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白刃は夜舟で-岐阜と愛知遠征-

注意書

これは後に自分が更に知識を得た時に振り返って
「こんなこと言ってら」と感じるための覚書です。
素人意見は間違えてれば間違えてるほど良いとは思いませんか?
…思わないか。

まあまだ刀剣の各部名称すらまともに言えないけれど、
せっかく鑑賞しているのだからそろそろ感想くらいは言えるようになりたい。
あわよくば文字に起こして冷静になって、更に疑問を持てるようになりたい。
そういう文章です。


本書

刀剣の展示を各地見回ってきて、じわじわと刀装具に興味が湧いて居たのだけれど、岐阜県の関鍛治伝承館で、スイスのデザイン会社と関市の刃物会社がコラボして刀を作った、という情報が回ってきた。
これは絶対になんとしてでも行きたい!と即刻新幹線のチケットを取った。
一度名古屋を介して行くので、これは好機!
宗三左文字と大般若長光が展示されている期間内に岡崎市美術博物館にも行っちゃお!


名古屋に新幹線で着くと、JRしらさぎ線で岐阜駅へ。
そこから名鉄バス“せき東山行き“で50分、本町5丁目が最寄。10分ほど歩いた場所にある。

関鍛治伝承館

入るとまず、鍛刀の流れを順を追って解説してくれる。刀がどう成形されていくのか、どういった道具が使われているのか等々、実物と映像を交えてわかりやすい。研師、柄巻師、鞘師、白銀師等それぞれ技師についても知ることができる。
刀装をつけた状態の刀を持つ体験コーナーもある。なかなかの重さだったが、柄糸が手に馴染む。以前刀を持つ体験をした際に鮫肌の柄で少し手に食い込んで痛いと感じた。その時との違いが比べることができて貴重な経験だった。
一階の刀剣展示はずらりと『兼』の文字が並ぶ。兼定と兼貞、兼白と兼清…同じ呼び名で異なる字の刀工が並べてあり、面白い。
そこで展示されている兼定が、なんと三代目の疋定!兼定といえばやはり和泉守兼定はよく展示されていたが、疋定は初めて見た。兼定に興味を持ってからずっとみて見たいと思っていたのでようやく会えた。
反りが深めの刀身で、ハバキの下がやや太く、中央が少し細くなり、物打ちで再び太く見える。二代目、十一代目共に太めの刀身のものを多く見てきた気がするが、この形のおかげでスマートな印象を受けた。
刃文は互の目に丁子混じりで実に華やか。腰刃が特に三本杉のような乱れ方をしていた。鋒周辺で飛焼も見られ、一振の刀の中に表情がころころと変わり見るのがとても楽しい。
鋒が大きく、武器の強そうな見た目が兼定らしい、気がする。

小さい文字で百人一首の歌と歌人の絵(!)を刀身に掘った兼永作の刀が展示してあったが、本当に見事というかどうやって掘ったのか作刀風景が気になるというか…。それも二振も。
彫りは龍や神仏、梵字、草花がよく見るが、ままこうった自由度の高い(といっていいのだろうか?)刀剣を見る機会があると私はまだまだ刀の世界に指先も入れていないのだなと実感する。面白いなあ。

奥に入ると、なんと!蛍丸の写しが!
押形は見たことがあったが、写しは初めて。調べればここに展示されているのは阿蘇神社に奉納された真打の影打らしい。
135㎝の大きな刀身が大きく反り、その姿が目を引く。
刃文は緩やかに湾れていて、穏やか。大きな八幡大菩薩の文字と護摩箸が掘られて、神仏への信仰深い刀剣であると感じる。
蛍丸の実物は紛失しているが、いつか帰ってくることを祈らずにはいられない。

さて、いよいよ今回の目的の『本関刀』。
柄から鞘までキャメル色の牛革でできており、まるでブランドのバッグのよう。
14金でできたワイヤーが1本、頭から緩やかに巻きつき、鐔に向けてグッとキツく狭まる。鐔はワイヤーが押し固まって溶けたような螺旋を描き、そこから鞘尻に向けて再び解けていく。目釘は金のシンプルなカシメ。スーツで佩刀しても違和感がなさそう。現代の拵、といった風体で非常に惹かれる。
そこに入るのは二十六代目の兼房刀匠の刀。波紋は緩やかに乱れ、中央でさらに大きく乱れていき、そして鋒に向けて再び緩やかになっていく。拵と並べてあると、その緩急にどこか共通点を思わせた。
兼房刀匠の刀は他にも展示されていたが、大鋒がとても目を引く作風だと感じた。拳大の鋒が武器の厳つさというより、いっそ清々しくスタイリッシュさを醸し出している気がする。

之定と兼元の作刀が隣合って展示されており、関の二大刀匠として有名な刀を比べて見ることができるのも必見だ。

今回2階では『日本刀のすがた』の展示をしていた。
兼高作刀のほとんど反りのない日本刀や、薙刀直しの刀、長巻直しの刀。菖蒲刃、両刃、小烏造り…本当に様々な姿の刀剣が集められている。
そこには長巻もあり、薙刀と共に短く擦り上げてしまったものが多いようで現存しているものは貴重だそうだ。

奥には関の刃物としてナイフや鋏などが展示されている。何重にも重なったサバイバルナイフなど面白いものが沢山ある。
面白いと言えば青宝丸、という世界一の大きさの拵もあった。太郎太刀、次郎太刀も見たばかりだが、それをも超える3m88㎝。腕二本分程の太さの鞘は思わず笑ってしまうほど大迫力。鐔や目貫も一際大きく、建物のジオラマでも見ているような感覚を抱く。
是非見てみてほしい。

ちなみに隣の濃州関所茶屋では日本刀を模したアイスや玉鋼ビスコッティが買える。

関鍛治伝承館隣の濃州関所茶屋「日本刀アイス」
関コーヒー味。刀身が葛アイスで鐔はチョコクッキー
玉鋼ビスコッティ
名前のインパクトと反して素朴な甘さ。色は竹炭

次に向かうは岡崎市美術博物館。
安桜山公園前から高速バスで名鉄バスセンターへ。名鉄名古屋駅から豊橋行特急で東岡崎市駅、そこから市民病院行きのバスで美術博物館前。大体3時間程の移動時間。

岡崎市美術博物館

閉館1時間前に着いたのだが、ドラマ『どうする家康』の人気で人はなかなかの多さ。
入り口にはドラマのパネルと、刀剣乱舞の宗三左文字と大般若長光のパネルがずらりと並ぶ。
展示室には傘(折り畳みも)、ビニール袋、ボールペン等の持ち込みが不可となっていて、ロッカーや受付に預けなければいけない。展示物の保安に厳重で安心感がある。
本多忠勝や酒井忠次、井伊直政などの人物画や所持していた刀剣が入ってすぐに出迎えてくれる。
私はドラマ未視聴の為、それに関連付けたことは言えないが、家康の家臣や周辺の人物にピックアップしているように感じた。

鎧や手記等の関ヶ原の戦いの資料の中に、備前長船景光作の太刀がある。鋒の先がほんの少し欠けて、戦の残り香のする刀だった。
小板目の肌が美しく、中直刃で互の目混じり。爽やかさのある刀身だった。

同じ空間に同じく備前長船の長光、号 大般若が展示されている。太めの身幅に大きな反りが存在感を放つ。中鋒で帽子に丸みがあって上品に思う。
刃文は腰と先は互の目で大人しく、中央が大丁子乱れ。華やかでありつつまるで煙のように軽やかな印象を受けた。
茎に銘が小さく“長光”とある。ペンで描いたように綺麗な文字だ。

その奥には義元左文字(宗三左文字)の刀。
刀剣乱舞でのか細いイメージがあったが、身幅は太くしっかりとしていると感じた。反りは浅め、先が反り返って鋒が尖っている。刃文は直刃で細かに乱れ、割とシンプルな見た目。想像していたよりもずっと“武器”だった。
左文字は四方をショーケースで囲まれており、背面も見ることができる。
表の茎に金象嵌で『永禄三年五月十九日義元討捕刻彼所持刀』の文字、
裏の茎には『織田尾張守信長』の銘がくっきりと刻まれる。
何度か再刃されて左文字の特徴は残っておらず、斬る事にも適さなくなったと聞くが、この銘はこの先もずっと残されていくのだろう。

大般若長光と宗三左文字

今回疋定が見られたことがかなり嬉しかったので、もっとじっくり岐阜を回って兼定を巡る旅をするのも楽しそうだ。
関鍛治伝承館では鍛錬場の見学もすることができる。日によって鍛刀や外装の技術実演が行われることもあり、いずれそういった場にも参加してみたい。

『本関刀』展示は8/28まで、
私が行った日が宗三左文字の展示期間最終日だったが、大般若長光は8/20まで。
同じ愛知の徳川美術館では本作長義が9/18まで展示されているそうだ。
関鍛治伝承館は他の美術館や博物館より開館が9時と早い。
今回は乗り継ぎに失敗してしまい、叶わなかったが回り方によって
関鍛治伝承館→岡崎市美術博物館→徳川美術館と一日で回れるかもしれない。
大体が17時閉館の為、念入りな下準備が必須だと改めて感じた遠征だった。

岐阜と愛知遠征

以上。