爆発侍 尾之壱・爆発刀 二三

第二章 温泉宿場の邂逅 八

もう一方の大刀は、右門がかねてより愛用している孫六兼元まごろくかねもとである。これは、右門が慈外流印可を免許された際に宗家辻島丹水から直々に与えられた業物だが、拵えはなんの変哲も無い安物の黒柄黒鞘だった。
 これに関しては、あまりにも拵えに頓着しない右門に丹水自らがもう少し手を入れても良いのだぞ、と言ったものだが、
「剣は、その切れ味のみに価値があります」
 と真顔で返す右門に呆れながらも感心し、
「お前はそのままで行きなさい」
 と丹水もそれ以上なにも言わなくなったという経緯があった。
 以来、今に至るまで右門は「質実剛健」を旨としてきたのだが、なるほど、確かにおこんの剣の拵えは、右門を知る者からすれば奇異極まりなく見えるのも無理は無い。

「大刀の二本差しも、別に二刀を同時に操るつもりではありません。無作法ご容赦下さい」
「なるほど……その朱鞘、色々と訳有りか」
 恐縮する右門に堤は目を細めながら、
「まあしかし、天下太平の世の中だ。俺達のやってるような人殺しの技が生きて行くには、上手い事考えて立ち回らんといけないのは確かだろうさ。きっとその白柄朱鞘も、お前にとってそんなものなんだろうさ」
「そうかも……しれません」

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