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【振り返り】2024年6月

こんにちは。東です。

さて、2024年6月を振り返っていきます!




【臨床】 今月の臨床

テーマ|慢性副鼻腔炎

今月は慢性副鼻腔炎、通称、蓄膿症です。

今回の方はこれまで、西洋医学のお薬や漢方薬、鍼灸治療やセルフケアのお灸など、様々な治療方法を試してこられました。

それが良くなった話しです。


1.現病歴

70代男性で、幼少期からアレルギー性鼻炎があり慢性副鼻腔炎へ派生。

昨今は右目の網膜剥離の手術を行った関係もあってか、右の副鼻腔炎が悪化。

当院へお問い合わせがありました。

この患者さんの症状は、脈診所見とツボの現れ方、会話の内容を判断材料として、腎陰虚に伴う鼻炎(びえん)と診定めました。


2.鼻の鍼

アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎は、東洋医学でもなかなか難義する症状です。

鍉鍼を用いた鼻の鍼を行うことで奏功することも少なくありません。

師匠・伊藤瑞凰先生の考案した鍼法を、当院では採用しています。


3.治療の流れ

今回の治療は、①顔面部の器官を栄養する目的で、精気を益すための蔵府を調える治療、②鼻炎による鼻の感覚過敏を抑えるための特殊鍼法の鼻の鍼と、2部構成で設計しました。


STEP1
まず蔵府の中でも、腎の陰分が不足している腎陰虚の改善を図ります。

腎の陰分すなわち精気は、顔面部の感覚器官(東洋医学では五官)を正常に機能させることに寄与しています。

眼は涙、鼻は鼻水、耳はリンパ液、舌は唾液など、感覚器官は適度な水分がないと正常に機能しません。

腎の陰分(精気)は、感覚器官に適度な水分や神経系統に栄養を提供しています。

STEP2
では、腎に精気を提供している蔵府はどこなのか。

それは、胃腸すなわち脾胃になります。

胃腸から吸収された栄養分を水穀の精微(すいこくのせいび)といいますが、水穀の精微を精製したものが精気になります。

精気は感覚器といった大事な器官に向けた栄養素になります。

STEP3
STEP1・2で体調の基盤を調えることで、鼻が自然治癒力を発揮するための栄養素すなわち精気が生成できる状態にします。

その上で、いよいよ鼻の粘膜の感覚過敏を鎮静化させるための鼻の鍼を行います。

今回は、足少陰肝腎経足首の内側に位置する照海穴(しょうかいけつ)によって腎陰虚の改善を図り、任脈お腹に位置する中脘穴(ちゅうかんけつ)を主治穴としました。

照海穴を鼻の治療として使うのは、腎と肺の関係が植物の根と葉の関係に近いからです。

「其本在腎.其末在肺(腎が本で、肺が末です)」(『素問』水熱穴論篇第六十一)

「少陰脉.貫腎絡於肺(足少陰腎経は、腎臓を貫いてから肺をまといます)」(『素問』熱論篇第三十一)

2000年前の『素問』という書物の中に出てくる条文をヒントに、肺の治療のために腎臓と関わる足のツボを応用した主治方法になります。


初回から変化があり、数十年患っていたアレルギー性鼻炎に改善がみられたそうです。

週一回の治療を継続し、順調な経過を得られています。

とはいえこの方は健康への意識が高く、平素より食事や運動に気を付けておられてご自身でできる努力はされています。

そのため、しかるべき良性の反応が出たともいえますし、ご自身でできる努力をされても変化しきれない症状もあり、その時には鍼灸の出番ではないかなと思っています。

めでたしめでたし。


【教育】 東塾

お試しで看護師に東洋医学の講座を行いました。


【研究】 医学史の講座⑤

テーマ|「近代日本における漢方・伝統鍼灸復興のロジックー大正、昭和期の民間療法と伝統医学 」

【概要】

第1講でお伝えしたとおり、人類を悩ませてきた感染症は、19世紀後半の細菌学の研究によりその多くで原因となる細菌が特定されていきました。

しかしながらそのことは、必ずしも結核などが治療可能な病気になったことを意味してはいません。

そのため20世紀に入ると、不治の病とされたこれらの病と対抗するために「病は自分の持っている力で治す」という考え方が強い力を持っていきます。そして、実に多くの民間療法が創案され、人々の間で実践されていきました。

各種の体操、断食を含む食事療法、呼吸法、瞑想、脊椎矯正....。

現在、実践されている多くの健康法の原型が、実はこの時代に形作られているとも言えます。

東洋医学の歴史に興味をお持ちの方は、漢方も古典的な鍼灸も昭和初期に復興したことをご存じのことと思いますが、この時代に「伝統」医学が見直されたのは、上記の民間療法の隆盛と無縁ではありません。

そして日本で復興の兆しを見せた昭和初期から戦前の伝統医学は、近代的な医学教育の導入が本格化した中国(中華民国)における伝統医学存続運動にも大きな影響を与えたのです。

今回の講義ではこの歴史のダイナミックな流れを少しでも感じ取っていただければと思います。

参照:東洋医学の未来と愛を考える歴史教養講座


1.本講座の感想

ただただ東郷先生の知識の深さと幅に圧倒…...。

東洋医学の歴史を講義するには、これくらいの知識が必要なのだと思うと、まだまだ素人に毛が生えた段階なんだと実感しました。


2.日程

次回は、7/21(日)21:00~!


▼申し込み|歴史の講座

講座の詳細はこちらからも見られます。

❋満席の表示ですが、参加可能ですので遠慮なくお問い合わせください!


【開発】 鍼管の相談

大阪にお住いの板金屋さんの仲介をされている社長さんとお話しさせて頂きました。

これまで作ることができた鍼具とできなかった鍼具。

できなかった鍼具の中の一つについて、現在の技術を使うことで再現できるかもしれないとのお話をして頂きました。

有り難いご縁に感謝して、これからも前進しよう。



今回も読んで頂きありがとうございます。ISSEIDO noteでは、東洋医学に関わる「一齊堂の活動」や「研修の記録」を書いています。どんな人と会い、どんな体験をし、そこで何を感じたかを共有しています。臨床・教育・研究・開発・連携をするなかで感じた発見など、個人的な話もあります。


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