マガジンのカバー画像

おすすめ断髪小説(自分の以外)

43
運営しているクリエイター

2019年8月の記事一覧

初めての床屋

初めての床屋

 就職氷河期とはよく言ったものだ……
 高原遼子はせまい四畳半ほどのフローリングの床に仰向けに寝そべる。
 そろそろ内定の一つぐらいは欲しいところだが、すでに二十社近く入社試験を受けたというのに最終面談までこぎつけることができたのは一社、二次面接までが五社しかない。
 家に届いた当初は何よりも頼もしく思えた分厚い就職情報雑誌は、今ではすっかり部屋の隅に追いやられ頼りなげに映る。
「就職は自分一人で

もっとみる