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ありのままでも良いじゃない

私はあまりお酒に強くありません。故に、外食時はなるべくアルコールを控えるようにしています。みんながグビグビお酒を呷る中、ノンアル片手に隅っこの方でこじんまりとする私。もちろん周りの空気を読んでアルコールを注文することもあるけれど。そんな時はグラスにほとんど手を付けず、ちびちび舐める程度です。

そんな私ですが。家以外で唯一、気兼ねせずにお酒を飲める場所があります。それが近所にある小さな居酒屋。個人経営のその店は知る人ぞ知る隠れ家的な雰囲気で、田舎特有の素朴な外観。場所柄、来るのはほとんどが地元民ばかりのアットホームな居酒屋です。

私がこの店に初めて足を踏み入れたのは、彼と付き合い出した頃。「ここの店、おすすめだから。」と連れて行ってくれたのが始まりでした。

それまで、店の存在自体は知っていました。昔ながらの暖簾に赤提灯がトレードマークの古い、でも小綺麗な居酒屋。ただ、地元の常連客が多く集まるその場所は新参者が入るには少し敷居が高いように感じられて。私には、そこへ足を踏み入れる勇気がなかったのです。

とはいえ、今回は彼という心強い味方がいる。そう思うと、急に勇気が湧いてきました。彼に続いて年季の入ったドアを潜り、いざ店内へ。と、入った瞬間飛び込んできたのは「いらっしゃいませ!」という潑剌とした声。そして、田舎特有の和気藹々とした雰囲気でした。

年季の入った置き物に、これまた歴史を感じさせる大きな掛け時計。壁にはレトロなポスターが貼られ、その横には味のある字で書かれた「本日のおすすめメニュー」の貼り紙。そしてカウンターの中には、常連客のであろう名前の書かれた酒瓶の数々。普段はチェーン店の居酒屋ばかりを利用していた私にとって、それはまさに未知の世界との遭遇。でもどこか懐かしさを感じる、不思議な感覚。

最初の頃こそ緊張して、あまりその場の雰囲気を楽しめませんでしたが。二度三度とその居酒屋に通ううち、いつの間にかその店の虜になっていました。もっと言うなら、その店の空気を好きになっていたのだと思います。

地元ならではの距離感を感じさせない、でも決して相手を不快にさせない接客。気さくな店員さんに、壁を感じさせない常連客たち。それはチェーン店ではあまり見られない、個人経営の店ならではの良さなのかもしれません。

カウンター席で静かに杯を傾ける人がいる一方で、奥の座敷では団体客や家族連れが賑やかに声を上げる。食事をメインに楽しむ人もいれば、ひたすらお酒を飲み続ける人だって。

ここは「静」と「動」、「食」と「呑」、「個」と「群」が混在する、何とも不思議な空間。であるにも関わらず、何故か調和がとれていて妙に居心地が良い。ここではどんな個性も許容され、店の一部になってしまう。皆んなが皆んなありのままで、その空間を楽しんでいる。

その事に気づいてから、私もこの店でだけは大々的にアルコールを解禁しています。もちろん飲み過ぎないよう気をつけているし、今のところ誰かに迷惑をかけたこともありません。私はこの店のおかげでありのままで良い気楽さ、そして飲むことの楽しさを知る事ができました。本当に感謝しています。

今はコロナで出向くことができないけれど。またいつか、あの赤提灯を目印に昔ながらの懐かしい暖簾を潜りたいと思います。


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