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令和になってようやくエヴァンゲリオンを観た話【TV版・旧劇場版】

あー、どこまで話したんだっけ。そうそう、エヴァの新劇場版を観た話はしただろう。序破までは楽しく観れたのに、Qになった途端訳が分からなくなったってやつだ。過去作をすっ飛ばしているから覚悟はしていたんだが、それにしても何が起こっているのかさっぱり分からない。だから俺は「ああ、やっぱりTV版から観返さなくちゃダメだな」と思った。そう思ってしまったんだ。その言葉通り、何も知らない俺はNetflixに加入し、TV版26話と旧劇場版2作を観た。そう、全部だ。俺は事の顛末の全てを知った。その結果がーーこのザマだ。新劇場版はまだいい。『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が残っているからな。まだ未来の結末に思いをはせる自由がある。だが、旧劇場版はどうしたらいい?TV版最終話は?おまえたちはあんなものをずっと抱え込んでいたのか?20年以上も?そんな平然な顔をして?

こんにちは、azitarouです。
先日、生まれて初めて『エヴァンゲリオン新劇場版』を観たのですが、あまりの訳の分からなさにより、遂に『新世紀エヴァンゲリオン(TV版)』『新世紀エヴァンゲリオン劇場版(旧劇場版)』を拝見しました。全部観ました。一体何なんですかこのコンテンツは。分かる分からないの次元の話ではない。これが国民的人気アニメ?本気で言ってるのですか?


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TV版

第壱話~第六話(ヤシマ作戦)
概ね新劇場版序と同様の進行で、エヴァに乗る乗らないでシンジくんが毎回精神的に追い詰められる。使徒と戦う度にズタボロにされながら辛勝し病院送りにされるのが日常茶飯事。ストレスフルな環境で無理やりブラックバイトをやらされている感覚なので物語に爽快感も開放感もない。つらい。

ヤシマ作戦がネルフ(というかミサトさん)にとって特別大規模な作戦という訳ではなく、この後の使徒戦でも明らかに分が悪すぎる賭けのような作戦を平気で立案、決行するので戦慄する。あなたのライブ感あり過ぎな作戦に日本国民がどれだけ振り回されているのか自覚してほしい。


第七話~第拾参話(楽しいエヴァの始まり)
暴走する原発ロボット!エヴァを釣り餌にした使徒一本釣り!音楽のリズムに合わせて2体の敵を同時に倒せ!マグマに潜って使徒の蛹を捕獲せよ!人類最後の希望にして世界最大の秘密組織ネルフで大停電!?などといった俺の知らないエヴァがどんどん出てくる。謎ツイスターゲーム(2016年が舞台やぞ?)やデブ化耐熱スーツ、ママコンピュータなど面白ガジェットも続々登場する上に今週のビックリドッキリ使徒の個性が爆発しすぎてまるでニチアサ番組のようだ。

はっきり言ってめちゃくちゃ面白い。これで4クール放送いけるやん!一年間放送してくれ!という切なる願いはこの後あっけなく破り捨てられることになる。


第拾四話~第弐拾四話(終わらない夏の終わり)
虚数空間使い、エヴァ乗っ取り、射程外から一方的に精神攻撃、触手侵食プレイなど、だんだんと使徒が陰惨な手段を取り始め、それに引っ張られるかのようにネルフやエヴァパイロットも鬱々としたムードに包まれいたたまれない気持ちが膨らんでいく。

短期間でどんどんフラグを立てるな。関西弁ムードメーカーを退場させるな。伝言メッセージを残すな。去り際に取り返しのつかない心の傷を付けて回るな。倫理完全無視のマッドサイエンスよりも限界コミュニティのドロドロ人間関係のほうが10億倍怖い。唐突にハレルヤや第九が流れ始め、感情の臨界点で突然画が止まり(アニメイシヨンやグリッドマンで見たやつだ)、カヲルくんがものすごい勢いで登場しものすごい速さで退場していく。

世界は終末へと向かい、全員の心はバラバラになり、シンジくんはもはや一歩も前に進まず、アスカのメンタルはボロボロになり(本当につらい)、ゼーレ暗黒会議モノリスやゲンドウおじさんはここぞとばかりに生き生きし始めるので地獄。レイの正体よりもアスカをどうにかして欲しすぎて頭がおかしくなりそう。救いは、救いはないんですか!?


第弐拾伍話、最終話(グループセラピー)
たすけて。

完走おめでとう私。ありがとうエヴァンゲリオン。あなたは私の心に深い困惑を残していきました。正気ですかこれは。この始末、どう落とし前をつけてくれよう。幸いこちらにはまだカードがある。きっと劇場版でちゃんとした結末が描かれているはずだ……。そう思い、私は旧劇場版の世界へダイヴした。そして二度と浮き上がってこなかった。


新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生

TVシリーズ24話までの内容をバラバラに裁断し、極太明朝体で繋ぎ合わせてできた総集編のような何か。少なくとも「70分で分かる!新世紀エヴァンゲリオン」ではない。最終話まで観終わった後のこんがらがった頭の中身をそのまま上映したやつ。つまり何も分からない。


新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に

待ち望んでいた24話以降の物語で、自衛隊がネルフ本部に乗り込み人間同士の血なまぐさい戦闘が繰り広げられるハードな内容。面白秘密組織から閉鎖環境限界コミュニティに変貌していたネルフが物理的に制圧されていく絶体絶命の状況でついにアスカが復活ッ!!凄まじい気迫で自衛隊をボロ雑巾のように叩き潰して回る!!(YEAAAAH!!!)勝利のガッツポーズを挙げたのもつかの間、エヴァの体にウナギの頭をくっつけたようなクッソキモい連中が空から降り立ち、完全にR-18Gでハードゴアな死闘が始まった。しかしこれはまだ始まりに過ぎなかったのだ……。


登場人物メモ

碇シンジ
主人公なのに最後までウジウジしっぱなし。最初は可哀想としか思えない立場だったが、話のスケールがでかくなるにつれてその自己肯定感の無さに苛立ってくる地獄の入れ子構造。外に出て親父とキャッチボールしろ。飲みニケーションしろ。女の子とデートしろ。「もう一度みんなに会いたい」の一言で一瞬見直しかけたが起きてまずやった事がドン引きすぎて本当にダメ。どうして「僕はここにいてもいいんだ!」で止めてくれなかったんですか。

綾波レイ
分かってたけどこの子ヒロインじゃないよね?途中から綾波レイのようなものに交代するので完全に表情筋が死んだ。楽しい思い出は帰ってこない。あんな形で綾波の喘ぎ声を聞きたくなかったよ……とんこつラーメンを食べてた頃を返してほしい。

惣流・アスカ・ラングレー
ウルトラ複雑な内情を秘める女子中学生。人の形をした感情の坩堝。初登場時が絶頂期だったので後半になってくると使徒に惨敗し、加持さんにろくに相手をされず、ゲンドウからもただの駒扱いで、シンジにすらエヴァパイロットの素質で負けてもう精神的にボロボロで本当にかわいそうランキング堂々の一位。それでもエヴァの登場人物の中で一番人間をやってるので彼女無しでは最後まで完走できなかっただろう。誰よりも碇シンジのことを理解しているが故に彼に向ける愛憎入り混じった感情がクソヤバい。

葛城ミサト
使徒を滅ぼすためなら0.01%でも確率があれば迷わず作戦を遂行し、言葉巧みに中学生を死地に送り出すヤバい人。そして全編にかけてシンジくんとすれ違いまくり大小さまざまな軋轢を引き起こすネルフのダメな大人代表。上司であり、保護者であり、姉であり、子供であり、女であり、家族でもある。一体シンジくんに何人役をやらせようとしてるんですかあなたは。

赤木リツコ
エヴァの開発者がまともな人間なわけがなかった。ちょっと新劇場版と立場が全然違うんですけど聞いてないよ!ネルフの閉鎖的コミュニティの最深部でドロドロの人間関係を築いていたヤバヤバのヤバ女。マッドサイエンスよりも人間の感情の方が怖い。

加持リョウジ
大人たちの中ではだいぶ良識のある人物だったがそういう人が貴重なこの作品では精神的に頼られすぎて周囲に取り返しのつかない傷を残していく。立つ鳥後を濁しすぎでしょ。

鈴原トウジ
シンジくんのクラスメイトでめちゃくちゃ良いやつ。良いやつすぎてフラグを立てまくって退場した。本当にやめて欲しい。

碇ゲンドウ
ホンマにアカンやろこの人。なんでちょっと満足気に退場してったんですか。

冬月コウゾウ
実はあなたも大概ですよね?ゲンドウに内緒でユイさんとコソコソ何話してたんですか。願いが成就したからといってその満面の笑みやめろ。

カヲルくん
やっぱりものすごい勢いで登場してものすごい勢いで退場して行った。相変わらず何の話をしてるのか全然分からん。

碇ユイ
あなたがゲンドウに何も言わずに野放しにしてたせいでこうなったんですよ!反省してください!

エヴァンゲリオン
思った以上にロボットしてない。対使徒用人型汎用決戦兵器だがそれは表向きの顔だったっぽい。開発者すら潜在的なスペックを知らないのはどうなんですか。腕や頭を切り飛ばされたり体をバラバラにされたり食われたりと散々な目に遭いまくるので修理費が恐ろしいことになってると思う。

使徒
毎度お騒がせな人類不倶戴天の敵。力こそパワーで攻め入ってきたりビュンビュン鞭を振り回したりかと思ったら不定形で地形に沁み込んでいたり大気圏外からこんにちはしてきたりとエントリーの仕方に定評がある。今週のビックリドッキリ使徒!が予想外にウケたせいで調子に乗り、途中からえげつない戦法に切り替えてくるのでマジで興覚め。反省して欲しい。

ネルフ
最初の頃は面白秘密組織っぽかったが実は上層部が身内で固まっており人間関係ドロドロだったことが発覚。見事な腐敗コミュニティっぷりを披露し濃密な関係性の檻の中でズブズブと沈んでいった。ロン毛子安くらいしか癒し担当がいない。

量産型エヴァンゲリオン
白ウナギ。R-18とR-18G担当。ロンギヌスの槍をアレしてアーン♡するのマジで頭がおかしい。正気か?

リリス
とてつもないことが起きているらしいが誰も観測者がいないので何も分からない。終幕の狂った光景に一役買った。いや生きていくの無理でしょこんな世界……

人類補完計画
高度にキマった科学はオカルトと区別がつかないを地で行ってるカルトじみた計画。「一つになろう?」「一緒になると気持ちいいよ?」とか明らかにセックスを匂わせてくるので本当にタチが悪い。もっと具体的に説明しないからややこしくなるんだよ!

残酷な天使のテーゼ
アニソンの鉄板だと思っていたがもう葬儀場で流れるリラクゼーション音楽にしか聴こえない。みんなあの結末知った上でカラオケで歌ってたの?大丈夫?


どうなんですか結局

TV版
どうって……見れば分かるだろ?全く意味が分からないんだ。俺が知りたかったのは24話の後に一体何が起こったかだ。グループセラピーの光景を見たかった訳じゃない。確かにこれまでの人物描写は見事だったよ。複雑な胸の内を回想や婉曲表現を使ってあの手この手で仄めかすやり口は本当に凄かった。でもそれはきちんと物語として成立していること前提の話だ。ところが25話はどうだ?延々と「人間とは……クジラとは……」みたいな話をしているだけだ。人類補完計画は何も説明がない。俺はせっかくここまで綿密に練られた世界がバラバラに解体されていくところを見ていることしか出来なかった……。
それに「エヴァも使徒も存在しない世界」として"アレ"を出したのは何故だ?どうして最終回であんなものを出した?本当に"アレ"でなくてはダメだったのか?何がおめでとうなんだ?あのラストはなんだったんだ?みんなはあの結末を受け入れたのか?教えてくれよ。なあ、おい!
旧劇場版
……すまない、取り乱した。旧劇場版だったな。こっちの方は前半部分は本当に良かった。TV版では描かれなかった事の顛末に向けてちゃんと物語してたからな。何よりアスカがーーそう、TV版では完全に廃人になったまま"アレ"に突入して放ったらかしにされていたーーアスカが復活した!あそこがこのアニメを観ていた中で最もハイライトなシーンだった。そう、あそこが最高潮だったんだよ……それがまさかああなるなんて……ああ、畜生!これを作った人間は悪魔か!
それからシンジだ。こいつはもう本当にどうしようもないやつで事態が差し迫っている中でも完全に無気力で見ているこっちのテンションとの落差がすごいことになってる。ミサトもアスカも死ぬ気で戦ってるのにこいつと来たらどうだ?第壱話から何も成長してないじゃないか。温度差がすごいことになってるんだよ。何もかも。そう、人類補完計画のことだよ。画面の向こうでは明らかにヤバい絵面がガンガン流れている。それを全て察しろって?冗談じゃない。まともに説明しないくせに何でも男女やセックスで形容するから余計にややこしくなるんだよ。
もう俺はアスカしか信用できない。彼女がシンジに向ける愛憎入り交じった感情だけが本物だ。感情が人を人たらしめるんだ。共感じゃなく拒絶によって人間は輪郭が形づくられる。だから誰もLCLの海からは戻ってこなかった。人類は分かり合えない。隣のやつの気持ちを100%理解するのは不可能だ。でも他人に寄り添うことはできる。たとえ内に秘めるのが好意だろうと嫌悪だろうと、隣り合った以上うまくやっていくしかないだ。ああ、わかってるよ。そんな単純な話じゃないことは今まで延々と見せ続けられたんだ。それにしても、それにしてもだ。ジュブナイルなら主人公が一皮むけるところだぞ!何が終劇だ!クソッ……いい加減にしろよ……(頭を抱えて地面にうずくまる)


(終劇)



さようなら、すべてのエヴァンゲリオン


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