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<No.13>SDGsの各ゴール解説③   目標3:すべての人に健康と福祉を

SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)の各ゴール(目標)の解説とアクションのヒントを国連開発計画(UNDP)、国連広報センター(UNIC)の資料を基に行います。SDGsのゴールを達成するためにも、SDGsの各ゴール詳細を知っておくことはアクションに繋げる上で重要になります。ぜひ最後までお付き合いください。
 今回は「目標3:すべての人に健康と福祉を」です。

UNDPでは「目標3:すべての人に健康と福祉を」を次の通り解説しています。(灰色部分は引用。)

あらゆる年齢のすべての人の健康的な生活を確保し、福祉を推進する

ミレニアム開発目標(MDGs)の策定以来、幼児死亡率の引き下げ、妊産婦の健康改善、HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病対策の分野では、歴史的な成果が得られました。1990年以来、予防可能な病気による子どもの死者は50%以上減少しています。妊産婦の死者も全世界で45%減少しました。HIV/エイズの新規感染者数も2000年から2013年にかけて30%減少したほか、620万人以上がマラリアから救われています。

この素晴らしい進捗にもかかわらず、5歳の誕生日を迎えられずに命を落とす子どもは依然として600万人を超えています。毎日、はしかや結核など、予防可能な病気で1万6000人の子どもが命を失っています。妊娠と出産によって生じる合併症で死亡する女性の数は1日数百人を数え、開発途上地域の農村部では、医療専門家の付き添いのある出産件数が全体のわずか56%に留まっています。依然としてHIVが猛威を振るうサハラ以南アフリカでは、エイズが思春期の若者世代で最大の死因となっています。

これらの死は、予防と治療、教育、予防接種キャンペーン、リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)関連のケアやサービスを受けることによって回避することができます。持続可能な開発目標(SDGs)は、エイズ、結核、マラリアその他の感染症の蔓延を2030年までに食い止めるという、大きな誓約をしています。その狙いは、医療を完全に普及させ、すべての人が安全で効果的な医薬品とワクチンを利用できるようにすることです。ワクチンに関する研究開発への支援は、手ごろな価格の医薬品の提供とともに、目標達成のための不可欠な要素となっています。

健康と福祉の推進は、持続可能な開発のための2030アジェンダを構成する17のグローバル目標の一つです。複数の目標を同時に達成するためには、包括的なアプローチが必要不可欠です。

http://www.jp.undp.org/content/tokyo/ja/home/sdg/post-2015-development-agenda/goal-3.html

また、UNICでは、このゴールがなぜ必要なのか、このゴールに対して何が出来るかという視点で以下のように伝えています。(灰色部分は引用。)

まず、十分な情報に基づく選択を行い、安全な性行為を実践し、子どもに予防接種を施すことにより、自分自身と周囲の人々の健康を増進し、守ることができます。健康と健全なライフスタイル、さらには人々が質の高い医療サービスを受ける権利の重要性について、地域で啓発活動を行うこともできます。
学校やクラブ、チーム、組織で行動を起こし、とりわけ女性や子どもを含む社会的に最も脆弱な立場にある人々をはじめ、すべての人の健康増進に努めてください。
あなたの政府や地域のリーダー、その他の政策決定者に対して、人々の健康と医療へのアクセス改善の約束を果たす責任を問うこともできるでしょう。

詳細は以下のURL参照
http://www.unic.or.jp/files/71b8a9f9baa8c4ab05010d22275894bd.pdf  

具体的なアクションを考えるためには、このゴールのターゲットについても知っておく必要があります。ゴール3に連なるターゲットは以下の13です。

• 3.1 2030年までに、世界の妊産婦の死亡率を出生10万人当たり70人未満に削減する。
• 3.2 すべての国が新生児死亡率を少なくとも出生1,000件中12件以下まで減らし、5歳以下死亡率を少なくとも出生1,000件中25件以下まで減らすことを目指し、2030年までに、新生児及び5歳未満児の予防可能な死亡を根絶する。
• 3.3 2030年までに、エイズ、結核、マラリア及び顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶するとともに肝炎、水系感染症及びその他の感染症に対処する。
• 3.4 2030年までに、非感染性疾患による若年死亡率を、予防や治療を通じて3分の1減少させ、精神保健及び福祉を促進する。
• 3.5 薬物乱用やアルコールの有害な摂取を含む、物質乱用の防止・治療を強化する。
• 3.6 2020年までに、世界の道路交通事故による死傷者を半減させる。
• 3.7 2030年までに、家族計画、情報・教育及び性と生殖に関する健康の国家戦略・計画への組み入れを含む、性と生殖に関する保健サービスをすべての人々が利用できるようにする。
• 3.8 すべての人々に対する財政リスクからの保護、質の高い基礎的な保健サービスへのアクセス及び安全で効果的かつ質が高く安価な必須医薬品とワクチンへのアクセスを含む、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成する。
• 3.9 2030年までに、有害化学物質、ならびに大気、水質及び土壌の汚染による死亡及び疾病の件数を大幅に減少させる。
• 3.a すべての国々において、たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約の実施を適宜強化する。
• 3.b 主に開発途上国に影響を及ぼす感染性及び非感染性疾患のワクチン及び医薬品の研究開発を支援する。また、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS 協定) 及び公衆の健康に関するドーハ宣言に従い、安価な必須医薬品及びワクチンへのアク セスを提供する。同宣言は公衆衛生保護及び、特にすべての人々への医薬品のアクセス提供にかかわる「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS 協定)」の柔軟性に関する規定を最大限に行使する開発途上国の権利を確約したものである。
• 3.c 開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国において保健財政及び保健人材の採用、能力開発・訓練及び定着を大幅に拡大させる。
• 3.d すべての国々、特に開発途上国の国家・世界規模な健康危険因子の早期警告、危険因子緩和及び危険因子管理のための能力を強化する。

 例えば、ターゲット3.6「2020年までに、世界の道路交通事故による死傷者を半減させる。」の具体的なアクションを企業の視点で考えてみた場合、従業員に対し、交通安全に関する訓練や情報(例:運転に関する法律や自転車や歩行者の安全に関する教育)を提供する。製品の運送、サービス提供または従業員の移動のように、道路の利用が事業やサプライチェーンの一部である場合、適切な内部規則を設定するといったことが考えられます。これらには、運転手が運転に適した健康状態を有していること、法的に必要な訓練を受けて資格を保持していること、定期的な訓練とパフォーマンスのチェックを受けていること等が含まれます。

 大阪府高槻市にある宮田運輸の事例として、「こどもミュージアムトラック」という背面が子どもの絵でラッピングされているトラックで事業を行っている運送会社があります。同社がラッピングを始めたきっかけは、現職の宮田社長が就任された直後の死亡事故でした。宮田運輸では従来からさまざまな安全対策を講じていました。毎日の点呼や研修、組織づくりに始まり、デジタルタコグラフやバックアイカメラ、ドライブレコーダー、車内をうつすドライブレコーダー等のIT機器も駆使しながら対策に徹してきたものの、やはり管理するには限界がありました。今後も安全対策を確実に実施していくものの、最終的には「ドライバーの心にゆとりや優しい気持ちがなければ事故は無くならない」と思い至ったそうです。そこで、試行錯誤の結果、「トラックに子どもの絵をラッピングして社会全体を笑顔にしよう」と始めたのが「こどもミュージアムトラック」に発展しました。こどもミュージアムトラックはドライバーはもちろん見る人の心を和ませ、事故の抑止力にも貢献しています。実際、ラッピングしたトラックが事故を起こした例は一度もないということです。
 このように、杓子定規な研修だけではない工夫として、ドライバーの心にゆとりをもたらし、かつ運送トラックのイメージを良くして、事故を防止し、社会にとっても良い活動に繋げたという例があります。

株式会社宮田運輸
http://www.miyata-unyu.co.jp/blog/ 

最後に、2018年12月24日時点の国連本部のウェブページ(About the Sustainable Development Goals)に掲載されている17の目標ごとの「事実と数字(Facts and Figures)」のうち、ゴール3に関するものを挙げます。

小児保健
• 1990年以来、1日当たりの子どもの死者は17,000人減少してはいるものの、毎年500万人を超える子どもが、5歳の誕生日を迎える前に命を落としています。
• 2000年以来、はしかの予防接種でほぼ1,560万人の命が救われました。
• 世界的な進歩にもかかわらず、サハラ以南アフリカと南アジアが子どもの死者数に占める割合は増大しています。5歳未満で死亡する子どもの5人に4人は、これら2地域で暮らしています。
• 貧困な家庭で生まれた子どもが5歳未満で死亡する確率は、比較的裕福な家庭で生まれた子どもの約2倍に上ります。
• 小学校しか卒業していない母親を含め、教育を受けた母親の子どもは、まったく教育を受けていない母親の子どもよりも生存する確率が高くなっています。

妊産婦保健
• 妊産婦の死者数は2000年以来、37%減少しています。
• 東アジア、北アフリカ、南アジアでは、妊産婦の死者数がほぼ3分の2減少しました。しかし、開発途上地域の妊産婦死亡率(出生数に対する妊産婦死者数の比率)は、依然として先進地域の14倍に上ります。
• 産前ケアを受ける女性の数が増えています。開発途上地域では、産前ケア受診率が1990年の65%から2012年の83%へと上昇しました。
• 開発途上地域では、推奨される医療を受けられる女性が全体の半分にすぎません。
• ほとんどの開発途上地域では、十代の出産件数が減少しているものの、改善のペースは鈍ってきています。2000年代には、1990年代に見られたような避妊具使用の急速な拡大が見られていません。
• より多くの女性が徐々に、家族計画の必要性を満たせるようになってきましたが、その需要は急激に拡大しています。
HIV/エイズ、マラリアその他の疾病
• 2017年の時点で、全世界のHIV感染者は3,690万人に上ります。
• 2017年の時点で、2,170万人が抗レトロウイルス療法を受けています。
• 2017年には、新たに180万人がHIVに感染しました。
• 2017年には、エイズ関連の疾病で94万人が死亡しています。
• エイズの蔓延が始まって以来、7,730万人がHIVに感染しています。
• エイズの蔓延が始まって以来、エイズ関連の疾病で3,540万人が死亡しています。
• 結核は依然として、HIV感染者の最も大きな死因となっており、エイズ関連の死者の約3人の1人を占めています。
• 全世界で、思春期の女児と若い女性はジェンダーに基づく差別や排除、差別、暴力に直面しているため、HIV感染のリスクが高まっています。
• HIVは全世界の再生産年齢の女性にとって、主な死因となっています。
• エイズはアフリカで、思春期の子ども(10~19歳)の主な死因となっているほか、全世界で見ても、思春期の子どもの2番目に大きな死因となっています。
• 2000年から2015年にかけて、サハラ以南アフリカの5歳未満児をはじめとする620万人以上が、マラリアによる死を免れました。全世界のマラリア罹患率は37%、死亡率は58%、それぞれ低下したと見られています。

 事業規模や企業か個人かによってできることも異なりますが、SDGsの各ゴールやターゲット、現状の数値を知って、そこから具体的なアクションを考えることがSDGsのゴールを達成する上で重要な活動の一つになります。

 みなさんもぜひ自分のできるアクションを考えてみましょう。

資料:
UNDP SDGs
http://www.jp.undp.org/content/tokyo/ja/home/sustainable-development-goals.html
国連広報センター SDGs を17の目標ごとにわかりやすく紹介したチラシ、SDGs シリーズ「なぜ大切か」
http://www.unic.or.jp/news_press/info/24453/
国連広報センター 持続可能な開発目標(SDGs)ー 事実と数字
http://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/31591/

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