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今年のベストアルバム10枚 in 2023


 例年の如く死ぬ気で天ぷらを詰める年末バイトが終わり、そしてまた例年の如く大晦日はCDJに参加すべく幕張メッセへ向かう。そんな中、日付が12月31日に変わるのを見ると誰しもが「今年も色々あったなあ」と思うだろう。あんなことがあった、こんな人と出会えたなあ。そして音楽好きっぽい雰囲気を醸し出す者なら全員思うこと、「今年はこんな音楽を聴いていたなあ」。それのベストを決めようと思う、自己満足で。

ちなみにマジの音楽好きは今年出たアルバムだけでこういうやつのベスト50とか作るけど音楽にわかなので10枚しか出せないし2枚は昔のやつです。でも今年出会ったからいいもんね!



1 Sigur Ros - Takk..

1枚目から古いやつ。アイスランドのポストロックバンド、Sigur Rosのアルバム。確か最初に聴いたのは去年なんだけど、今年に入ってピンとくるまで何がなんだかよく分かっていなかった。聴けばすぐに北欧の雰囲気は感じ取れるんだけど、アンビエントとシューゲイザーの隙間を掻い潜りながらもポップに展開していくのが堪らない。シューゲイザーもそもそも良さが今年の初めまではよくわかってなかったけど、アルバムの1〜2曲目のTakk..~Glosoliのアンビエントからの爆音シューゲイザーまでの流れで気持ち良さを理解した。ただヨンシーの歌声を聴いて、このジャンルは選ばれし者しか出来ないなと痛感。羊文学も同じ部類だと思う、なんかあのバンドを聴いてるとどうしようもなく日本だなと感じる。いつどこで聴いても異世界に飛んでけるアルバム、おすすめです。


2 パソコン音楽クラブ - FINE LINE

このユニットも割と前から知ってたけど、作風変わりまくるせいでイマイチハマれず仕舞いだった。今年の前半に組んだ直後のバンドメンバーにパ音の新譜が良いと言われ、久しぶりに本腰入れて聴いてみるかと思って聴いてみたらドストライクだった。ポップポップポップって感じでポップの塊だけれど、音はしっかり古き良きテクノを感じられるピコピコ感。バンドの音楽どういう感じにしようか迷ってた時に聴いたからすごく良いヒントをもらえた。ゲストボーカルのchelmicoも聴き始められたし本当にありがたかった。インディーズ特有の無理矢理褒めるとこ探す感じがないというか、良い意味でクセが少なくて聴きやすいからみんな聴いたらすぐハマれると思う。ピコピコ沼にみんなもおいで〜。

3 Aphex Twin - Come to daddy


Apex Twinは3年前からずっと好きだ。とりあえずテクノ聴きたいならこれを聴いとけリストに必ずいるから必ず通る。そしてハマる。でも俺が好きなのはアンビエントを作るAphex Twinなので、ノイズやアシッド全開のやつはあんまり聴いてなかった。表題曲のCome to daddyはMVを見て、強烈だしこれだけでいいや。。となっていたけど授業で先生に収録曲をオススメしてもらってめちゃくちゃカッコよかったからその日のうちにcd買いに行った。IDMというかボールが跳ねるリズムを音楽に昇華する実験味が強い曲を紹介されてたからそれに期待していたらなんと2曲目の「Flim」がもうやばかった。アンビエントちっくな、俗に言う美しい方のAphex Twinでアンビエントワークスで1番好きな「Xtal」よりも良かった。。その後ソニマニで見たAutecherのせいで無事IDMとノイズにもハマり、大好きなアルバムになりましたとさ。新しい世界感じたい人におすすめ!

4 Cornelius - 夢中夢 DREAM IN DREAM

今年の大本命だったCorneliusの新譜。初聴はあんまりな印象で、シングル曲と環境と心理のカバー、アルバム曲で1〜2個良いのがあるなあくらいでアルバムとしてはちょっと薄い印象だった。Corneliusぽい音作り(サラウンドとか変なサンプリング)が鳴りを潜めて、アンビエントに大接近した作品で、アンビエント大好きなんだけど個人的に小山田さんのアンビエントはただ長ったらしいだけのイメージがあって、前作のアンビエント枠があまり良くなかったからまたこれかあ、と思っていた。ただライブは見たことが無かったから、今年は幾多のすれ違いや病気で見に行けなかったりを乗り越えてリリースツアーに行ってきた。そこで激震、文字違いの表題曲「霧中夢」はただのアンビエントではなくギターを多重に歪ませてエフェクトをかけまくったノイズだった!爆音ノイズのあまりの気持ち良さにライブ中時空が歪んでいた。その後アルバム全体の解釈が大きく変わってきて、結局1曲を除いてかなり聴き込んだアルバムになってしまった。インタビューではアルバムもう1枚分くらいの曲ストックがあるらしい、大期待。

5 The Chemical Brothers - For That Beautiful Feeling

待っていた。今年はファンになってから待望だったアーティストのアルバムが沢山出た年だった、その中の1つ。ケミカルはテクノとかダンスミュージックに熱狂する要因になった個人的には最も重要なアーティストなので新譜は楽しみなのもあったけれど、キャリアも長いから変化球が来たらどうしようという気持ちもあった。彼らはイギリス人なのでコロナ禍で当然ライブは見たことが無かったので、新曲をライブで演奏する様子をyoutubeへ一般人が映像をアップロードするのを見る形で追いかけるほどガチでライブを楽しみにしていた。アルバム発売前から熱心に映像で新曲を聴いていたけれど、シンプルなビートのダンスチューンに回帰しているように感じていた。予想は的中し、彼らの原点「ブレイクビーツ」に回帰したようなベースとドラム主体の圧倒的ダンスアルバム。加えて30年のキャリアで培ったサイケデリックサウンドとヒップホップへの接近、彼ら特有の民族的な雰囲気を何一つ失うことなく傑作アルバムを作り出してきた。色んなテクノ系アーティストが過去曲で頑張っていたり、EDMに対応していくなかでケミカルを貫いているのが本当にカッコいいし憧れる。ぜひ聴いてほしい。

6 Cero - e o

第一印象はなんかおしゃれそうなバンド名だなあ、でした。アルバムの配信直後、Twitterで音楽ファンに大絶賛されておりなんとなく聴いてみたもののほんとにおしゃれすぎてまったくついていけずに終了。なんか良かったなあ?みたいな感想だったけれど「Fdf」という曲にハマったり、録音の良さ、コードの動きに注目できるようになってから急に面白い作品に変化した。駅で長い時間人を待ったときがあり、本当に音だけに意識を集中して1時間近く外でこのアルバムを聴いた。あまりの良さに感激したのと同時に音楽を作る1人の人間として作品の完成度に怖くなった。ただこのアルバム、全く頭に残らないし口ずさめもしない。曲の難解さについていけてないだけかと思ったけれど、そういうわけでもなさそうだった。絵画を見た時に、雑に景色は覚えているけどあまりにぼんやりすぎて自分で描いてみろと言われても手が動かない感じ。ただもう一度絵を見ると、これこれ!ってなる感じ。このアルバムはこういう表現がいい気がする。

7 amazarashi - 永遠市

amazarashiは今年もアルバムを送り出してきた。去年の3月に前作が出てから約1年半、ツアーもこなしていたにも関わらずこの作品量はおかしい。大きなタイアップも少なく秋田さんの意思が強く反映されることが多くなってきたが、またしても傑作アルバムを完成させてきた。もともと歌詞の韻の踏み方とかでヒップホップの影響を濃く感じていたけれど今回はほぼローファイヒップホップと言っても過言ではないと思った。リズムには乗らず相変わらずのポエトリーリーディングを披露してくるが、後ろで流れているビートはローファイそのものだった。加えて歌詞とボーカルの破壊力は変わらず、ギターの音も強烈に歪みながら攻撃してくる。ただ豊川さんのピアノはいつも通り美しくそれが独特の空気感を確立している。「さよならオデッセイ」と「超新星」は素晴らしかった、アルバム曲なのが本当に勿体無い。前者はフェスでやってたみたいだけど本当にもっと人に触れられるべきだと思う。特に人知れず苦しんでいる人達。amazarashiの信念を曲げず、音楽の表現を追求していく姿勢が好きだから次の作品も楽しみだ。

8 haruka nakamura - 春秋 -Light years-

haruka nakamuraの珍しいビートありの作品。京都のレコード屋で半ば無理矢理買った作品だったけれど凄まじく良かった。BGMとして頻繁に流している。個人的に季節的、自然的な内容の音楽やアートワークは非常に好みなのでharuka nakamuraの創作姿勢はとても好きだし、ピアノの音にもそれが如実に出ているアーティストだと思う。もう1人、高木正勝というピアニストがとても好きで、彼もまた自然と真摯に向き合っているアーティストだ。けれど鳴らす音は正反対で彼は言うならばロックな音のピアノを鳴らす。ドンシャリなサウンドで、雄大な自然の強さを鳴らしている。haruka nakamuraはその逆で、小川で小鳥が鳴いているような、海沿いでさざなみの音に身を任せるようなピアノを鳴らす。最近はその音が本当に心地良い。「少年の日」と言う曲が収録されているのだけれどぜひ一度聴いてみてほしい。

9 haruka nakamura - 青い森Ⅱ

haruka nakamuraからもう1枚。彼は作品を出す量が非常に多い。いつも聴きながらまあこんな感じかと思っているけれど、このアルバムはアンビエント色がかなり強くて聴き始めからのめり込むように聴いていた。作業しながら聴くつもりが集中して聴いてしまって何故だろうと思ったが理由は簡単だった。自分のアンビエントと非常に似ていた。そして自分の完全上位互換だった!ピアノの隙間、フィードバックをストリングス代わりに使って何気ない場所に配置すること、何もかも自分だった。ただ自分より美しいメロディを鳴らしていた。素晴らしい音楽になっていた。悔しいけれど死ぬほど好きだし死ぬほど聴いた。自分の方が環境音を強く使っていたりと違いはあったけど、ここまで自分と雰囲気が似ていると変な気持ち。自分のアンビエントはよく聴くけど、この作品もしばらく聴いていると思う。「time space」「sonar」「LAND SCAPES」この3曲が非常におすすめ。

10 People In The Box - Camera Obscura

俺はPeopleを信じていた、いや今も信じている。このバンドも大学4年間を長く使い大好きになり、そして学生生活最後の年に4年ぶりのアルバムを発表してきた。友達に教えられてからゆっくりバンドの変化を追いながら楽しんできたが、最新作で自分の感情とリンクした。相変わらずのマスロック、ポストロックを前面に押し出したトリッキーな楽曲たちが待ち構えていたが、cero同様録音の良さが異次元に達していた。自分で録音やmixをしていると音の良さが曲の良さに直結する重要な要素なことはよく分かっているが音が良すぎる、なんだこれはというレベル。特にこのバンドはベースラインが凄まじい。音源の音が詰まった状態、ライブでのシンプルな3ピースでの演奏でもバンドを支えつつ自身を前に出せる最高のベースだと思っている。それがかつてないほどよく聴こえる。そして最近はピアノが楽曲の根幹を占めることが多かったけれど波多野さんはギターに回帰。コロナ禍に練習したらしく相変わらずギタボとは思えない異次元のリフを弾きまくっていた。特に「戦争が始まる」の後半のリフを歌いながら弾いているのをライブで見た時は本当に頭がおかしいと思った、努力すれば人間ここまでやれるのかと。。ダイゴマンのドラムは手数が多すぎてよく分からないことが多かったけれど、先日初めてバンドでドラムをやってからもう1度聴いてみたら凄まじく音がクリアに聴こえてきた。どの音が曲にどんな影響を与えるのかというのが分かると改めてこの人のドラムは怖い、このバンドが3ピースの限界を高めているのはやっぱりこの人の力が大きいと感じる。

そして詞だ。全て読み取ることは俺程度では全くできないが、インタビューや読み取れる部分から必死に考えた結果、これは「生活」のアルバムだった。もちろん全然違うかもしれない。複雑化し、常に自分が思った方向とは違う方向に進んでいく世界を自分から、時にはそれを見つめる誰かから見た「生活」を描いたアルバムだった。背中を押すわけでも、愛を伝えてくれるわけでもないけれど本当に優しい詞だった。皮肉も交えつつ、今の自分たちの生活を描いた上で最後に「優しいポルターガイスト、放っておいても問題ないよ」という詞は胸にくるものがあった。そしてアルバムとして、最後に生活のループを暗示させるエンディングと1曲目の詞がそれに呼応するものになっていること。時折出てくる「視線」というワードが自分からのものに感じた時、このアルバムがいかに凄いかを思い知った。文字量からしても分かると思うますが、今年のベストアルバムはこのアルバムです。素晴らしかった、ぜひ1度聴いてみてほしい。



ということで今年のベストアルバム10枚でした。来年もきっと予想だにしない音楽に出会うことでしょう、それだけでなんとか生きてく理由になる。楽しみだ!

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