爆発侍 尾之壱・爆発刀 三一

 おこんの尾が形を変えた両刃刀は、九尾狐の妖力そのものである。それが、土蜘蛛の結界を見事に斬り裂き、破壊したのだった。
「凄い……この短時間で、わたくしの剣をここまで使いこなして下さるとは……感服いたしました」
 目を輝かせて感嘆するおこんの声に心からの称賛が込められているのに気づき、右門は謙遜する。
「あくまでも凄いのは、このおこんさんの剣の力だ……ああ、そうだ、ところで」
 そう言って振り向いた右門は、惚れ惚れとこちらを見ているおこんを目にした途端、慌てて背を向けた。
「おこんさん、ゆ、浴衣を渡しただろう」
「ああ、これですか。はい、投げていただきましたね」
「ならば、何故それを着ないのだ」
「……え?」

 先ほどまで金色に輝いていた長髪は元の黒髪に戻っているものの、おこんは右門が投げよこした浴衣を着る事もせず、そのまま裸でいたのであった。
「着てもらわねば、目のやり場に困る」
 自分に背を向けてうめく右門を見て、訳が解らずにいたおこんだが、
「……あ、わたくしは構いませんよ。別に見られて減るわけでもありませんし。気にしません」
「俺は、気にするのだ。と言うか、人の世にいる以上、お前も女子おなごの恥じらいというものを心得てもらわないと困る」
「女子の恥じらい、ですか。それにしても……」
 おこんが小首を傾げ、微笑む。
「裸を見られている相手は、わたくしの『旦那様』な訳ですし……問題はありませんでしょう?」
「おこんさん」
「ふふ、少々ふざけが過ぎました」
 右門が心底困っている様子なのを見て、おこんはぺろりと舌を出した。
「以後は、くれぐれも勘弁してもらいたい」
「はい。反省します」

 くすくす笑いと背後の衣擦れが止むのを待ち、右門は改めておこんの方を向く。

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