爆発侍 尾之壱・爆発刀 三九

 そして、力を失った九尾狐を斃し、残り八本の尾も自らのものとする。

 それこそが、あの日、自らを源氏の追っ手共から救ったあの金毛九尾の大妖に、我が存在を思い知らせる事になるのだ。

「そうだ……あの女狐めに、思い知らせてやらねばならぬ」

 宮部は昨夜の露天風呂での九尾狐との会話を思い出し、怒りに身震いする。
 あやつは、我に向かって、こう言ってのけた。
 
 あなたを助けたつもりは無いわ。

 わたくしが通る目の前に、目障りな人間が連んでいたから、それを廃しただけよ。
 
 金髪の美女が、こちらを見てわらう。
 
 まあ、それが結果あなたを助ける事になったの。それは良かったじゃない。

 恨むなら、あの時の自分の無力さを恨むべきではなくて?
 
 たまたま通りかかっただけだと?

 己を助けたのは、単なる結果でしかなかっただと?

「おのれ……おのれ……」

 命を助けられたというだけでも屈辱極まりないのに、それが、
 
「たまたま」
「偶然の賜物」
 
 でしかなかったと言われ、宮部の、土蜘蛛の怪妖としての自尊心は、これ以上無いぐらいに打ちのめされたのである。

 それは、九尾狐へ向かう怒りの情念に、更に火を焼べる事となっていた。

 おのれ、忌々しい女狐め。

 このままではおくまいぞ。

 そうだ。彼奴の妖力を奪い取るだけでは飽き足らぬ。その肉体を陵辱し、千々に引き裂き、喰ろうてやらねば気が済まぬ。

 そして、彼奴の最後の記憶に、我が存在を深く刻みつけてやらねば気が済まぬ。

 その時だった。

ここから先は

816字

¥ 300

いただいたサポートはマインドマップの描き方や、物事をわかりやすく説明するための活動費として使われます。 よろしくお願いします。