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HollowKnight-考察-グリム巡業団

グリム巡業団の背景設定について時系列順にまとめました。

考察とタイトル書いたんですけどオイラなりの作品理解をまとめたものに過ぎないので、以下を読んでくれた人が「いーや、俺様のハロウネストではこうだぜ!」みたいな作品が更に増えるといいなと思ってる(増えろ)。


●夢の始まり

作中に登場する生き物たちは共通して夢や光から生まれたと語ります。

本能のみで生きていたとき、夢を見ているかのように曖昧であった自我。
自我を確立させ、知性を与え、今の自分達へと導いたのはなんであったのか?ある種根源的な「我々はどこから来たのか?」といった問いは知性を持ったムシ達や生き物にとって避けられないものでした。

彼らは、そうした問いへの答えとして
自分達に知性を与えた偉大な存在がいると考えました。

●先見者
わたしの部族は光より生まれた。それはエッセンスに似ていて、その強力な刃にも似ているが、さらに明るいものだ。

●緑の道にある石碑
緑の子供たちは、夢の中からこの地に歩き出た。ここで我らは辛抱強く待つ。帰還の呼び声が聞こえるのを。

ラディアンス以外にもいたと思しき「神々」は共通して夢を通じて生物へと語りかける力を持っていました。神々が夢を通じて幾度かの接触をした後、コケの一族、キノコ族、その他のムシ達はそれぞれ自分達に啓示を与えた存在を神として崇め始めます。彼らにとって夢は神聖なものでした。

シーア(先見者)の祖先たるモス族もまたラディアンスを崇めていました。彼らの信仰は死した後、生まれ出た光(神)へ還ることを目指すものでした。

狩猟者の書 - カゲ
おれたちは誰もが死ぬときになんらかの痕跡を残し、それは世界の染みとなる。この王国では数え切れないほどの者が死んだ。この場所はいったいいつまでその重みに耐えられるのであろうな…

神に与えられた生を全うしようとすることが尊ばれ、そうした善き思いの欠片は世界にエッセンスとして残されてゆきます。彼らは信仰の一環として、世界に残されたエッセンス=夢の欠片を集めて供物としていました。夢見の釘は武器ではなく神への捧げ物を収穫する死神の鎌だったのです(※1)。

逆に未練や執着といった思念は世界の染みとして残り、やがてアビスへと堕ちてゆくとも考えられていました。ましてや死に瀕して負の情念を抱えたならば魂そのものがアビスへと堕ちてゆき、光へ還ることもできず永遠にアビスに留まることになると恐れられていたのです。

しかし、世界に残される夢が美しいものばかりとは限りません。

先見者
この王国は美しい夢と醜い夢に満ちている。それらを探して真実を明らかにし、エッセンスを収集するのだ。

本能で生きるムシ達や獣たちの世界であっても嗜虐・残虐な喜びといったものはあるでしょう。あるいは暗い欲望を湛えた夢もまたあったはずです。そういった、惹きつけられども触れれば身を焼くことになる醜い夢(悪夢)=エッセンスを彼らは緋色の炎と呼んでいました。

始めは、醜い夢は供物にふさわしくないからと収集したエッセンスから美しい夢だけを選り分け、悪夢(緋色の炎)は再び世に放つだけでした。
しかし、本来は美醜の夢が共に生まれては消えていくはずの世界で、モス族が美しい夢だけを汲み取ってしまったことによりバランスが崩れます。緋色の炎に焼かれるだけの世界は少しずつおかしくなっていってしまいます。

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※1夢見の盾のダメージは釘の攻撃力を参照しますが、これは逆に言えば生者を傷付けることができない夢見の釘だけを所持していたならばノーダメになるハズということ。巡礼者に相応しい身を守る盾となったでしょう。
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●封印、そして

美しい夢が減り、醜い夢だけが残った世界では「神々」の啓示もまた醜い夢を介することでしか受けられないということ。神の言葉を歪めかねない事態に気付いたモス族は自分達の罪を自覚しましたが、夢の収集をやめるという発想はありませんでした。そこで、醜い夢=緋色の炎を封印することで世界に漂う夢のバランスを取ろうとします。

夢を封じるためには夢を見る自分たちムシの肉体そのものが封印の器として最適との考えから、1名が「器=グリム」として選抜されました。
初代グリムは見事己の身に炎を封じ込めることに成功しましたが、次なる炎の発生を防ぐことはできないために根本的な解決にはなっていません。

そこで、グリムは従者達を伴い一族の里を旅立ちました。

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世界各地を回って祭壇を作り、従者を一人ずつモリトとしてその場に残るよう命じたのです。モリトの役目はその地を監視し、炎が生まれそうなことを確認すると祭壇を起動して夢見の門を繋ぎ一行を招き入れること。

●風鳴りの崖-赤い衣装のムシ-
団長…わたしの役割…あなたから…一族から離れ…辛い…

やってきたグリム達の一行は炎を収集して器に捧げ、自らの中に封じた緋色の炎へ継火して封印します。こうして新たな炎の発生も対策できました。

糧なき流浪の旅は修験者のような彼らにとっても厳しいものでした。寄る辺なき彼らの旅路の導き手はグリムと、その身に宿した炎の光。
道半ばにして倒れた者達は、火に照らされた影(カゲではない)として魂だけの存在になってもグリムに仕え続けました。

さながらランタンの灯りに誘われ集まるムシ達のように……


一方で、グリム自身も継火のたびに強まる炎が器としての寿命を大きく縮めました。炎は封印されただけで消えていないので、やがて器自身も焼いてしまいます。封印を維持するためには器が代替わりをする必要がありました。

グリムは自らの子に緋色の炎の器としての役目を引き継がせました。
子はまた子へ、子々孫々、代々受け継がれてゆきます。

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↑↑バクステ動作で見れるムシっぽさ全開の足(挙動がクモ族そっくり)

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紡ぐ者の巣で一度だけ会える生き残りも2本足っぽいが4本足である。

後継を産み出すにあたっては旅の中で出会った異種族の血を積極的に取り込みました。獣達(クモ族)すらも含む多種多様なムシ達の血統を織り込み、交雑を重ね、次なる器の強化を図ったのです。
世代交代を重ねることで器の消耗はリセットされ、封印の時間的猶予は引き延ばされます。いつか悠久の時の果てに完璧な器が誕生するまで、幾度も。



●王国建国 王と団長

時代は下り、ウィルムの1体が来訪します。

その個体は脱皮の果てに巨大な肉体から小さなムシの姿へと変化しました。同時に、古代種としての力なのか周囲のムシへ無差別に知性を与える光を放つようになります。

あまねく世を照らし、ムシ達に知性の目覚めをもたらす光。

それは、かつて夢を通じて自分達に啓示を与えたが降臨したとしか考えられませんでした。モス族は徐々にラディアンスから王=現人神へと信仰対象を変えていきます。こうした「教化」の末にハロウネストは誕生しました。

●緑の道にある石碑(別の場所)
かつて我らの地だったこの先の洞穴を、蒼白なる者は自らのものと主張する。その者は寛大に見えるが、我らの夢を共有しない。

さて、一方グリムは出自からしてラディアンスを信仰する一族です。
交雑の果てに器としての進化が進み先祖からかけ離れた姿となりつつありましたが、その軸にある理念は信仰でありブレることはありませんでした。

かつての同族達の改宗にも眉を顰め距離をとりましたが「偉大なる神は降臨した。我らは神を崇めている。何も変わらない。」と主張する声は理解できました。ひとまず王国に対しては恭順の姿勢を取りつつ放浪者としての立場を利用して改宗は拒んだことでしょう(アイデンティティに関わるので)。

グリム(戦闘直後の夢見の釘)
素晴らしい! 打ち捨てられた器ですら、このような強力な力を持つとは。親愛なるウィルムによる傑作… そしてグリムの心を維持するのに最適な道具でもある。

親愛なるウィルムといった表現から一定の親交があったようです。
稀に宮殿へ来訪する旅芸人一座(王のお気に入り)といった扱いで、本来の立場を知る者は王様やレディ、一部の者しかいなかったのかもしれません。



●王国黄金期

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2人の関係性とか、純粋なる器の子供時代、王国5騎士との絡みとか、釘師達との話とか色々想像できる要素はあるんですが……一番資料や劇中描写がない時代で、逆に言えば一番妄想広がりんぐな箇所なのであえて省略。

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●王国末期

ラディアンスの荒神化、それによる汚染の拡大。そして、それに抗おうとする王達に対しては自身の信仰を背景として積極的な協力はしませんでした。

夢を通じて呼びかけられる声を通じてグリムは全てを知っていました。その声に耳を傾けなくなった同族達の愚かさも、ソウルの研究に没頭する者達の狂気も、神が抱く怒りの正体も、すべて知っていて何もしませんでした。

どちらにも手を貸さないことで仁義を通したのか?
緋色の炎を介して彼が聞いた神の声は、王達の抗う姿を嘲笑うことを望んだのか?あるいは彼こそが夢を通じて神へ忘却の怒りを呼び起こさせたのか?

真相は誰にもわかりません。

ただ、王国へ恭順を示す一環で一族の歴史や緋色の炎封印についての情報は渡していました。汚染の封じ込めのため、ホロウナイトを生み出す研究においてグリムから得た知識を利用したであろうことは想像に難くありません。


・・・ラディアンスがホロウナイトに封じられてから更に時代は下ります。
王が姿を消し、王国も滅び、巡る月日の果てに小さな騎士がハロウネストに戻ってきたとき、再び火は灯されました。

●狩猟者の書-グリム-
ランタンに呼ばれ、私は夢を介して旅をする。
朽ちた王国の炎を取り込むために




★討伐ED

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グリムの中にいた悪夢の王は封じられていた緋色の炎そのものです。
当代グリムの限界は近付いており、炎はその身を焦がし始めていました。
膨れ上がり器を破ろうとする炎が
器たるグリムを雌型として鋳造された姿なので団長にソックリ

狩猟者の書-悪夢の王・グリム-
緋色の炎が歪んだ形に変化した存在。
過去の夢の広がりは分断され、ひとつの領域は離れたままとなり、
闇は届き、赤を打つ。眠りの恐怖。悪夢の心。

実は本来、悪夢の王と戦う必要はありませんでした。
注ぎ込んだ炎が団長自身を燃やしつくすと同時に、準備の整った次世代の器が炎を吸収して役目を引き継ぎ、代替わりするはずだったからです。これは幾度と繰り返してきたことであり、避けられないことでした。

しかし、プレイヤーが緋色の炎を打倒してしまったので図らずも延命します。

これは一見すると緋色の炎を打ち倒したように見えますが、実は一時的におとなしくなった程度の話に過ぎません。緋色の炎が著しく弱体化したため祭壇の炎も消えてしまい、夢見の門が消え、ハロウネストに顕現していられなくなっただけです(移動したというか、元の放浪の地へ戻った)。

では、いずれ団長の中の炎が火勢を取り戻した時に再び巡業団はハロウネスト(あるいはダートマウスへ)やってくるのか?

それはありません。


かつてのグリム巡業団の始まりを思い出して下さい。美しい夢だけを汲み取ってしまう者達がいたからこそ、緋色の炎は封じなければならなかった。

作中では夢を司るモス族(おそらく)最後の生き残りシーアから夢見の釘を授かります。夢見の守護者を打倒するため、王の魂の欠片を手にするために釘は振るわれました。エッセンスは再度収集されることとなったのです。

緋色の炎は、だからこそ再び生まれました。彼より後に美しい夢だけを集めてバランスを崩す者はもういません。巡業団の役割は終わりました。
既に観客はなく、けれども再演に備え継承を続けるグリム一族と巡業団

終わりなき曲は奏でられ続けます。
終幕を迎られぬまま、呪いのように、どこまでも、いつまでも。




★追放ED

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世代交代を重ねる封印システムの構造上グリムの死は必然です。
我々の感覚で言うところの早世と言ってよい年齢なのかは不明ですが

とはいえ、前述の通り緋色の炎の封印=巡業団の出番は既になく・・・もう二度と呼び出されることのない役目のために寿命をすり減らし、あてどなき流浪の旅を生涯に渡って繰り返す必要はなくなっています。

それでも、グリムは代々引き継いだ役目を捨てることはなく、二度と来ない上演に備えて舞台稽古を繰り返して己の子に使命を引き継いでゆくでしょう。あるいは、これこそが炎が照らしだす狂気なのか

ブラムはそんな団と団長を鎖に繋がれた奴隷のようだと憂いていました。

●彼方の村-ブラム
儀式は再度おこなわれる。我らはとても古い曲を構成する音のようなもの。わたしも、おまえも。ウム。
永遠に繰り返される犠牲と隷属の曲。儀式のため。巡業団のため。団長のため。この子すら、見えない鎖に繋がれている。ウム。

炎の奴隷となりつつある巡業団の解放を願い、ブラムは行動に出ます。
プレイヤーと共に祭壇を破壊しハロウネスト一帯から追放したのです。

儀式の途中での追放ならば、子に炎は完全に継承されない。
グリムの封じている大火ではなく、儀式の途中で子に宿ったのは精々焚き火程度の炎。器の力の前では微々たるもので子の命を削ることはありません。

一方、継承されなかった炎はグリムの中で更に燃え上がり彼を焼き尽くして封印を破ろうとします。でも、彼がいるのは風鳴りの崖の向こう。封を破った炎が出てくるのは、夢見るムシもいない、燃やす物などない地
薪なき火と化した緋色の炎は消えるだけです。

こうしてグリムの子と巡業団の一行は緋色の炎から解放されました。

死して後も仕えていた魂達は此岸の寄る辺を失い、冥界へ
ブラムやディバインら生者の団員は炎に照らされていた間の記憶を失いましたが新たな生を歩むことでしょう。ニムはダートマウスに居着くようですが、ディバインはグリムの子を引き取って旅立ったのかもしれませんね。


これにて終幕、緋色の炎がランタンに灯ることはもうないでしょう。




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