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ゲーム『大逆転裁判1&2』をクリアしました

 『大逆転裁判1&2 -成歩堂龍ノ介の冒險と覺悟-』をクリアしました。
 総プレイ時間は40~50時間、余暇時間を全振りしてエンディングまで見届けました。めっちゃ面白かった~~~!!という感想です。


 逆裁シリーズは初めてのプレイだったんですが、逆転裁判ってもっと真面目なゲームだと思ってたんですけど全然違いましたね。裁判を題材にこんなにめちゃくちゃなことやってて大丈夫なんですか。びっくりしましたよ。

 1&2とあるけど前後編で実質二部作、合計10話からなる物語は重厚長大で、普通にプレイすれば1話3~5時間かかる膨大なテキスト量。前編での完結を完全に放棄するのと引き換えに、ばら撒かれた伏線を怒涛の勢いで回収していく2の中盤以降はお見事としか言いようがない。
 今までも興味はずっとあったんですけど、「今作は過去作と比べて~」みたいな批評とか「一部ですごいキャラ人気があって~」とか独特な雰囲気があって尻込みしてたんですよね。昔コラボしたリアル脱出ゲームは参加したことはあって、なぞる程度に知識はあったんですが。いや、ホントによくできたゲームですよこれ。


法廷バトルエンタテイメント

 なんと言っても証言から矛盾を見つけ出し、証拠を叩きつけて真相をあぶり出す法廷パートがゲームとして良くできてる。新たな証拠や証言が出てくることによる状況の変化、絡み合った複数の事件を解いて真実へ近づいてゆくライブ感、ビックリドッキリ証人たちのリアクション芸などなど、「事件は法廷で起こっている」といわんばかりに場を盛り上げるグルーヴな展開に思わず前のめりになってしまう。たった2行のテキストウィンドウと巧みなBGMの使い分け、フルボイスではないおかげで可能となった独自のテンポ感には脱帽。

 証言から矛盾を見つけ出して証拠を突き付ける。言うだけなら簡単だけど実際やってみるとこれがなかなかいやらしく、大まかな道筋は見えていても段階を踏まなければ事の真相までたどり着けないのがミソ。
 どうしてもゲームオーバーになりたくない場合(間違えたくないというよりゲームを進める上でのモチベーションを下げたくないので)はこっそり攻略見ちゃうんだけど、そうすると途端に単なる答え合わせになってしまうので「やっぱ自分の手で矛盾を見つけ出さねーとな~~!」って気持ちになるし、探り探りで思考して証拠が通ったときはめちゃくちゃ楽しく思わずガッツポーズが出る。実際コントローラーを握らないと分からないカタルシスがそこにある。

 1では主要キャラの顔見せとちょい掘り下げ、大量の伏線を張ったまま終わってしまったので作品として消化不良だったけど、2で見事に風呂敷を畳み切ってくれたのでここの辺りの満足度が高い。
 特に、証拠の捏造や不慮の事故みたいなケースで解決とは呼べず消化不良感が強かった1に比べて、闇に葬られた事件が徐々に暴かれ全てが最終話へと繋がっていく2は構成がきっちりしていて、前作からの伏線も期待に応えてくれる驚き、予想外も多々あってすごく良かった。展開が読める部分と読めない部分が折り重なってると、遊んでるこっちとしても謎解きに参加している気持ちになれるのでこれがゲームというプラットフォームの強さですね。すごい良くできてる。


ここ以降からネタバレ込みの感想になります。


時代背景あれこれ

 舞台となる19世紀ロンドンは、史実に準拠した生活感が滲み出ていて独特な味わいがある。あくまで法廷や調査パートの情報として提示される程度だけど、窓税やガス供給など当時の暮らしが垣間見える言及は興味深い一方で、そこに住む人物達のキャラ造形は非現実的なので脳がバグりそう。何なんだこのコントラスト。
 写真や蓄音機が当時最先端の技術としながらも瞬間移動装置のような現代でも不可能な技術がもっともらしく検証されてるし、ゲーム上の「遊びの制約」への絡ませ方がめちゃくちゃ巧い。ホームズが私的に発明した捜査道具はインチキ科学として法廷では突っぱねられるのも、時代が科学捜査へと移行する過渡期故に説得力があるし、それを逆手にとったクライマックスのオーバーテクノロジーどんでん返しがあまりに痛快すぎて本当にすごいね。他のゲームだったら怒られるでしょこれ。


登場人物あれこれ

「魅力的な物語は魅力的な登場人物に宿る」とはまさに至言で、本作では主要キャラから証人、陪審員に至るまでそれはもうスットコドッコイでビックリドッキリなキャラがドバドバ出てきて眩暈がするくらいなんですが、どいつもこいつも個性付けが強烈で口調から外見、動きに至るまでバチバチに決まってるのがすごい。バンジークス検事とか陪審員の10倍くらい工数かかってそうなモデルだし世界観レベルの尺合わせがどうかしてるし一部キャラは性癖がすごい。本当にどうかしている。以下、キャラクターメモです。

ナルホドくん
 初ナルホドくんなので彼のパーソナリティを全然知らなかったんですが、思ったより皆から犬みたいな扱いされてて笑ってしまった。かなり人権がない。なにぶん1では弁護士見習いポジションだったので色んな人からナメられたりして歯痒いところもあったけど、2で人間的にも弁護士的にも成長し友とともにロンドンの闇に立ち向かう姿は王道で素晴らしい展開だった。というか、全体的に掘り下げ不足の1から2で好感度ガン上げしてくるキャラが多すぎる。

スサトちゃん
 第一印象はいかにも生真面目な性格そうだったけどそんな第一印象は早々と剥がれ落ちてポンコツや抜け具合が見えてくるのがすごく良いですね。ちょっとホームズ狂いでぶん投げてくる程度しか癖がないので他キャラと比べて相対的に臭みがない(失礼)。ナルホドくんとの掛け合いがほぼほぼ漫才でどちらもボケとツッコミをこなせるのもつよいけど妖しき美少年弁護士が最高すぎてそれだけで5万点です。

ホームズ
 奇天烈で胡乱な不審者との初接近遭遇からここまで頼もしい存在になるとはビックリなイギリスが誇る世界の名探偵。何か知らんがダンスがキレッキレですごい。今作のホームズは狂言回しというか、事件現場で好き勝手引っ掻き回しまくるだいぶ迷惑な探偵なんだけど、かといって鬱陶しい存在でもないバランス加減が絶妙で、共同推理パートも事件の核心を突いていながら勢い余って真実の向こう側まで飛んでいってるというのがすげえ面白い。あれだけめちゃくちゃやって最後にアイリスの父として「人間」を見せつけてくるのが本当にズルい。

アイリスちゃん
 医学博士で発明家で料理もでき「シャーロックホームズの冒険」の著者という盛りすぎな設定から驚くほど純情な10歳少女を提示してくるのでヤバイと思う。「彼女の父親はあのワトソン博士なのか?」は今作の最大の謎のひとつで、最後の最後で明かされる出自の真相には感嘆したし最終的に落ち着くホームズとの疑似家族はめちゃくちゃハッピーエンドなのでグレグソン警部みたいな顔になっちゃうね。それはそれとして最終法廷でのホームズとの暴れっぷりは世界観ぶち壊すスレスレのラインでマジで危なかった。

アソウギ
 まさかの退場から「死んだと思ったら生きていた!」の劇的な再登場を果たした、風もないのにハチマキがたなびく男。復活後はハチマキも刀も面白マスクも無くなってしまいアイデンティティが危ぶまれたが、新しく召し与えられたであろうピッチピチな貴族服がハイパーセクシーすぎて目のやりどころに困る。ダークサイドに落ちるか落ちないか瀬戸際でのバランス感覚が絶妙で、大法廷でも平気でナルホドくんと重い感情の交わし合いをおっぱじめるので有罪です。

バンジークス検事
 いきなり云われのない敵対心を向けられて「なんだァ……? この被ダメモーションがエロい検事がよ……」って思ったけど徐々にオモシロが滲み出てきて指数関数的に好感度が上昇した被ダメモーションがエロい検事。被ダメモーションがエロ過ぎ。顔が怖いヤンキーみたいな人が真顔でトンチキ会話に取り込まれていくのめちゃくちゃ好きなんですよね(かわいそう)。人物造型とストーリーの噛み合い方がパーフェクト過ぎてグラスを投げつけたくなる。酒樽の並べ方で悩んでるのが分かりみが深い。公開年順にするかシリーズで揃えるか監督名で並べるか悩むもんな……。

ミコトバ教授
 今作のダークホース。騙されました。「序盤しか出番のない保護者ポジの人」「何か怪しいおっさん」「後半で被害者になりそう……」など色々勘ぐったけどまさかのホームズの親友であり相棒、つまり「ジョン・ワトソンのモデルとなった人」は完全に予想外。この人のおかげでこのゲームの面白さが100倍アップしました(ネタバレ食らわなくて良かった~~~!!)。よく見たらチョビ髭で丸帽子被ってるので完全に完全ですね。初登場の和装姿で完全にカモフラれてたわ……。正体が判明した途端ネズミの物まねしたり突然タップダンス始めたりする面白すぎるおじさまだし、最後の裁判でも事の顛末を左右する最重要証言者だったのでさらに驚愕。真・共同推理での息の合ったホームズとの掛け合いが最高すぎてこのコンビがすごい2021大賞受賞。

ハート・ヴォルテックス
「こいつ実はラスボスじゃね……?」という期待を見事に応えてくれたザ・ラスボス。裁判長席から被告人席、弁護席、検事席を神の如く見下ろす最終裁判は貫禄十分だが最後の最後でガワが剥がれて醜く足搔く姿もかなり好き。彼の行動原理もまた分かりみがあるものの結局どこまでも悪役であり、「強大な権力にはより大きな権力をぶつけんだよ!」な最後の一手に叩き潰される様はご都合主義であるが絶対的な説得力があるのでめちゃくちゃ好き。イギリス王家パワー最高!

ジーナちゃん
 正直なところ1の青少年の指導更生パートはそれほど好きではなかったけど2で人間不信なスリ少女から無邪気に公権力を振りかざす公安少女にクラスチェンジしたのは笑う。めちゃくちゃな転身だけどおかげですげえ生き生きとしているので完全にオッケーです。作中で一番情緒の上げ下げが激しいのでアイリスちゃんと美味しいものを食べて憩ってほしい。

夏目漱石
 まさかの実在する人物登場にビビる。しかも何……何? この人? そのキャラ付け大概にしてほしい。勝手に抱いてたミステリアスな夏目漱石像がゴールデンカムイに出てきそうな面白変人に上書きされちまったじゃねーかどうしてくれるんだ。しかも1話限りのゲスト枠と思いきや、続編を跨いでそこそこ出番あるのでさらにビビる。

コネット・ローザイク
 突然現れて性癖どストライク突き刺さしてきたマダム・ローザイクさん(26)スゴすぎませんか。(26)ですよ。大人の女性ギリ一歩手前の奇跡的なキャラクターデザイン最高すぎんかマジで。目を伏せるとことか成熟しきってない幼さが垣間見えるの狂ってしまう……。しかもぐりっと後ろ回り込んだら長い三つ編みがあるんですよこの人。オワ~~~三つ編みか~~~これヤバいな~~~思わず共同推理で選択しかけちゃったね危ない危ない。人差し指を立てたビークワイエットのポーズも妖艶すぎるし齢16で蝋人形作りのために墓場掘り起こしてるのもすごい。歳10歳くらい間違えてない大丈夫?いやでもやっぱ(26)でお願いします。熱々の蝋をぶっかけて欲しい。


シャーロック・ホームズ的なあれこれ

 そういえば、私はその昔に原作を撫でる程度に目を通し、ガイ・リッチーの映画とかベネディクト・カンバーバッチのドラマを観てた程度のホームズファンです。パスティーシュ小説だと山田風太郎の「黄色い下宿人」が一番好きだったのでワクワクしながら始めたら夏目漱石がエクストリーム文士だったので「ええ……(困惑)」となったりしましたが、浅いファンでもしっかり楽しめるようになっているし、各話冒頭では「シャーロックホームズの冒険」の語り部であるジョン・ワトソンのナレーションが挿入されたりと、本家作品にリスペクトを捧げているのが良かったですね。代わりにホームズ氏がエキセントリックな性格になってたけど、まあオリジナルも室内で銃ぶっ放したりヤクをキメたりしてたのでどっこいどっこいかな……。

 1の一話で殺害された医学博士のジョン・ワトソンが実はホームズと接点のない人物だったというのも大いなるミスリードで、であればこのジョン・ワトソン博士は何者なのか? そして本当のホームズの相棒は誰なのか? というホームズを知る人なら誰しも注目するポイントの種明かしタイミングがめちゃくちゃ巧い。そんでもって、そのことは(事件と大いに関わりがあるが)本筋ではない……つまりナルホドくんたち大逆転裁判の物語を食わない程度に奥ゆかしさをわきまえているのでマジですごい。「おめえのパスティーシュホームズも知りてえけど逆転裁判も楽しみたい」というワガママなお客さんの要望に完璧に応えてくれてる。いや、本当に良いゲームでした。こんなに名残惜しいゲームは久々だったな……。


(終わりです)

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