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【漢法いろは塾】2021年初の“漢法いろは塾”に参加して #5

こんにちは。東豪です。


振り返り

2020年7月の【講義の報告】を書いてから、内容を記事にしている間に、あっという間に2021年の3月になってしまった。

時間が経つのがあっという間でしたね。昨年はコロナ対応と講義と独立準備と薬局の試験とが重なり、原稿作業にリソースが割くことができなかった。今年は独立して時間ができるようになったので、どんどん記事を書いていきたいな~と思っている。

(2019年度の講義の反省では、講義の回数が少ないと言っていたら2020年度は倍に増えた。忙しかったがものすごく勉強になった。残念ながら2021年度の構想からは外れてしまったが、私の医学誌の師匠が講義を担当することになったので、学生はチャンスだなと思います。)

まずは、昨年を振り返り、勉強してきたことを整理してみたり、今年に入り現在進行形で挑戦している2つの勉強会についても触れてみたいかな~。

あとは、論文執筆も再開したいので、そちらの内容も書いていこう。もちろんいろは塾での講義活動も書いていきたいですね。

独立したことも書いたり、内容はたくさんありそうなので、おいおい企画をまとめつつ記事にしてみよう。


本題

やはりキャリアというのは尊いですね。同業の先輩のモノの見方・考え方、読んでいる本や経験談などは、本当に重要な情報源です。

今回の漢法いろは塾の講義は、いつもの定例会とは異なり、いろは塾・元会長の森山眞理子先生が登壇された。

森山先生は、鍼灸を伊藤瑞凰先生に師事し、漢方を荒木正胤先生に師事した東洋医学の素晴らしい臨床家の先生です。鍼灸と漢方の両方を提供しています。

森山先生も久しぶりの講義だったからか情報量・質ともに膨大で...笑。なんと4時間話続けていました。コロナ環境下において鍼灸臨床の現状と古典のすり合わせと現代医学的解釈・薬害を含めた治療薬やワクチンに関することなど、もったいないので少し復習しつつ、備忘録的に記事にしたいと思います。

▼いろは塾の発足についてはこちら


テーマ1 痺症について

「コロナ環境になってから、しびれ痛みを訴える患者さんが増えた」

これは確かに。私の担当する患者さんでも、深い坐骨神経痛を発症したり、腱鞘炎を発症する方が多くなりました。

単なる坐業性の仕事が増えたからなのか、リモートワーク(やったことがないのでわからないが)による何らかの影響なのかはわからないが、しびれ痛みを訴える、所謂、東洋医学でいうところの痺症が増加した体感はある。

まず森山先生は、『黄帝内経霊枢』周痺篇、『黄帝内経素問』痺論篇、『黄帝内経霊枢』寿夭剛柔篇などの痺症に関する条文の論証を行った。中でも、『黄帝内経霊枢』周痺篇の条文に深く着目。

黄帝曰.善.此痛安生.何因而有名. 岐伯對曰.風寒濕氣.客于外分肉之間.迫切而爲沫.沫得寒則聚.聚則排分肉而分裂也.分裂則痛.痛則神歸之.神歸之則熱.熱則痛解.痛解則厥.厥則他痺發.發則如是.

(引用:東亜協会 電脳資料庫の『霊枢』)

要は、痺症という病気は、風邪・寒邪・湿邪といった3つの邪気が、人体の分肉の間というところに拠りついたために起こるのだという。拠りついた後には、その場所は沫となって、寒さを感じてぎゅーっと集まって、それが分裂して痛んでくるが、そこに神に帰すと熱が出て、痛みが解かれる(でも最終的には厥となって他痺を発する)という病理観というか、メカニズムが書かれている。

多分おそらく、、すごく考察の難しい場所だよなココは~と思いながら拝聴。(「沫」の字一つとっても、字句の解釈大変だぞ~とか、「神に帰す」なんていうところは一生かかるくらい解釈が難しいと思いますね)

森山先生はこの条文の構成と免疫システムに類似性を感じたそうな。

要は、病原体や壊れた細胞を除去する免疫細胞たちは、体温の上昇によって免疫活動を活発化させる。その際に、多くのサイトカインと呼ばれる情報伝達物質によって興奮・抑制などの活動指示や情報交換をしている。

一般的には恒常性を保つため(健康を維持するため)に働く免疫システムも、関節リウマチ患者ではTNF呼ばれるサイトカインの一種が関節に豊富に存在し、それがカスケード反応などの何らかの反応によって、他の炎症性サイトカインに働きかけて炎症を強めてしまい、反って身体を痛めてしまう場合もある。

このサイトカインと免疫細胞のやり取りが、先の迫切而爲沫.沫得寒則聚.聚則排分肉而分裂也.分裂則痛.痛則神歸之.神歸之則熱.熱則痛解.痛解則厥.厥則他痺發…に、流れが似てるよねとおっしゃっておりました。

参考文献:免疫システムについては、ダニエル・M・デイヴィス(著), 久保 尚子(翻訳)『美しき免疫の力―人体の動的ネットワークを解き明かす』(2018年)


痺症 小まとめ

もしかすると、、、顕微鏡が無い時代の東洋医学でも、本当は、このような微細な免疫システムについてわかっていたのではなかろうかという神秘的考察もしたくなるし、東洋医学の考えが現代医学に通ずるんだとも主張できなくはない。ただしかし、まだ条文の解釈と免疫についての理解が浅いため、浅薄な答えを出す可能性が高いので、今のところは、似ていそうで十分なのではなかろうか。

個人的には、好んで読んでいる寺澤捷年先生の論文を引用されていて、自然炎症について話されていた。やはり東洋医学系の雑誌を取り寄せようかと思案している。

寺澤捷年『吉益東洞のもう一つの偉業と和漢診療学』(漢方研究.2019.8)(この記事は、ネットには落ちていなかったですね)

※日薬雑誌の小川佳宏『肥満と自然炎症』を備忘として載せておく。

※今後は慢性炎症と自然炎症について少し勉強しよう。


テーマ2 細菌

免疫つながりで腸内細菌について話をされていました。

参考文献:デイビッド・モントゴメリー(著), アン・ビクレー(著), 片岡 夏実(翻訳)『土と内臓 (微生物がつくる世界)』(2016)

参考文献:アランナ コリン(著), 矢野 真千子(翻訳)『あなたの体は9割が細菌:微生物の生態系が崩れはじめた』( 2016)


細菌 小まとめ

要は、森山先生の主張としては、生命活動の本質は人体組織にあるのではなく、意外にも細菌に生かされ細菌に従っているということだと思う。マイクロバイオームやマイクロバイオータの重要性を語っていた。

※参考にマイクロバイオーム関連は社会的にも推進している方向みたいですね!(PDF:「微生物叢(マイクロバイオーム)研究の統合的推進 ~生命、健康・医療の新展開~」


最後に

森山先生のおっしゃっていた言葉で印象に残ったものを列記して終わりします。

「天然、自然の法則の上に人はあるのよね」

By MARIKO Moriyama 

植物の根っこの細菌叢と、人の大腸の細菌叢を比較する中で口にされていた言葉。自然現象と同じ構造があるという目で人体を観察する東洋医学の基本中の基本の考え方。

「からだに無理がなくて優しい東洋医学の治療なのにね」

By MARIKO Moriyama

現代薬による治療について話されていた時にふと口に出た言葉。もちろんすべての現代薬を否定しているわけではない。ただ、反応の強い副作用が必ずついて回るステロイドや生物学的製剤について、ぽつりと。

「私の治療院で薬害は起こさせない」

By MARIKO Moriyama

森山先生は、薬害や薬の副作用や被害などについてかなり詳しい。薬剤師でもあるし、ご自身が漢方薬を処方されるからなおのことだと思われる。

そういえば、浜六郎先生の本もお持ちになられていましたね。

最近勉強が足らないと思っていたので、いい刺激になりました。久しぶりの記事作りも、バラバラした感じがあるが、やっていく内に修正しよう。





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