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<No.25>SDGsの各ゴール解説⑮ 目標15:陸の豊かさも守ろう

 SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)の各ゴール(目標)の解説とアクションのヒントを国連開発計画(UNDP)、国連広報センター(UNIC)の資料を基に行います。SDGsのゴールを達成するためにも、SDGsの各ゴール詳細を知っておくことはアクションに繋げる上で重要になります。ぜひ最後までお付き合いください。
 今回は「目標15:陸の豊かさも守ろう」です。

UNDPでは「目標15:陸の豊かさも守ろう」を次の通り解説しています。(灰色部分は引用。)

陸上生態系の保護、回復および持続可能な利用の推進、森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る

人間の生命と生活は海洋だけでなく、陸地にも支えられています。植物は人間の食料の80%を提供しています、また、私たちは重要な経済資源、そして開発の手段として、農業に依存しています。森林は地表の30%を占め、数百万の生物種にとって必須の生息地や、きれいな空気と水の重要な供給源を提供するだけでなく、気候変動への対処においても不可欠な役割を担っています。

現在、地球はかつてない土地の劣化に直面し、耕作地の損失は歴史上のペースと比べて30倍から35倍で進んでいます。干ばつや砂漠化も年々、深刻化し、全世界で1200万ヘクタールの農地が消失し、貧しいコミュニティに影響が及んでいます。確認されている8300の動物種のうち、8%は絶滅し、22%が絶滅の危険にさらされています。

持続可能な開発目標(SDGs)は、森林や湿地、乾燥地、産地などの陸上生態系を保全し、2020年までにその利用回復を狙いとしています。森林の持続可能な管理を推進し、砂漠化を食い止めることも、気候変動の影響の緩和に欠かせません。地球上の共通遺産の一部である自然の生息地と生物多様性の損失を軽減するためには、今すぐ対策を講じなければなりません。

森林その他生態系の保全は、持続可能な開発のための2030アジェンダを構成する17のグローバル目標の一つです。複数の目標を同時に達成するためには、包括的なアプローチが必要不可欠です。

http://www.jp.undp.org/content/tokyo/ja/home/sdg/post-2015-development-agenda/goal-15.html

また、UNICでは、このゴールがなぜ必要なのか、という視点で以下のように伝えています。

私たち自身の存在によって、私たちが属する生態系が変わってしまうことは避けられませんが、私たちの選択によって、多様性を支えることも、その価値をおとしめることも可能です。
私たちが生物多様性維持のためにできることとしては、リサイクル、持続可能な供給源を利用した地産地消の食生活、必要なものに限った消費、効率性の高い空調システムを通じたエネルギー使用の抑制などが挙げられます。私たちは、野生生物も尊重し、その生態を混乱させないよう、責任ある形で倫理的に運営されたエコツーリズムにのみ参加しなければなりません。

 詳細は以下のURL参照
http://www.unic.or.jp/files/b5ca64ea888d51073c406b3ebe4e8512.pdf

具体的なアクションを考えるためには、このゴールのターゲットについても知っておく必要があります。ゴール15に連なるターゲットは以下の12です。

• 15.1 2020年までに、国際協定の下での義務に則って、森林、湿地、山地及び乾燥地をはじめとする陸域生態系と内陸淡水生態系及びそれらのサービスの保全、回復及び持続可能な利用を確保する。
• 15.2 2020年までに、あらゆる種類の森林の持続可能な経営の実施を促進し、森林減少を阻止し、劣化した森林を回復し、世界全体で新規植林及び再植林を大幅に増加させる。
• 15.3 2030年までに、砂漠化に対処し、砂漠化、干ばつ及び洪水の影響を受けた土地などの劣化した土地と土壌を回復し、土地劣化に荷担しない世界の達成に尽力する。
• 15.4 2030年までに持続可能な開発に不可欠な便益をもたらす山地生態系の能力を強化するため、生物多様性を含む山地生態系の保全を確実に行う。
• 15.5 自然生息地の劣化を抑制し、生物多様性の損失を阻止し、2020年までに絶滅危惧種を保護し、また絶滅防止するための緊急かつ意味のある対策を講じる。
• 15.6 国際合意に基づき、遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分を推進するとともに、遺伝資源への適切なアクセスを推進する。
• 15.7 保護の対象となっている動植物種の密猟及び違法取引を撲滅するための緊急対策を講じるとともに、違法な野生生物製品の需要と供給の両面に対処する。
• 15.8 2020年までに、外来種の侵入を防止するとともに、これらの種による陸域・海洋生態系への影響を大幅に減少させるための対策を導入し、さらに優先種の駆除または根絶を行う。
• 15.9 2020年までに、生態系と生物多様性の価値を、国や地方の計画策定、開発プロセス及び貧困削減のための戦略及び会計に組み込む。
• 15.a 生物多様性と生態系の保全と持続的な利用のために、あらゆる資金源からの資金の 動員及び大幅な増額を行う。
• 15.b 保全や再植林を含む持続可能な森林経営を推進するため、あらゆるレベルのあらゆる供給源から、持続可能な森林経営のための資金の調達と開発途上国への十分なインセンティブ付与のための相当量の資源を動員する。
• 15.c 持続的な生計機会を追求するために地域コミュニティの能力向上を図る等、保護種の密猟及び違法な取引に対処するための努力に対する世界的な支援を強化する。

 例えば、ターゲット15.2「2020年までに、あらゆる種類の森林の持続可能な経営の実施を促進し、森林減少を阻止し、劣化した森林を回復し、世界全体で新規植林及び再植林を大幅に増加させる。」で企業や個人のアクションを考えた場合、オフィスや日常生活で使用する紙製品をFSC認証製品で調達する方法などが考えられます。

FSCとは「森を守るマーク」です。店頭やインターネット通販等で手に入る、多種多様な紙製品の中には、紙の環境配慮に関わる情報にもいろいろなものがあり、なかには「植林木を利用しています」と書いてあるものもあります。しかし「植林木」とあれば、環境に優しいというわけではありません。そうしたものの中には、自然林を破壊してつくられた人工の森(植林地)も含まれているからです。完成した紙製品を見てみてもそれを見分けることは難しく、消費者が環境や社会に配慮した製品が欲しいと思っても知るすべがありません。

そこで、それを可能にする証となるものとしてFSCマークが登場しました。
FSC(Forest Stewardship Council(R):森林管理協議会)は、木材を生産する森林と、その森林から切り出された木材の流通や加工の過程を「認証」する制度を管理する国際機関です。
消費者はFSCマークが入った製品を選択することで、世界の森林保全を間接的に応援できる仕組みになっています。
 
このような製品を使用することにより、間接的にSDGsゴール15に貢献することができます。

FSCについて
https://jp.fsc.org/jp-jp/fscnew

FSC認証製品の調達事例:キリンHD、FSC認証紙への切り替え加速 年内にも前倒し達成、環境に優しい企業アピール-sankei biz 2018.6.25
https://www.sankeibiz.jp/business/news/180625/bsd1806250500002-n1.htm


最後に、2018年12月24日時点の国連本部のウェブページ(About the Sustainable Development Goals)に掲載されている17の目標ごとの「事実と数字(Facts and Figures)」のうち、ゴール15に関するものを挙げます。一見、自分自身に直接関係ないようなことであっても、新たな気づきやビジネスの機会になることがありますのでぜひ押さえておいていただきたい数値です。

森林
• およそ16億人が、森林に依存して生計を立てています。その中には、約7,000万人の先住民が含まれます。
• 森林には陸生種の動植物と昆虫の80%以上が生息しています。
• 2010年から2015年にかけ、世界では330万ヘクタールの森林が失われました。農村部の貧しい女性は、共同利用資源に依存しているため、森林破壊による特に大きな影響を受けています。
砂漠化
• 26億人が農業に直接依存していますが、農地の52%は土壌荒廃による中程度の、または深刻な影響を受けています。
• 耕地の喪失は、かつてのペースの30倍から35倍の速さで進んでいるものと見られます。
• 毎年、干ばつと砂漠化によって1,200万ヘクタール(1分間に23ヘクタール)の土地が失われています。これは1年間で2,000万トンの穀物が栽培できる面積に当たります。
• 全世界で貧困層の74%が、土地劣化の直接的影響を受けています。
生物多様性
• 野生生物の密猟と密売は、依然として保全に向けた取り組みを損なっており、報告されている7,000種近い動植物の不正取引には、120カ国が関与しています。
• 確認されている8,300の動物種のうち、8%は絶滅し、22%が絶滅の危機にさらされています。
• 8万を超える樹種のうち、潜在的な利用可能性が検討されているものは1%にも達していません。
• 魚は約30億人に動物性タンパク質の20%を提供しています。わずか10の魚種で海洋捕獲漁業の漁獲高の約30%を占める一方、養殖漁業生産の約50%も10種で占められています。
• 人間が摂取する食料の80%以上は植物に由来します。コメ、トウモロコシ、小麦の3つの穀物だけで、エネルギー摂取量の60%を占めています。
• 開発途上国では、農村部の住民の80%にも上る人々が、基本医療を伝統的な植物ベースの薬に依存しています。
• 微生物と無脊椎動物は、生態系サービスにおいて鍵を握る存在ですが、その貢献度はあまり知られておらず、認識されることもほとんどありません。

 事業規模や企業か個人かによってできることも異なりますが、SDGsの各ゴールやターゲット、現状の数値を知って、そこから具体的なアクションを考えることがSDGsのゴールを達成する上で重要な活動の一つになります。

 みなさんもぜひ自分のできるアクションを考えてみましょう。

資料:
UNDP SDGs
http://www.jp.undp.org/content/tokyo/ja/home/sustainable-development-goals.html
国連広報センター SDGs を17の目標ごとにわかりやすく紹介したチラシ、SDGs シリーズ「なぜ大切か」
http://www.unic.or.jp/news_press/info/24453/
国連広報センター 持続可能な開発目標(SDGs)ー 事実と数字
http://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/31591/


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