見出し画像

もしも「シンデレラ」の語り手があずきみみこだったら

割とさいきん、とある街に
新田 令羅【しんでん れら】
(あだ名:シンデレラ
という高校生が住んでいました。

画像1

レラは、父の再婚相手と
その連れ子2人と暮らし、
それなりに上手くやっていました。

名称未設定のアートワーク 3

夕方のこと、

シンデレラにごはんを催促する
姉の声が聞こえます。

レラはこの家のご飯担当です。

名称未設定のアートワーク 4

少しは手伝ってほしいところですが、
継母と姉たちは”食べものをどうにかする”
という概念がちょっとないので
まったく作ろうとしません。


レラはぶつくさ小言を言いながらも
かぼちゃの煮物と豆腐のみそ汁を作り、みんなで食べました。

名称未設定のアートワーク 3




ある日のこと、

「それじゃあシンデレラ、留守番よろしくね」

継母たちは武道館へ出かけて行きました。

名称未設定のアートワーク 2

一家でハマっている推しのライブ。
初めての武道館公演に
レラも舞い上がっていたのですが、
悲しいことにレラだけが
チケット抽選に外れてしまったのです。

名称未設定のアートワーク 3

今日に至るまでチケットを
譲るそぶりを全く見せなかった
継母と姉たち。


誰もいなくなった家でレラは
仕方なく、作り置きのレシピを
クックパッドで検索することにしました。

名称未設定のアートワーク 2

するとそこに、ピンポーンと
家のチャイムが鳴りました。

開けてみると、そこには1人の老婆が
立っていました。

名称未設定のアートワーク 3


レラのおばあちゃんでした。

名称未設定のアートワーク 2

レラのおばあちゃんはどんな食材も
美味しい料理に変えてしまうので、
近所の人から
魔法使いの新田(しんでん)さん」と
呼ばれていました。

名称未設定のアートワーク 3

なのでレラは、家にたくさんあるかぼちゃ
調理してもらうよう、おばあちゃんに
お願いしました。

名称未設定のアートワーク 2

すると、おばあちゃんはあっという間に
おいしいかぼちゃグラタンを作ってみせました。

レラは大喜び。
そしてあることを思い出します。

名称未設定のアートワーク 3

名称未設定のアートワーク 2

レラはネズミのぬいぐるみをおばあちゃんに
あげることにしました。

この頃レラは、よく懸賞に当たるのです。
チケットを除いて。

そして、おばあちゃんも
あることを思い出しました。

名称未設定のアートワーク 3

名称未設定のアートワーク 2

それはなんと、あの武道館ライブのチケットではありませんか。

名称未設定のアートワーク 3

レラは大喜び。

ですがもう開演時間が迫っています。

その様子を見たおばあちゃんは言いました。

名称未設定のアートワーク 3

レラはこの日のためにメルカリで買ってあった
ワンピースと、一目惚れしたクリアサンダル
急いで着替え、

名称未設定のアートワーク 2

おばあちゃんの愛車である
かぼちゃ色の乗用車」に乗って武道館へ
急ぎました。

名称未設定のアートワーク 4

そうして無事に間に合ったレラ。
おばあちゃんにお礼を言って会場内に入りました。

席を確認すると、なんとアリーナ最前列ではありませんか。

名称未設定のアートワーク 2

継母たちはみな、スタンドの遠い席だと
聞いていたので、レラは少し不憫に思いながらも
ほくそ笑むを抑えられませんでした。

ライブが始まって、レラの王子様が現れたとき
レラは、生きててよかったと心から思いました。

名称未設定のアートワーク 3

そして、夢のようなひとときは過ぎ
あっという間に王子様との別れが来てしまいました。

夢現(ゆめうつつ)でぼんやりしているレラも
終バスがあるので急がなければなりません。

名称未設定のアートワーク 2

レラは必死に走りました。
途中、下ろしたてのクリアサンダルが
片方脱げても構わず走りました。

名称未設定のアートワーク 12

でも、さすがに走りにくすぎて取りに戻りました。

名称未設定のアートワーク 13

とうとうレラは終バスを逃してしまい、
仕方がないので2時間かけて歩いて帰りました。


レラは
疲労感と足の痛みに襲われながらも、
頭は先ほどのライブのことでいっぱいで
幸せに浸りながら帰路につきました。

名称未設定のアートワーク 14

それから何日か経ったある日、
ちょうど継母と姉たちが帰宅したところに
郵便局員が来ました。

どうやら新人らしい郵便屋さんは、
封筒を片手に言いました。「こちらに
新田令羅さんという方はいらっしゃいますか」

名称未設定のアートワーク 15

継母は代わりに
その封筒を受け取ろうとしましたが、
新人の郵便屋さんはマニュアルよりもマニュアルに忠実なので
頑なに本人に渡そうとします。

名称未設定のアートワーク 16

奥から出てきたレラは、その封筒を受け取りました。

名称未設定のアートワーク 17

自分の部屋でこっそりその封筒を開けると、
中には「ご当選おめでとうございます」
という手紙と、推しのサイン入りチェキが
入っていました。

名称未設定のアートワーク 18

そしてそれは、レラの部屋の写真立てに
ピッタリとはまりました。

名称未設定のアートワーク 19

レラは継母たちに見つからないよう
その写真立てを引き出しにしまい、
時々それを眺めては
しばらくの間、幸せに浸りましたとさ。

めでたいんだか、めでたくないんだか。

最後までお読みいただきありがとうございます!いただいたサポートで体にいいごはんを犬と猫に買ってあげようと思います。