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あなたは自分の音、演奏が好きですか?

大学3年生の頃。
大学の練習室で個人練習をしていたら同期が部屋に入ってきた。

「練習中ごめんね。
もうすぐ授業なんだけど時間が微妙だからちょっとだけここにいさせて!」

練習室にいるとたまにこうやって誰かが入ってくることもあるし、逆に私が同期の部屋に行くこともある。

ごくごく普通の日常のことなんだけど、その時やってきた同期はあまり話したことのない子だった。
その子も楽器はフルート専攻なんだけど、より演奏に特化した学科の子で、私がいた学科とはカリキュラムがちょっと違う。
1〜2年の頃は校舎自体が別だったのであまり関わりがなかった。
なので私の演奏を知らない。

同期が部屋にいる間、話もするんだけど私は練習もする。
と、

「どうやったらあぜみんみたいな音出せるの!?」

突然そう言われてびっくりした。

演奏を聴いてアドバイスが欲しい、とのことでその同期の演奏を聴かせてもらう。
その同期はコンクールだって受けてるし、学科そのもののレベルが高いところにいるので正直私よりめちゃくちゃ吹ける。
卑下してるわけではなく事実として。

一先ず私が個人的に感じたことを一通り伝えると、

「なるほど、確かにそうかも。
でもなんだかんだ言って結局は自分の演奏が好きなんだよね」

そう。
それでいい。
というかそれがいい。

せっかくアドバイスしたのに…と思う人もいるかもしれませんが、この気づきってめちゃくちゃ大事で尊重すべきことだと思います。

私は長いことあがり症に苦しんでいましたが、過去の演奏を聴いて「もっとこうやって吹きたかったのに」と思うことはあっても自分の演奏が嫌になることはありませんでした。

客観的にとにかく音色を褒められるタイプだったから、というのも自信にはつながりますが何より私自身、自分の音が好きなのです。

そういえば以前、自宅で練習していると母に
「本当にフルートが好きなんだなっていう音がする」
と言われたことがあります。
母は全く楽器をやらないし、音楽の教養があるわけではありません。
が、自然と何か伝わるものがあるのでしょう。
家族だから伝わる、というわけでもないと思います。
好きで楽しんで演奏している音ってやっぱあるんだよね。




あがり症を克服するために大切なこと。

それは今現在の自分を受け入れる、認めること。

「自分の演奏が嫌い!音が嫌い!」
そう思っていると本番でも「この場にいたくない。自分は駄目なヤツだ。逃げ出したい…」
きっとそう感じやすいと思います。
もしあがってしまうことがなくてもそれは本当に良い音楽なのだろうか。

もちろん他のプロなどの演奏を聴いて、自分の至らなさを思い知ることはたくさんあるし、目指したい演奏のために努力を重ねることは大事。

でも、ぜひそこで自己否定に走らないでほしい。

演奏活動をしていると
「すごく良い音ですね、でも自分の音は嫌いです」
「あぜみさんには遠く及びませんが…」
などなど、そんな声を聞くことが多々あります。
そういった声を聞く度に「そんなこと言わないで!」と思っている。

だって、私の音は私にしか出せないように、
あなたの音もあなたにしか出せないから。

私がどんなに真似をしたってあなたの音を真似た「私の」音になってしまいます。
技量云々は関係なくね。
でも、「今」「その音」を演奏できるのはあなただけしかいません。

ステージ上でも同じこと。
音を外そうが間違えようがそれは全てその人の個性になる。
そして絶対に誰にも真似することができない。

そう思うことがとても難しいから私も長い間苦しんできたんだけどね。
でも自分を認めてそう思うことができればステージに堂々と立つことができる。

演奏のことを書いてはいるけれど、これはどんなことにも共通すると思う。
仕事だったり、何かしらの成果物だったり、芸術のみならず。

私は自分の音が、演奏が好きです。
そして自分の演奏に誇りを持っています。

あなたもぜひ自分の音を、演奏を好きでいてください。
絶対に誰にも奪うことのできない宝物なのだから。




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