・番外編 その3



暗いトンネルを抜けたときの、まばゆい光に包まれたような感覚になりながら、劇場を出た。

そこで初めてお昼時ということを知った。

驚いたことに時間の感覚を忘れるくらい充実した時間だったのだ。

出てすぐのところに、二人の女性スタッフが、観客を呼び止めているのを目にした。

僕はすぐさま察知した。

『あ、あれは!?よく、映画のCMの映画を観た客が「感動しました!」とか「最高でした!」のやつやん』

連れにカッコつけたい僕はすかした感じでその場を立ち去ろうとしたが、本能がそれを止めた。

「すいません、これ何やってるんですか?」
二人の女性スタッフに声をかけた。

一人は撮影用のカメラを持っていた。

もちろん見たらわかる「最高です!」のやつやん。
自分に白々しさを感じながらも、呼び止められている人はみなスタローンのTシャツを着ているガチ勢たちだ。

でも実は僕も、スタローンに関するTシャツを着ているのだが、あまりにもメタファー過ぎて自己主張のないやつになっていやしないかと、自分を疑ってしまった。
こんな時は目立ってなんぼなのに…

ちなみに、呼び止められなかったことより自分が声をかけないことのほうがもっと後悔する。
ここで、重要なのがこのマインドだと思う。
わたしだけ誘われない。とか
わたしだけ~ない。とか
で劣等感に苛まれることってあると思う。

だったら、じぶんから行こうぜってマインド

黙っていても、僕の下駄箱にはチョコレートは入っていない。
だったら自分が行く。
そんなスタイル。


と言いつつ声をかけてほしい。という思いはもちろんある。
そのことで若干のくやしさを感じつつ、外見だけじゃねぇ。好きさは内面でも見せれる!と気合十分に答えた。


が、こんな時に限って言葉が出てこない。
あほみたいな返答しか出ず内心はKO負けだった。
空回りしたインタビューを終え、帰ろうとした時、あまりにも悔しかったので、1名のスタッフに捨てセリフのように、往生際の悪い一言を発していた。
「ぼ、僕、実は、3年前に・・・」

するとそのスタッフは、カメラを取り終えたもう一人のスタッフを呼びに行った。

止まっていた歯車が動き出す予感がした。

続く

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?