見出し画像

パリで見た幻想。結婚記念日に思う夫婦のこと。

今日は、結婚記念日。
入籍してから6年たったようだ。

正直、もっと長かった様な気がするけど、この6年で、3回引っ越しをし、仕事も変わった。

とにかく、怒涛の様にいろんな事があったし、思い通りや、理想通りに行かなかったことも、たくさんあった。
本当によく、夜中に愛犬を抱きしめて、1人で泣いたし、
その分、嬉しいこと、幸せなこともあった。

パリで見た老夫婦の幻想

20歳の頃、大学の先生が企画したツアーで、パリに行った。
生まれて初めての海外旅行だった。

美術大学の写真のゼミの先生で、ツアーのテーマは「パリ、撮影旅行」
今では信じられないけど、モノクロのフィルムで、暗室で現像していて、初めて見るパリは、全てがそのモノクロの、銀幕の世界にぴったりに思えた。

パリに着いて、数日目。
その日は2月14日。
バレンタインデーだった。

ふと交差点の向こうを見ると、真っ黒な服を着た小柄な老夫婦が、手を繋いで横断歩道を渡ろうとしている。

80代位の老夫婦に見えたけど、おばあちゃんは、なんと、片手に真っ赤な薔薇の花を1輪握っていた。

真っ白な髪。
真っ黒なスーツとワンピース。
どんよりとグレーの空。
そして、横断歩道のモノクロ。

完璧なモノクロの世界。
その中で、目を突き刺す様に鮮やかだった「赤い薔薇」

わぁあああ〜。

衝撃だった。

その後、誰かが「フランスではバレンタインデーに男性が女性に花を贈るんだよ」と教えてくれた。

あの頃の私はまだ20歳位で、理想に燃えていた。
だから、その素敵さに、身が悶えた。

「ああ、私も、歳を取ったら、あんな風に手を繋いで、記念日には赤いバラをもらって、そんな伴侶を見つけたい!」と、心に誓った。


あれから、20年。

毒蝮三太夫さんじゃないけど、本当に「あれから20年〜」である(笑)
今思えば、あの夫婦にだって、いろんな事があったんだろうなぁと思う。

よく考えると、2人とも無表情で、特にお婆ちゃんはムスッとした顔をしていた気がする(笑)

もしかして、朝、ケンカをしてきたばかりだったかもしれないし、今は手を繋いでいるけど、夫婦の危機だって、何度も、何度もあったかもしれない。

結局、何もかも幸せな人生なんてない。

まだ40年ちょっとしか生きていないけど、中年になって分かって来たのは、完璧に幸せな、幸運ばかりの人生なんてないし、あったとしたら何も学べない、つまらないものだということだ。

どんな偉人の伝記を読んだって、順風満帆に何もかも成功してきた人なんていないし、そんな人の物語は、伝記にはならない。

人生には本当に色々な困難や悲しみがあって、、、
でも、それを、どう乗り越えて、新しい道を切り開いていくのか。
そこに人生の美しさと、面白さがあるのだろうと思う。

そう思えば、困難があればあるほど、ある意味、その人の人生は面白いし、それにヘコタレずに匍匐前進でいいから前に進み続けた人が、人生の勝者なのかもしれない。

「夫婦でも、同じかもしれないなぁ」と、ふと思う。

1輪の薔薇の花の後ろには、小娘には分からない夫婦のストーリーが、ワンサカ渦巻いていて、だからこそ、あんなにもパリの街で色鮮やかに輝いていたのかもしれない。

どちらにしても、あの頃、20歳の私には想像もつかなかった。

20年経った今。
まだ、たった6年しか結婚生活を送った事がない私には、分かりようのない世界かもしれないけど、20歳の頃よりは、薔薇の花の色が深く見える。

40代は、そういう意味では、本当の人生が少しづつ分かり始める、入り口なのかもしれない。

ガムシャラに理想を追いかける20代、30代を経て、ちょっとヘコタレたり、疲れる事も多くなって、足が止まる。そして、振り返る。

ただ、カッコ良いと思っていた「C’est la vie!セラヴィ(それが人生さ)」という言葉の深さがなんだか分かってきた気がして、大人になった気分だ。

C’est la vie!幻想につきあい続けてくれた主人に感謝。

正直、昨夜は、結婚記念日に全く興味がない主人に少し腹が立っていた。

でも、ふと、あのパリの老夫婦の赤いバラの毒々しい位の「赤」を思い出したら、「C’est la vie!それが人生か、、」と思った。

あの頃、老夫婦がロマンチックに見えたのは、私が若くて、人生も、本当の幸せも知らなかったからで、幻想だったのかもしれない。

そう思うと、理想を振りかざす困ったちゃんの私に、6年間も付き合ってきてくれた主人に、急にありがたかったなぁと思い始めた。

まあ、私もそろそろ大人になろうではないか。
今日は、1日、主人に感謝する日にしたいと思う。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?