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HollowKnight-考察-なぜ王は封印を選択したのか

HollowKnightの話は、よくあるラスボスは封印中!のパターンです。
しかし、よく考えると何故にラディアンスを抹殺するのではなく封印という手段をとったのか説明されていません。面白そうなので考えてみましょう。

●未来への負産

以下は某wikiを参考にした創作における封印の理由付けパターンなのですが

1.殺した方が余計面倒になるから
2.倒す手段がないから仕方なく
3.まず封じ込めてから後々別途処分
4.反省を促すための罰として
5.自主的、自発的に冬眠的な
6.制御できない力の暴走抑止

まず後半3つは考えから外してもよさそうですね。
1.は劇中描写から連想できる要素がないので可能性としては低そうです。
2.か3.がありえそうですね。

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●白い宮殿の隠し部屋モノローグ
虚無、そなたのそれは対立する力。
しかしそれは永遠なる可能性を秘め、時を拒絶する力を持つ。
虚無、そなたには拘束がもたらされん。
●白い宮殿の隠し部屋モノローグ2
燃える光、それとの絆を我らは求めない。
求めるは、暗闇に抗して輝くひとつの光。
ウィルムはともしびとなり、精神は拡張される。
産出するために。ささげるために。
永遠は約束され、呪われし子孫は束ねられる。

対消滅か、中和か、弱点特攻か、どういった位置づけかわかりませんが虚無=アビスのカゲ達はラディアンスの力に抗するものとされています。
そこに着目して王達が創造したのが虚無をベースにしたホロウナイト=純粋なる器……そう、あくまでも「器」なんです。
器とは対象物を保存、保管し、外部に漏れださないようにするものであって保管中の物品それ自体を変質させるものではありません。封印して器に保管するだけでは根本的解決になりませんよね?せっかくラディアンスに抗する力を見つけたのに封印にとどめるなど問題の先送りにも見えてしまいます。

聡明な王のこと、それはないでしょう。ちょっと考え方を変えてみます。


●瓶詰も忘れた頃に腐ってる

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神様のいる創作では信仰を失った神は死ぬという設定がよくあります。
本作も同様でラディアンスが信仰を失うと死ぬと仮定してみましょう。

忘れられた神となりつつあるラディアンス。夢を通じた語りかけを行い、汚染=病の広がりが信者を強制的に増やし、失われた信仰を取り戻すための行動だったと考えることは出来るでしょう。逆に完全に信仰を奪えば死ぬのなら、封印して書物や記録からも抹消して接点を奪い、元信者が数世代重ねれば信仰者の数はゼロ近くなり、抗する力の器に閉じ込められ続けることも相まって弱体化し続け、いずれは神威の欠片も残らない存在に成り下がることが期待できるとは思います。
しかし、ウィルムのしたかったことは本当にこうなのでしょうか?

そうだとすれば
前述した通りラディアンスの本体を封印しただけではなく神像や経典の破壊や生き残り信者への弾圧といった措置も行いそうなものですが、作中での描写は全くありません。似たような話として緑の道、ウヌの民への信教の否定はあったようですが弾圧と呼べるほどに強烈なものであったかと言うと、そこまでの記述は見られません。
まぁ「経典」の類がないのは破壊・焚書されたのではなく、ラディアンス自体が失伝しつつあった信仰対象であること、あるいは信者に知性ではなく本能で生きることを求める印象なので聖書的な経典が作成されなかった、と説明することもできます。

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しかし、鉱山として栄えた(多人数の出入りがあるであろう)水晶山の頂上に堂々とラディアンス神像が破壊もされずに鎮座しているのは疑問が残ります。

かつての信仰者であるモス族の一員・先見者も安息の地という辺境にいますが、隠れ住むというよりは隠居といった風情。ウィルムへの文句や敵意を感じる発言もなく、弾圧されたことはあっても達観している……と解釈するのもいささか馴染みません。

どうやら、信仰を奪って完全に忘れられた神にして消しさろうというのは方法論としての是非はともかく王の採用したプランではなさそうです。
当初の話に戻りますが、ではなぜ封印する「だけ」にしたのでしょう?


●神様だって殺してみせよう

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都市の中心に犠牲となるホロウナイトの記念碑を建てて碑文に「王国の永続性は確保される」とまで書いています(※注1)。問題の先送り手段へ手向けられた言葉とは考えにくく王は封印を永続的な対抗手段として計画・実行したはずです( ※注2)。

しかし、王は拮抗する力であるアビスの存在を発見し、器の創造には成功しています。(結果論ですが)同じ力を起源とするプレイヤー=小さな騎士は最終的にラディアンスを抹殺します。手段は完成せずとも解決手段のスタート地点には立っていたと言ってよさそうです。

なぜこのプランを進めなかったのでしょう?

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いえ、恐らくは進めていたのです。
抹殺プランでも必要だったからこそ封印を行ったのです。

振り返るに最終的にラディを打倒するプレイヤーも古代の穴や交差路でオレンジ色の水疱を叩いているだけでは汚染を食い止めることなど一切できません。黒卵の神殿でホロウナイト(器)の中に封印されたラディアンスを抹殺することで、ようやく汚染を止めることができます。
夢を通じて語り掛けてくる曖昧な存在だったものを、封印という手段をもってして拘束し、引っ叩ける存在にまで堕天させているのです。いくら拮抗する力を持てども、どこにいるかもわからない存在は打倒できないのです。

つまり、黒卵の神殿での封印には目的が二つあったのでしょう。

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①汚染の拡大を止める
まず完成した器をもって汚染源を封印。これで最低でも汚染の拡大が止まり王国が一定の繁栄を取り戻せればOK。抹殺プランの開発時間も出来ます。

②ラディアンスの捕捉
汚染源の封印に成功すれば自動的に達成。
抹殺プランで根本的解決を図るための足掛かりができます。

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なにもかも上手くいけば器に封じ込める→しばらくして中身のラディアンスだけを打倒してホロナイを救出できる、となったのかもしれません。


……まぁ、現実には汚染は比較的収束、ラディアンスの捕捉にも成功、しかし王国の衰退は止まらないという結果に終わりました。

しかし、狙い通り抹殺プランへの足掛かりは残っています。



この続きは別の記事で




※注釈1

ハロウネストの永続性という文言を王国の栄枯盛衰とは異なる意味へ、例えば王国の民がわずかでも王の与えた知性と共に生き残れば良い(民=国)とか、いずれ転生する自身が汚染に邪魔されず再度王国を興せるなら良い(王=国)とか解釈するのもアリですね!


※注釈2

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苦痛の道やアビスでの情報から推測するに王からホロウナイトへの思い入れは強いですが、その一方で永続的に封印の器として犠牲にするという統治者としての冷徹さも見えます。
それを踏まえ民衆に対する政治的パフォーマンスとしての文言に過ぎない、という解釈もできますが古代の穴の石碑は「器は用意された」のでアビスを自身の印で封印するとしていますし、他にヘラー達の一族に払わせた代償も大きいらしいですが何か記録を残している様子もなく、ホロウナイトのように記念碑を残すといった姿勢すら見せた形跡がありません。
まぁ、こちらも取引なので秘匿しただけという考え方も出来るのですが。



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