ゲームプレイ週記#061「この世の果てで恋を唄う少女YU-NO」

PC-98の名作アドベンチャー

YU-NO(ユーノ)とは、1996年にPC-98シリーズ用としてエルフより発売されたSFアドベンチャーゲームである。古の作品でありながら、今なお不朽の名作として支持されている。現行ハードでもリメイク版は出ており、僕もPS4版を途中までプレイしていたことはあるのだが、「やっぱりオリジナルをやろう」と思い中断することにした。

僕がPC-98版にこだわった理由は2つで、1つめは性描写があること。当然家庭用ゲーム機へのリメイクではカットされている要素だが、本作ではそれがオマケ要素に留まっているわけではない。単にユーザーを喜ばせようと盛り込まれたシーンではなく、主人公とキャラクターの繋がりの強さを表す描写としても一役買っているために重要なのだ。

2つめは僕がドットグラフィックとFM音源が好きであること。単純に僕の嗜好がそういう傾向にあるというだけだ。4K解像度を活かしたビジュアルが動きオーケストラサウンドの流れるリッチなゲームも悪くはないが、正直それよりもこの時代のゲームに惹かれる。

PC-98用を中心としたレトロゲームにはこれから手を出していきたいと思っているが、動かすための実機が今となっては総じて寿命を迎えているようなパソコンである。整備された品はなかなかに高価で、周辺機器と共に購入を検討している途中だ。所持ゲームソフトが増えるまではエミュレーションに甘んじるとしよう。

Windowsで動かしたい人は、インターネットでFreeDOSインストール済みのハードディスクイメージを拾ってそこに購入したゲームのデータを入れ、そのディスクイメージをPC-98エミュレータに読ませる方法が手っ取り早いだろう。

可視化されたループ世界

本作の物語は「もしも時間を巻き戻すことができたなら」というSFではお馴染みのテーマを、科学的な概念と言葉遊びを駆使することで大変魅力的に膨らませたものだ。この世界が純粋に物理的な運動によって構成されているという解釈が現代人にとっては一般的だろうが、その世界の歴史というものが因果の連鎖によって紡がれているといった観点を与えることで時間遡行を成り立たせている。

設定を自分の言葉で伝えることが難しいので、作中冒頭に登場するキーアイテム「R(リフレクター)デバイス」の論文めいた説明書テキストを読んで面白いと思えるかどうかでプレイするかどうかを決めてもいいのではないかなと思う。

何度も時間を遡るループものとして特徴的なのは、飛び先となる「宝玉」を時間軸上のポイントに置いたり回収したりすることによって能動的にアイテムを集めながら進行していく点だろうか。Rデバイスを用いることによって任意のタイミングで宝玉を置いた地点にワープすることができる。

Rデバイスを開くと、通ってきたルートが樹形図のようにマッピングされていることが確認できる。このシステムは「A.D.M.S (アダムス): Auto Diverge Mapping System」と名付けられ、これを駆使した謎解きがストーリーの根幹を成す要素であると同時にゲームシステムそのものでもある。分岐のタイミングや未入手の宝玉の位置はデバイスが教えてくれ、プレイヤーの探索の助けとなる。

1周目は知らない情報だらけなので気ままに行動し、一つのエンドに辿り着いたことで最初の地点に舞い戻った。ここからは分岐前に宝玉を置き、マップで現在地を見ながらどのタイミングで枝分かれが起こるのかを確かめていくことになる。ルートに深入りするだけ多くの宝玉が必要だ。

ポイント&クリックシステム

本編が始まるまでのプロローグ部分はコマンド式で進行していくが、それ以降は背景をマウスポインタで「調べる」ことによって情報を集めていく。全てのピクセルがなんらかのオブジェクトに割り当てられており、調べられない点は存在しない。手探りで進めている実感を大きく味わえる反面、見落としには注意しなければならない。

そうしてただでさえ総当たり調査が難しい上に、調べてみるとメッセージが変わっていて手がかりを得られるというケースが往々にしてあるため、どこを調べれば進むのかがわからずこのまま途方に暮れるのかと心配になることもなくはない。無意味な場所移動にもほとんど制約はなくシステムだけを見るとプレイヤーが詰みかねないものになっているが、そこは主人公の心の声という誘導でカバーされており、実際詰むほどのことはない。

2周目以降は既に行った調査の一部を省略できるのもありがたい。テキストの豊富さとフラグ管理の丁寧さがどちらも高いレベルで両立されているのはすごいことだと思う。

加えて、背景のモブをクリックすると話ができ、自室のドアをクリックするとリビングに出られるなど、「話す」や「移動」まで「調べる」と同じ画面内の操作で完結しており、UIの階層を上り下りせずに済む点は素晴らしい。この移動操作については行動範囲が徒歩圏内で広くはないアドベンチャーだからこそ成り立つ仕様だろうか。時間と空間を縦横無尽に駆け回る上でストレスにならなくていい。

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