・番外編 その2


劇場内に入ると、いつもの古びた映画館と違って、席の一つひとつに暖色の、あれはキャンドルのように見えるライトが僕ら迷える子羊たちを導いていた。

それはまさしく、教会だった。

神に祈りに行く神聖な場所かと見まがうように、暗く暖かな光に包まれながら、神が降臨するのを手に汗握りながら待つ。

…すると
モォーンーー!!
鐘のような合図とともに、スクリーンが開き始めた。

至福の時はあっという間だった。

少年時代からの謎が解けた。

死ぬほど聞いたサントラに収録されていたあの曲は、当時の劇中どこにも使われていなかったのに、今回の作品で初めて劇中に使われていたのに気付いた。
すると頬から何か温かいものが流れていた。

「嗚呼、小学生の頃の疑問がどんどん溶けていくよスタローン」

VHSの予告編で観たあのシーンは、本編になくて、何度もそのシーンを見逃したのではないかと疑っていた若き日(当時ディレクターズカットとかそんな概念は少年の頭にはない)
あのシーンだったか!!

このシーンはなかった!

などと、テトリスの棒がスッと入って連続コンボがきまったときのような快楽に溺れた。

終始、前のめりで観ていた。
隣の席のマニアも、鼻をすすっていた。
分かるわかるよ!

終劇後、みながそれぞれの帰路に帰るとき、各々がどこか満足そうな顔をしていた。

憑き物が取れたように、背筋が伸びた我々は“明日もまた各々の持ち場で戦おう”とアイコンタクトを感じたり感じなかったりしていた。

僕のエンドロールはそれだけではなかった。
劇場を出ると、もう一つのドラマが待っていたからだ。

続く

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