爆発侍 尾之壱・爆発刀 四七
おこんは怪妖の身、それも太古から人の世に災いの限りを振りまいてきた九尾狐である。
自らの前に立ち塞がる人間を殺さないで済ます事自体、そもそも有り得ないほど「慈悲に溢れる行為」なのである。
全く、面倒な事この上ないが、考えても仕方が無い。他でもない、右門と約束をした以上、そうするしか無い。
それも全て、自らの望みを果たす為。
その為にも、右門の不興を買う事は絶対に避けねばならない事なのである。
そうよ、これも右門様のため、と、自分の中でそう理屈づけ、納得していると、背後から声がかけられた。
「そこに居るのは誰だ」
続いて足音と共に自分に向かってくる気配を感じる。
「はぁ……また来たの?」
おこんはうんざり顔でため息をつくと、面倒だとばかりに右手の指をぱちん、と鳴らす。
次の瞬間、背後に閃光が走り、うめき声も無く、どさり、と斃れる音。
「これで四人目……封妖石まで目の前だし、もう、隠したりしなくても良いわよね」
そう呟くと、おこんは背後を振り返る事も無く、優雅とも言える足取りでその場を歩み去った。
強い。
右門は、眼前に立つ剣客が自分の想像を遙かに超える業前の持ち主である事を痛感していた。
これまで三度、宮部に対し打ち込みを試みたが、その度に、その全てを押し返されている。
とにかく、宮部の剣は重かった。
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