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タイムトラベラー セルゲイ

タイムトラベラーの話はいまも絶えることがない。
彼らは本当に時を超えてきたのだろうか。
今回は2006年に現れたキエフのトラベラーを考察してみる。

キエフに現れた謎の男性

2006年4月23日、キエフにある男が現れた。
古臭いファッションに身を包み、アンティークなカメラを手にしている。
不審に思った警官から身分証明書を出すように言われ、彼が提示した証明書は、ソ連からウクライナが独立する前に発行されたものだった。

名前は、セルゲイ・ポノマレンコ Sergei Ponomarenko
誕生年は1932年。
身分証明書の発行は1956年1月20日となっているようだ。
ウクライナ語とロシア語の両方の言語で書かれている。

この身分証明書が正しければ2006年当時は74歳のはずである。
だが外見はどう見ても20代に見える。
訝しんだ警官は、同日精神科医のパヴェル・クトリコフ氏に診察させた。
2006年なので、もちろん当時の映像が残っている。
そして診察を受けた数日後、彼は病院から忽然と姿を消してしまったのだ。
↓ 当時の映像はこちらにアップされている。


それではここから、彼について検証していく。

現像できたフィルム

彼は1958年のある日、休暇で写真撮影をしようと思い、外に出かけた。
そこで彼は巨大な鐘状の不思議な乗り物を目撃し、それを撮影しようと追いかけた。そして写真に収めた。
そう証言するので、彼が持っているカメラのフィルムを現像してみようということになった。写真を持っていたわけではなく、このタイミングでフィルムから現像されたのである。
カメラもフィルムも非常にアンティークなものだったが、新品同様に見えた。そのフィルムは1970年代には製造が停止されており、2-3年の間しか使用することができない。ただし冷凍保存では20年程度と言われているので、完璧な管理をしていればあるいは2006年に利用可能であるかもしれない。

フィルムに写っていたもの

そのフィルムにはさまざまなものが写っていた。

セルゲイの写真
写真の中のセルゲイは全く同じ服装をしていた。
同一本人だとわかるものだった。
が…これは主観だがポージングや構図に違和感を感じる。
タイムトラベル当日に撮影されたものであれば、誰が撮影したのだろうか。

街の風景写真
こちらも2006年とは異なる数十年前の写真だ。
が、過去に同じ写真があれば捏造は可能だ。時間があれば他に同じ風景の写真がないか調べてしまうかもしれない。

恋人バレンティーナ・クリク
セルゲイと共に若い女性が写っていた。
彼女の名前はバレンティーナ・クリク。セルゲイの恋人だ。
幸運にも2006年当時70代になるこの女性は生きていた。
セルゲイが姿を消したあと、警官が彼女の家を訪ねると、フォトアルバムに同じ写真があったということだ。
セルゲイは2006年から戻り、未来がどんなものであるのかを語ったらしい。
同じ写真を持っているということは、医師は写真をコピーして彼自身に渡したのだろうか。この辺りも違和感が残る。
そしてその後1960年代にまたセルゲイは消えてしまったそうだ。
インタビュー時、とても綺麗にメイクをしているのが気になった。

UFO
驚くべきことに彼の証言通り、はっきりと釣鐘のようなUFOが写真に収まっていた。これはフィルムから直接現像されたという。
かなり物体の陰影が強いのだが、周りの風景と比べても濃すぎる気がする。

停止する時計

精神科医の元に彼が訪れたときまで正常に動いていた壁掛け時計が、彼が診察室に入ってから停止した。同時に医師が身につけてた腕時計も同じタイミングで歩みを止めてしまった。
全く不可解だが、そうなったことが記録されている。
奇妙に思うのは、時計の位置。わざわざ時計の針までわかりやすい位置に設置されている。そして部屋に入った瞬間から彼は時計を意識していたということだ。すでにそのような事象を過去に経験していたからだろうか。
芝居めいた匂いをうっすら感じてしまう。

1960年代のセルゲイ自身の証言

過去のラジオ放送のアーカイブから、驚くべきものが見つかった。
2006年の未来から戻ったセルゲイ自身の証言の音声が残っていたのである。
それは1960年代のアーカイブだった。
未来の技術、電子レンジや無線電話、人工心臓について語ったようだ。
しかし彼がいたのは正味2,3日程度である。
携帯電話や電子レンジについては目撃したと想像できるが、人工心臓についてはどのようにして知ったのか。
実は病院にいるとき、監視ビデオで彼が熱心に人工心臓について書かれた雑誌を読んでいる様子が撮影されていたのだ。
放送当時これはどのくらい話題になったのだろうか。

2050年の写真

この話、実はこれで終わりではない。
バレンティーナ宛に1970年頃に写真が送られてきたそうだ。
そしてそれは2050年に行って撮影したものだと書かれており、その写真を最後に連絡が途切れたらしい。
写真はカラー写真になっていた。ということは、カラー撮影ができるカメラを持って行って2050年に移動し、戻ってきて現像してそれをわざわざバレンティーナに送ったのだろうか。
川沿いに高層ビルが立ち並ぶ風景は、2022年現在もない光景だ。
だが、残念ながらこれは完璧にPhotoshopのコピーペーストで出来上がったビル群だということは一目瞭然だ。


そう、実は..この精神科医の診療シーンも監視カメラも、全てfakeである。
こちらは2012年に放送されたサイエンスフィクションドラマの1話、タイトルはその名も「タイムトラベラー」だった。

監視カメラ画像にある日付は、FRI 26.04.2006 となっている。
2006年4月26日は、金曜ではなく水曜日だ。
微妙なfakeを入れることでこれが創作である跡をわざと残しているのかもしれない。ここまで資料が残っている事件があればそれは1大ニュースだろう。現実に2006年にそのようなニュースは世界のどこにも流れてはいない。

フィクションが切り取られ一人歩きをし、長い時を経るうちに人はやがて「現実」がわからなくなってくる。検閲されることで外される情報もあるなら尚更だ。
私たちはもうすでにfake worldに片足を突っ込んでいるのかもしれない。



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