爆発侍 尾之壱・爆発刀 二九
第二章 温泉宿場の邂逅 十四
「そうか、低級妖を使役しているのか」
「あ、た、り」
おこんの声に応えるように、男の左右に新たな気配が湧く。
そして、右からは熱が、左からは風が、それぞれ男に向かって叩きつけられた。
「舐めるなよ、斯様な雑魚共!」
男の頭巾が捲れ上がり、赤く輝く口が顕わになる。
その口から、銀色に輝く奔流が湧き出した。
銀色の奔流は、おこんに真っ直ぐ向かっていく。それがどうやら何千本もの細い糸が束ねられたものだとおこんが視認した次の瞬間、猛烈な熱流がそれを燃え上がらせ、風の刃がずたずたに切り裂いていく。
「ふうん……あなた、蜘蛛の怪妖、ね」
「いかにも。久しいな、九尾狐よ……いや、玉藻前と呼んだ方が良いか。それとも、大陸で用いていた妲己と呼んだ方が良いか」
「わたくしの名前なんて、どうでもいいわ。どれも今は捨てた名だし……」
おこんはふん、と笑い、
「だけど、あなたの名は聞いておいた方が良さそうね」
「……我は、土蜘蛛なり」
答えながら、男が腰の物をすらりと抜いた。
左に大刀、右に脇差しの二刀構えである。
男はそのまま右前に構え、じりじりと距離を詰めてくる。
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