定していたのだが,これが反映されなくて困っていたが,config で universal に指定した上で generate してあげないと生成されないようだった。それはそれで解決なのだが,ページごとに設定するのは一旦後回しにして,一律で nuxt.config.js に設定することでお茶を濁した。

人気投票の実装。これはエントリーの一覧ページに直接ボタンをつける形で実装してしまった。わかりにくい仕組みになってしまったが,工数もギリギリだったのでとりあえずそうした。開催後,疲れて忘れちゃうことが想定されたので,クライアント側で時間をみてボタンを表示したり非表示にすることを考えたが,これだとどうぶつの森的時間操作が可能になってしまうので,以下のように firestore のセキュリティルール側で実装する必要があった。これは開始時のみの制限だが,同じようにして終了時の制限も書くことができる。

 match /votes/{id} {
   allow read, list: if true;
   allow write: if request.time.toMillis() <= timestamp.date(2020,5,7).toMillis() && request.auth.uid != null;
 }

人気投票の集計ツールも開催後になってしまったが作った。投票に不正がないか軽いチェックロジックをいれたが,あんまり心配してないので厳密にはやらなかった。

## 動画作成

誤算だった。ここまで大変だとは。現状,スマホで Acapella など多重録画動画を作れるアプリは存在するが,どれも気軽にさっくり多重録画動画を作る,という用途ほどには適していないように感じた。重ね合わせるのはかんたんなのだが,メンバー内で使おうとするとき,アプリが iOS で動くけれど Android で動かなかったりするので,動画を見ながら撮影するということがやりづらく,結果的にそれぞれが何かで土台となる動画を再生しながらビデオ撮影することになり,その動画をあつめてミキシングすることになる。その際,それぞれで撮った動画のズレや各楽器のバランスやマスタリングを考えて編集することを考えたとき DTM や画像変換の知識が要求され,それはとても気軽とはいえないスキルが必要なことがわかった。

まず Acapella はアプリとしてかなり使いづらい。演奏動画を見ながら録画できる機能があるのだが,iOS でしか動かないので,メンバーが全員 iOS 持ちならば,それで完結できるとは思う。そして同じメーカーの Picplaypost なは動画を重ねることに特化したアプリなのだが,動画のズレを一秒単位でしか補正できない。キックのタイミングが 0.5 秒ずれたらそれは盛大なズレといえるので,これだけで賄うのがかなり厳しい。4xcamera はその点かなり細かく調整できるのだが,四枠までしか出来ないので,五人組バンドである USP や自由人のパターンでは使いづらかった。ただ,もし手軽にやる最低限の手段とするならば,4xcamera で出力した動画をまた 4xcamera に入力し,多重多重動画として作れば省力化出来るだろうと思う。

ただし正直音質の調整はしたい。しかも USP の場合は音源と録画もバラバラに集めたので,まず Garageband で音源をトラックごとにし,フツーに楽曲作成することになった。それぞれ撮ってきてもらった動画を合わせて,Garageband に取り込んでバンジョーを入れた。パートごとに録音できるという手法にも関わらず少しの小節ごと2桁くらいはとり直したのでものすごく時間がかかってしまった。ちょうど Ozone の iZotope が無料になっていたのでプラグインとして入れて,エコライザ調整をこれに任せてしまった。オートメーション表示で音量を場面ごとに切り替えたり,コーラスのタイミングを微妙に合わせたり,言ってしまえばチートだけれども,それもまたオンラインフェスの特色として面白いという感じがしたのでやってみた。エレキギターパートのまーしー君が,諸事情によりエレキがなく,シンセ打ち込みで参加したのもならではという新しさで面白かった。ただ,ギターとボーカルは一緒の動画で撮ってもらったので,これが分離できなく,ボーカルが比較的小さめな仕上がりになってしまったのは残念だった。音源が完成したら,それぞれの動画をずれないように配置して picplaypost で重ねた。これもビミョーにずれたりするので苦労した。ffmpeg で黒画面を挿入したり,形式を変換したり再エンコードしたり…シンセパートは絶対に合わなかったので諦めた。もっと時間があれば作り込みたかったのだけれど,主催者特権で開催の1時間半前まで調整を粘ったので許してほしい。完成したときは徹夜していたこともあって謎なテンションになって動画見ながら少し泣きそうになった。そしてマスタリングの拙さは Lemo さん(激カワのねこ様)で誤魔化した。

一番大変だったのは USP だが,他にも声をかけていた二バンド,自由人とタピオカボーイズの動画も作らねばならなかった。こちらはインスト曲だったことや,軽いジャム曲だったこともあり,あまり調整などはこだわらなかった(というかこだわれる気力が足りなかった)。が,私のバンジョーが下手すぎたので100回は撮り直したと思う。タピオカボーイズは締め切り前日の夜に急に作ることになったのにも関わらず鬼の勢いで録音が上がってきてほんとにびっくりした。そして Slack で締め切り当日に冷蔵庫を開け締めする狂気のパートを追加するアイデアが生まれてきたとき,本気で導入したかったのだが,限界が訪れてしまい出来なかった…非常に心残りなので,後日きっと作成しようと思った。

動画作成に関してはエントリー動画作ってくれた各々はかなり苦労/工夫してくださったように思うが,思うように進められなくて困った人も少なくなかったはずなので,重ね重ねみんなありがとうという気持ちがある。みんな大好き。

## エントリー公開順(タイムテーブル)のプログラミング

タイムテーブルをどうするか,エントリーが非同期にきていることもあるので,事前からおおよその枠組みは考えることが出来たし,当日,締め切り 9:00 後に順次作っていったが1時間位ですぐにおわった。素直にエントリーの質がかなり高く,また多様性に富み,バランスが良く,最高という感じだったのであまり悩むことがなかった。また,開催時の新鮮味をもっておきたかったので,事前に深くは内容確認していなかったものの,おおよその方向性がわかっているので組みやかった。このへんは USP でワンマンライブをやったときに曲順をかなり真面目に考えたりした経験が生きたのかなあと思っている。が,いまその過去の会議ボード見るとかなり意味がわからない。

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それと,フェスのプログラム考えてる人の話を過去いろいろ聞いてきたことがあったので,それもかなり参考になったと思う。エントリの動画を確認するにつれて,この組み合わせすごく落ち着くな,という流れがあったら覚えておいてそれを採用するというようなこともやった。

しかし,先述の通り別の原因で恐ろしいほど時間がなく,事前に発表順やタイムテーブルを計算して告知することもできなかった。出てくるバンドを待って疲れてしまったり,見逃してしまったりする懸念がある反面,ワクワク感があってそれはそれでよい,アーカイブも短期間であるが残るのでよし,という声もあったので,このあたりは再考が必要である。

開催

最大の懸念は通信トラブルだったが,事前に何度か放送テストをして回線強度を計測してたりしてたので,おおよそ行けるだろうとは踏んでいた。あとは当日急にルータが壊れるとか大規模な通信障害が起きない限りは大丈夫だろうと思っていた。

Youtube は事前にストリーミング予約をすることが出来,この設定をすることで URL が発行されるので,これを事前告知することが出来た。開始五分前には20人くらい待機していたようで,その数字が見えるのでワクワク感があった。タイムラグや人が集まる時間幅を考慮してオープニング画面を少し長めに設定し,その後紹介 MC から,第一弾の軽めの動画を投げる意味で原宿限界タピオカボーイズの謎動画*3 を流した。一発目にこのネタを出すのは視聴者が初見バイバイしてしまうかもという懸念もあったが,ここでやっておいたほうが「こういうのもありなのか」という意図を明確に押し出せる気がして,効果的だという判断でここにおいた。

当日やりながら感じた良かったなあと思う点はほとんど元祖ブルーォグラスさんが鋭く切り取ってくれたところにほぼ完璧に集約されていて,重複も多いのだが,あえて書きたいだけ書く。まずMC は結果的にわりといいバランスになり,今までのライブの経験などからMC をグダらないよう気をつけたりして,まあまあ良かったように思う。回線の問題や周囲音の問題で USP メンバー全員が常に会話に参加できていたわけでもなかったが,ちょくちょく出てくる感じも自分好みだった。司会メンバーがビデオをつけるかどうかは個人の裁量にまかせたが,僕だけでなく*4 キキさんやスージーがちょくちょくと付けてくれたのは嬉しかった。自分に関してはだれも30過ぎた一般独身非モテ男性の顔を見たいわけないだろうが,表情や手振りがわかることは,フェス感を出すのに少しは貢献したのではないかなと思っている*5。そしてなによりも,参加者が「楽しもう」という気持ちを最大限にもって全力で盛り上げてくれて,本当に助かった。これがなかったら片手落ちだった。

本当にエントリーの多様性が神性を感じる配分と質で,フェスを感じるライブ動画と力の入った多重録画作品,やってみた系,味わい深い個人系,異色の力作,本当に本当に全部が良かった。批判しないことを意識したのではなく,批判する隙間が一つもなかった。はっきりいって,このイベントが良かった点は8割くらいエントリー動画にあると思っている。すべてのエントリーが面白かった。ほしかったワクワク感が,これだよ!という感じで得られた。もちろん内輪的雰囲気にバックアップされた感じは否めない。ここにはトレードオフの性質があると思うし,解決困難ではあるが逃げてはいけない課題だと思う。

そして,フェス運営にありがちな当日バタバタしてフェスが中々楽しめない,ということがなかった。過去,ライブやなにかの運営をやるときは必ずと当日イレギュラー事態が同時多発しバタバタになるのだが,今回は仕事といえば司会とシーン切り替え程度なので,完全にみんなと一緒に楽しめた。最高だった。

ただ2つ反省点がある。Instead of Net をミスで飛ばしていてトリ前に急いで順番替えしてしまったこと,雑貨屋フレイヴァーの動画で指定と違った部分を間違って放送してしまったことだ。これは放送事故なのだが,どこを切り取っても映える質の高さに放送自体は救われた。本当にすみませんでした…

開催後

# 人気投票結果

人気投票結果をみて,1〜3位は圧倒的かつ僅差だが,それ以降はかなり票がばらけていたのが面白かった。多様性があったことの証拠だと思う。ただ,上位にライブ動画が集中したこともあり,動画作品部門とライブ動画部門はエントリとしてタイプが違ったなあと後から気づいた。もちろんエントリー自体の人気を表す指標として妥当なのだが,せっかくなら投票を分けるべきだった。このことは個人的にはオンフェス1,2を争う後悔となった。その後,ゆたかさんから連絡があってピックの提供を増やしていただけることになり,結果として6位*7 まで賞品が提供できることになった。ほんとにイケメン。

# 反省会

MC をした人たちというか USP でオンライン反省会などをした。良かった点も悪かった点も,すべてが自分のもとには届いているわけでないので,また今後の話の入り方によって感想や考察もかわってくるかもしれない。そして最終的に酔っ払った自分が「GHQ が政策の一環でアメリカ音楽を持ち込んだのでは」「ピート・シーガーを知らんとはいかんよキミィ」「政治とはねえキミィ」のような老害トークを繰り広げ完全にやらかして終わってしまったのだが,フェスの余韻に浸ったテンションで本来の気持ち悪い自分が露出してしまったことは反省したい。すーじーくんが割と反省会内容を詳細に書記してまとめてくれ,参考になった。

## よかった点

良かった点を上げればキリがないといっていいが,それはある程度よかった声ばかり届いていたからだろうと思う。わざわざ悪い声を届けようとしてくる人(アンチファン)が規模的にも少なかったのだ。すーじー氏まとめから抜粋すると,おおよそ意図通りに事が進められたと思った。

・同じ動画見て、話共有できるのが良かった。
 視聴者もオンライン飲み会しながら動画みるなど思い思いの
 楽しみ方が出来ていた
・1曲だけの投稿も全然物足りなさはなかった
・司会がいるのはすごく良かった。ライブ感、共有の楽しさがあった,
 サクサクした感じでよかった。BGMがあってよかった
・遠距離バンド、家庭が忙しい人、1人参戦する人に優しいフェス
・景品のおかげでエントリー数が増えた。リペア,和牛券,ビール
・景品が楽器リペア というのは、通貨社会の仕組みを超えたクールなもの(このへんから私の老害スイッチが入り暴走する)

以下の点は特に良いと思ったので特筆したい。
### 動画やコメントを通じて演奏者をより知れた気がした。今度会った時に声を掛けやすそうな気がした
放送後, SNS などで,参加者同士で繋がり合いがあってよかった。いままで世代・大学的ギャップがあって知り合っていなかった人たちが新しくつながって感想を言い合ったり,やりとりをしていたりを目撃してよかったなあと思った。広がりを感じる。また,話には聞いていたけど演奏を見たことがなかった人や,オールドタイムのすごい人だ!いい!とかWebまるみさんなど,あれの人か!というような,遠かった存在が身近に感じられるのは嬉しかった。自分もコミュ障なので,知り合いを作るのは苦手な方なのだが,オンフェスをやったことでいろいろな人と繋がれた気がした。ネット弁慶ですけど。

### 従来のフェスと楽しみ方,参加層が異なっており,競合しない印象
オンラインフェスはオフラインフェス*6の代替にはならない。やはりここは特筆すべき点で,開催形態がぜんぜん違うので当然といえば当然なのだけれど,ここですこし掘り下げて考察しておく。新しいやり方,こういった楽しみ方があり,これで〜という課題が解決できる,というアプローチであることは確かであるものの,それは可能性が広がってよかったねという話であって,オフラインフェスを何ら毀損しないし,オフラインフェス行きたい気持ちの起爆剤となったり,一方オフラインではできない価値の提供ができるといった相補的な相互作用があると感じた。そしてそれは,このイベントが定期開催できるといいなという動機にもなった。このフェス最大の目標と言っても良かった,普段なかなか注目の当たらない演奏に注目があたることや音楽的に面白い試みができる,ことが証明できたことは大きいと思う。第二回以降がいつどういう形態で開催できるかはぜんぜん見通しが立っていないし,規模や時期が変わればイベント自体の質も変わる。そうなるとほとんどかなりの部分を考え直して実行する必要があるし,場合によっては僕がやらないほうが全然いい場合もあると思うが,このフェスは定期的に,何度も続く形にしていければいいなと思っている。

## 課題

課題も無限にある。今回は特に,初回だし小規模だからいっか!で許された部分が多かった。今後はその点が主催する時の悩みのタネとなっていくと思う。しかも,全員の声を聞くことが最大幸福を生むわけではない点が難しい現時点では全然解決策は浮かばない。まとめから抜粋すると

・現状荒れないのは、今回参加者の民度の高さに依存している。今後の対策はどうする

・やはり動画を撮れる人は限られているので、投稿できない人も多いはず。(オフフェスでいえば車を持ってる人しか参加できないという感じ)
 ひしひしと感じた。もっと手軽にコラボ動画を作れるアプリがあればいいのだろうか?また,性質上,どうしてもある程度ネットリテラシーが求められるし,そこに壁を感じてしまうようになるとどうだろう
・タイムスケジュールとか、終わる時間がわかれば良かったかも
 前述したが一長一短で悩ましい。
・参加バンドが増えたら内容がダレてしまわないか

などなど。ブルーォグラス記事で指摘された(そして僕自身も思っていた)点で言えば

・マイナスな反応が伝わりづらい
 全くそのとおりで,こういうイベントは「声なき不満」がだめになる一番の要因だったりする。内輪の問題とも関連するが,ユートピアとディストピアは紙一重であって,賛同者の声だけで突き進めばかならずおかしいことになってゆく

・主催者頼み
 今回時間の制約もあり独断と偏見で強行したが,これがむしろ良かった点を産んだのは事実ではあると思う。しかし,現状で言えば自分が不慮の事故や病気で開催できなくなったりしたらフェス自体が潰えてしまうのは非常に残念だし,そのように個人に依存しすぎる形態は文化ではない。わたしはこのフェスは文化として残ってほしい。そのためには,ある程度個人への依存度を下げた形態を考えなければならないという気がしているが,これも保守と革新のバランスであったりするので悩ましい

・内輪感
 この note 記事の内容も含めてだが,ブルーグラスのコミュニティ自体に内輪感がつよく端的に言ってキモさがある。そのキモさは面白さと表裏一体であるとブルーォグラス記事でも看破されている。初見の人が今回いなかったわけでもないし,それで興味を持ってくれた人もいたが,多かったわけでもない。今後そういう価値も担えるようになれば最高なのだが,いっぽう突っ走ったほうが楽しいイベントになることも事実で,これもかなりトレードオフの問題があり悩ましい

今後の気軽さ
 
思いとしてはどんな雑動画でも投稿してほしいという思いがあったのだが,今後に関してはどうだろう。エントリーが初回からすごくよかったので,萎縮してしまう人も出るのではないだろうかということだ。杞憂かもしれないし,なんだか規模にもよるし,見通しが立たないのは確かだ

またエントリーの動画時間はブルーグラスフェスで一般的な15分としたが,これはあとから考えれば少し長めだった。オフフェスでは舞台上の入れ替わり時間があり,それを含めて15分なので,10分でちょうどよかったかもなあと感じた。

最終的な感想としては,何をもって課題かとする取捨選択すら課題であるために大変難しい。ほんと難しい。難しいしか言ってない。

おわりに

このフェスに関してはやってみて本当に良かったという思いしかない。関係してくれたすべての人に感謝。日本ありがとう。お父さんお母さんありがとう,母なる大地よありがとう。神に感謝。

Appendix

# 分析
Youtube の分析ダッシュボードを見てみる。制約が少ない開催形態のおかげか,同時最大視聴数は232人,ユニーク視聴者数は1199人となった。もちろんこの数は youtube の平均からすれば決して多くはない。ほぼ無名でも少し人気の人なら同時視聴数はかんたんに1000人はいくだろうし,有名人なら万単位になる。ただ興味人口が多くないジャンルであったり,個人単位開催の小規模イベントだったことを考えるとかなり多くの人にリーチできたと思うし,この放送をもって興味を持ってもらった,ブルーグラスが好きになったという人もいたとのことなので良かったと思う。離脱率が10%程度とかなり低く,5時間弱という長丁場に多くの人が長く楽しんでくれたのが本当に嬉しかった。

放送URLへの流入元はトラッキングできる範囲では Facebook 3割,Twitter 2割,Bluemoon 公式サイトから 1.3割,Naver (謎)から 3.1%, Youtube サムネイルから 2.2%だった。あとはアプリからや直接コピペアクセスなどだろう。Facebookはやはり無視できない媒体である現実からは目を背けてはならないだろう。高評価は 109 件とこれは異例の割合だ。かなり多くの人が高評価を押してくれた。

アカウント登録がされている範囲ではあるが,なんと性別比率と年齢比率もダッシュボードに表示される。男女比は7:3 で男ばっか。さすが私の運営するイベントだと言わざるを得ない。まあこれはざっくりとした統計なので,実際はいろんな要因で 5:5 でもおかしくないと思う。そして年齢層別統計では,

画像4

とこのように,18〜34歳が6〜7割を占めている。これはそもそもアカウント登録をしている年齢比率が反映されている気がするが,それでも,ブルーグラスというジャンルにおける年齢比率を考えると有意差が出ていると思え,これもオンラインフェスの一つの特色となるのかな,と思えておもしろい。35~44歳が一番少ないのは,やはり先述の音楽的ディアスポラが関係しているように思える。逆にこの層の参加や視聴を増やすこと,もっと上の 45~65歳以上の層へリーチできればもっと面白い化学反応が生まれるのではないだろうかという課題でもある。

### 開催後の動画アーカイブの悩み
草案にはあったのに完全にエントリーフォームに記載するのを忘れていたやつで,当初はアーカイブ可かどうかをエントリー時にチェックしてもらえば,のちに公開するとき不可のものは省いて再編集すればよいし,それで行こうかなーとも思っていた。しかしフォームに乗せるのを完全に忘れていたうえ,フェス感を持つ上でずっとアーカイブが残るのがどれくらいの影響を生むかというのは正直わからなくて,個人的にはフェス開催後も7週くらい通しで見たりしているくらい良いアーカイブになっていると思うので,非公開にしておくのももったいない気はする。アーカイブが残っていれば海外や知らなかった人があとから見て反応をくれたり,新しい話が進むかもしれない利点もある。反面,やはり顔出しや自分の演奏をアーカイブとして残してほしくないエントリーというのも今後を考えると尊重したく,むしろそういうエントリーをどんどんしてほしくて,それであればまるまる公開も微妙だなあということになる。なかなか悩ましい。

注釈

*1 反面マイナーなアングラ感,内輪感があり新規が入りづらい雰囲気もあり良し悪しである。ここに問題意識を持って,「質の高いステージを選考して開催し,ブルーグラスの一般的知名度をあげるなどの発展に寄与する」というコンセプトで開催されるフェスもあり,僕はこちらも応援している。

*2 「ずつ」が正しいとされていますが,「づつ」が使われていた時代もあり,言語とは多様であり,ある種ミームであり,変化/進化 もあってしかるべきという思想を持っているので,個人的に好きな「づつ」を使っています

*3 個人的にはこれめっちゃ好きなので,後日再編集してアップロードしたいと思っている

*4 我が弟が見ていて「そのヘアバンド何だよwっw」とチャット欄でつっこまれていて笑った。床屋に行けなくて髪の毛が伸び放題でめちゃ邪魔だったから Amazon で買ったんや。見た目がやべーのは元からだしまあ許してくれ

*5 ただし仕事のビデオ会議でつねにビデオオンにしろというようなルールには賛成しかねる。帯域の問題もあるし,本当に必要かどうかの問題もあるし,完全に個人の裁量に任されるべきだと思っている

*6 オフラインフェスって呼び方が,「回らない寿司」が回転寿司が出てきてからの呼び方なのと一緒でちょっと面白い感じする

*7 投票が分けられなかったので6位くらいまで拡充できないかなあと考えていたが,もし,審査員特別賞を設けたとしたら個人的にはまちがいなくその6位に入った「まいちゃん feat.AI きりたん」を挙げる。AIによるボーカルというだけでなく,演奏もミキシングも選曲もとてもよく,盛り込まれたネタは斬新で面白く,動画投稿のノリの面白いところが凝縮された最高の作品だと思った。まじすき。

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