爆発侍 尾之壱・爆発刀 四
序章 峰久里稲荷の怪異 四
右門は背後にいるであろう女に思いを馳せるが、次の瞬間、浪人から発せられる鬼気を肌に感じ、再び目の前の戦いに意識を戻した。
この戦いは簡単に決着するものではない。まずは眼前に集中しなければ。
右門は、手にした「櫂型」を正眼に構えた。
だが、相手に深手を負わせたとはいえ、分が悪い。今だ自らが不利な立場に置かれている事を、右門は理解していた。
分の悪さとして、まずはお互いの「得物」の違いがあった。真剣に木剣で立ち向かうなど、通常ならばまず有り得ない。実際、右門にとってもこれは初めて経験する事だ。
簡単には折れぬように丈夫な堅材で作られているとはいえ、木剣は所詮「木の棒」でしかない。鋼の真剣を木剣で真っ直ぐ受ければ、容易く斬断されてしまう。それは程度の差こそあれ、右門の持つ「櫂型」とて同様だ。
つまり、お互いの剣同士を合わせる事は、絶対に避けねばならない。
もっとも、そもそも真剣同士の戦いでも、「剣で剣を受ける」という事を嫌う剣客は少なくない。
鉄身とはいえ、一般人が思うほど真剣の刀身は強靱ではない。受ける衝撃の力、角度によっては、あっさりと折れる事もある。その為、基本的に相手の剣を剣で受ける事をよしとせぬ流派も少なくはなく、実戦剣術を是とする流派ほど、
「剣を剣で受けるな」
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