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『2023年に観た映画』3選

才能の話。

1.『犬王』

ここから始まるんだ俺たちは!

まず私は身体表現への関心が分厚い。面をかぶって舞うことへの憧れとともに、ひとつめのパフォーマンスで気持ちを持っていかれてしまった。時代が合っているのか自信はないけれど、室町にもつ飾り立てのない異質なイメージがいきなり現代と錯綜してスタートする。カットが1秒より短い。こういう時間の切り取り方をするんだなぁーと思う。色も口語もギターもアンプも、当時の高揚を今感じさせるために必要だったのだろう。説得力のある音楽だったんじゃないだろうか。アヴちゃん、何者なんだ。森山未來、知ってた。私が閉塞感を抱きやすいアニメーションをみていることのできる最長時間は現状90分間ほどではないかと考えている。絵の新しさとどこまで相関関係があるのか息がし易かった。透明度が高い画面の中で、才能が連帯する。

2.『ファントム・オブ・パラダイス』

Get yourself together.

町山智浩氏オールタイムベスト。笑っちゃうくらい踏みにじられ純愛エッジバカ利きエンターテインメントだった。本家に多分な解釈を加えてできあがったようで、銀歯も面もほぼ自然で必然のものになっていた。アゴから手を出す仕草が好き。ポップな色づかいと字体、私でもわかる音楽の良さでいっぱいだった。遡って『ヘアスプレー』、そしてPLAZAを思い起こした。‘契約’そしていつまでも続く‘熱狂’。スワンの考えるエンターテインメントは生きている限りどこまでも広がっていったのだろう。

3.『場所はいつも旅先だった』

きみがなりたいならいつでもなれるさ。
ただし、いい漁師になるには働き者じゃないといけないよ

松浦さんの本はいくつか読んでいるけれど、シンプルなのに私の思慮が浅くて浅くて入っていけなかった。松浦さん監督作、そして小林賢太郎朗読(しかも色々あった時期)が私にとってすごくいいタイミングでU-NEXTに入ってくれて歓喜した。ゆえにエンドロールの#小林賢太郎を応援します は気になってしまった。旅の終わりの、特別なとっておきのタイミングで観ようと考え、1月15日鑑賞。旅は暮らし、つまり旅以外の部分によって形作られるという意味なのかと解釈した。24時間営業、シギリヤ、たいして動かない木がぼんやり撮られていること、碗粿、いいなぁ。一番どきっとしたのは、名前なんてない人間と店が当たり前のようにあることだ。きっと旅に出るときには、自分の自分らしさが例えばどういうことなのか、わかっているといいんだ。肝心なことは、ぜんぶひとりで。と彼の声が言った。

散る。退く。

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