BFC懇親会後日談

 BFCの懇親会があったので東京に行ってきた。行きはうっかりさんの車に乗せてもらい宮月さんと移動した。巨大建造物に対するロマンを共有できるメンツでよかった。愛知の工場地帯にテンションが上がり、よさげな石の落ちている河原にテンションがあがり、富士山を見てはしゃぎ、東京に入るころにはすっかり疲れ果てていた。
 かねてからほしかった宮月さんの名刺しかも生きたバルブが描かれているものをゲットしたので手帳に橋本さんと買い物した鳥のクリップで飛んでいかないようにしっかり留めてある。手帳を見ると嬉しくなるのでいい。会場ではほかにもうっかりさんや小竹田夏さん、樋口めぐむさんにお名刺をいただいた。嬉しかった。瀬戸さんにいただいた名刺にはわたしが祖母の家にあった女性セブンの挿絵を見た瞬間からずっとファンであった女性漫画家さんの漫画本をデザインした旨が記されており、おお、神か?っとなった。瀬戸さんがお召しになっていたプリントシャツが美しかった。むかしレディガガがMettGalaで着ていた絵画プリントドレスに感心した覚えがあるのだが、おそらく写真を衣服に印刷する技術がよくなったのであろう。わしも美術館土産のゴッホのひまわりが印刷された眼鏡拭きを使っている。西崎さんがデザイナーって感じだね、と瀬戸さんのシャツにコメントしていた。

 打ち上げの前に千疋屋で茶をしばいた。茶をしばくというのは昔の関西人が日常的に使っていたという伝説のスラングで、わたしは実際に使ったことはないのだが、夫に聞くと大阪人はかつてKFCをくらうことを「鶏しばく」と言っていたそうである。ほんまかどうかは知らん。わたしにとってはしばくというのは痛めつけるくらいの意味で、しばくぞわれ、といえば女性が男性に求婚するときのワードなので、でもこれは嘘だから信用しないでね。

 あこがれの人と千疋屋でお茶をしてしまった。関西に住んでいるとらいよんチャンネルとかABC放送とかがローカル番組を放映しており、その中で読売系列だけは真昼間に東京の情報を流してて、わたくしの数少ない東の土地の情報源であるヒルナンデスが季節ごとに取り上げている千疋屋のぱふぇーをいただいてしまった。テレビで見たマスクメロンのマスクケースも持ち帰って子どもに見せた。ちょっと怒っていた。今度は一緒に行こうねと言ったら強くうなづいていた。ひとりで旨いものを食っていると子どもにもわけてやりたかったな、とちょっと思う。パフェ食ってるときはそんなこと微塵も思えなかったが。二千円して高いので、子供ときたら倍の料金を支払わねばならぬな、と考えていた。

 テレビの中の世界が目の前にあって、Twitterで見ている人が目の前におり、なんだかふわふわしていたがそれは寝不足のせいなのかもしれなかった。風呂さんと「不安だね、、、」と四時くらいまでDMしていた気がする。文字で知っている人と顔を合わすのは緊張する。きさめさんと会ったときもなんか全然おもろくなくてごめんね、Twitter芸人だから実物はそんなにおもろくないんです……。うろこさんから風呂さんの小説の載っている破滅派同人誌を買った。きさめさんのところに泊めてもらったが本棚が読みたい本であふれており「ほとんど記憶のない女」が最高だった。買おうと思った。前にどこかで言った気がするが私のよさの原点は北原白秋が訳したマザーグースのひねくれ男なのだった。ひねくれネズミを捕まえたひねくれ猫を手に入れたひねくれ男は、ひねくれかきねのきねのそばのひねくれあばらやにみんなでそろって住んだのだった。なんていうハッピーエンド。ほとんど記憶のない女にはマザーグース的不条理さと不気味さとさみしさがあり、よかった。
 うっかりさんの車を降りた後千早とわちゃんに迎えにきてもらったのだが、いろいろ親切にしてもらい助かった。やさしい。きさめさん家に泊めてもらう、というとみんな「修学旅行みたいですね!」とコメントしてくれて、そうなの。修学旅行だったの。みんなでマルカフェに向かった。案の定迷った。生まれも育ちも東京の人でも迷う、ちょっとほっとした。生きる勇気がわいた。

 実は懇親会前日に黄間さんと美術館で待ち合わせした後茶をしばいていて、とても楽しかったのだった。道に迷って遅刻しまくり、もちろん橋本さんとの待ち合わせにも遅れてしまい申し訳なかったのだが東京の電車はわかりにくいよね、はじめてだと迷うよね、ってなもんでみんな優しかった。わたくしはそそっかしいの化身なため、焦って反対の電車に乗ったりしていた。

 橋本さんには本をおすすめしてもらい、帰ってから即図書館で借りて読んだ。瀬戸夏子の評論が好きだ、BFCにも瀬戸夏子が出て短歌を評してくれたら嬉しい、みたいな話をしたら、緊急事態下の物語という河出から出ているアンソロジーに瀬戸夏子が書いているSFが書き下ろし収録されていると教えていただいた。テロの話だった。うわー!よかった。実は私が文学界新人賞にぶち込んだ小説もデジタルタトゥーや女の相貌の話で透明な悪意についての話でもあったので似たことを考えている人がいる、と思って嬉しかった。凶暴な女の話はとてもいい。webメディアで女性作家が女のシリアルキラー小説を連載していて、一話だけ読んで続きを見失った気がするんだけど、あれは誰の作品だっただろう。女が向けられる害意に比例して女が外側に強大な敵意や害意を向ける話があったらいいのにとずっと思っていた。狂う女の表象は山ほどあるが、正気のままで、壊し続ける女の話があればいい。でも人間は恐怖に慣れてしまうので、変異し続けなければいけない。瀬戸夏子の話も最後はそういう感じだった。わー!圧倒的武力と暴力を行使する女の話が読みたい。書くしかないのか……。

 BFC懇親会ではコマツさんとお話しできて嬉しかった。文字と実物のテンションのギャップが自分と似ていると思った。樋口芽ぐむさんとはコロナのときに会いたいねと言っていたけど夫にキレられて行けなかった経緯があって懇親会でお会いできて嬉しかった。直前にピンクソルトの瓶を割ってショックというツイートをしていたのだけど、樋口さんが新しいピンクソルトをプレゼントしてくださった。ありがたく使わせていただいている。助かる。

 首都大学さんと鮭さん、吉田さんは作品のイメージそのままの人だった。作品世界からそのまま作者が抜け出してきたかのような様子がドラマチックですらあった。かねてからささみさんの短歌のファンだったのだが、実際にあの世界観そのままのささみさんがいてなんてことだ、、、と思った。西崎さん主導でゲームが始まったのだがそのころトイレに行きたさが生じており、ゲームはトイレのドアの前にふたりがあつまり西崎さんの出すお題に即興で応えてどっちが勝ちかというのを挙手ではかり、つまりトイレに行きづらい状況だった。そのころの私の頭の中は八割くらい「あとどれくらい我慢できるか?」ということで占められていた。隣に座っていた詩人の方と「トイレどこですかね?」「あのドアですね」「行きづらいですね……」と会話に付き合ってもらい気を紛らわしていたが紛れなくなったので立ち歩いたりしていた。pixivで読んだトイレの漫画を思い出してしんみりした。

 ところで緊張から前日夜、朝、昼と飯を食っていなかったのだが、普段飲んでいる薬と空腹&緊張という組み合わせがあまりよくなかったらしく、最終的に具合がめっちゃ悪くなり死んでいた。足元がふらついていたので人に送ってもらった。人ごみ無理なのにテンション上がる系の人間ズだった。風呂さんもたぶんそう。いのりさんに水をめぐんでもらい、水うま……と思った。うまかった。

 帰りは新幹線だったのだが、はじめて一人で新幹線に乗った。修学旅行以来だった。東京駅でおされハンカチを買って帰った。おされ。1800円する。1500円のも買った。一枚でよくないか? 二枚買う必要はあるのか? とめちゃくちゃ悩んだ末に「いやでもせっかく東京まできたしな~」というマジックワードで自らの理性を説き伏せレジに進んだ。罪悪感で足がふらふらした。散財のショックというわけでもないのだけど、家に帰って二日くらい寝込んだ。

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