爆発侍 尾之壱・爆発刀 七

第一章 九尾の狐と素浪人 一

「御武家様、いかがなさいました?」
 愕然と自分の顔を見つめる右門に、女は小首をかしげ、問うた。
「御武家様?」
「あ、ああ……すまん。お前の顔が……」
「わたくしの顔が、いかがなさいましたか?」
 右門は、かぶりを振ってなんとか我を取り戻す。
「昔……死別した妻に似ているのだ」
「そうでしたか……申し訳ございません」
 女はそう言うと、目を伏せる。その仕草も、きぬにそっくりに思えて、右門はたまらず女から目を逸らした。
「い、いや、お前が謝るような事ではない」
 右門は息を吐いて気を取り直すと、改めて目の前の美女の顔を見る。
 そうだ、この女は、きぬではない。
 他人の空似でしかない。
 きぬはあの日、確かに死んだのだ。
 右門は心中に湧き上がる想いを必死に打ち消し、なんとか口を開いた。
「それよりも……答えてもらうぞ」
「はい。なんなりとお聞き下さい」
 右門は、目の前でまだ煙を上げている亡骸に目をやり、
「まずは……まずは、あの浪人だ。首を折られても死ななかったあれは、一体なんだったんだ?」

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