ゲームプレイ週記#228「パラノマサイト FILE23 本所七不思議」

好評低価格ADV

やけに評価の高いパラノマサイトをやってみた。初めはパノラマだと勘違いしていたのだが、パラノーマルつまり超常現象ということらしい。一応、カメラ操作がパノラマ撮影のようではある。カメラを動かせるからキャラは3Dモデルのトゥーンシェーディングかなと思って見てみたら2Dだった。視点は固定されているので、ビルボードとして常にそちらを向かせても背景との整合性は崩れない。

このゲームはそういった素材の活かし方が上手く、UI品質の妥協やノーボイスという潔さを見せつつも、ダイナミックな演出によってプアさが効果的に軽減されている。最近は数が出ていない印象がアドベンチャーゲームにはあるが、低予算ゲーム製作の成功例として本作は注目に値するだろう。定価は2000円くらいで、アクション要素は皆無なのでスマートフォン向けにもリリースされており手を出しやすい。

昭和オカルト群像劇

内容は一見して古き良きコマンドADVで、初めに操作する興家彰吾という青年が主人公を張るのかと思いきや群像劇が始まった。七不思議にまつわる呪殺能力を有するアイテムが墨田区南部の本所に出現し、それらを携えた能力者が呪殺を経て実現できる「蘇りの秘術」を懸けて争う。ただあくまでメインは推理であり、実際に交戦するシーンが多いわけではない。

逆転裁判の霊媒などよりも派手な怪奇現象が街中で巻き起こるわけだが、現代に近くもレトロではある昭和後期という時代設定が良く、現実では超自然として扱われる呪術のようなものが実在してしまったとしても溶け込みやすい世界になっている。ムーが監修して墨田区観光協会が発行したという「本所七不思議探索地図」を手に入れたので、近くに用があったら作中の舞台に立ち寄ってみたい。

重くなく良質なテキスト

ディレクターを兼ねている石山貴也によるテキストが良い。ちなみに探偵・癸生川凌介事件譚シリーズは仮面幻想殺人事件だけ既プレイだ。テーマの割には奇を衒っておらず、ありがちな軽薄なだけのキャラなどがいないので主要人物にはいずれも生きた人間として感情移入ができる。バッドエンドも読み応えがあり、ifの結末はこの物語の補完に欠かせないものとなっている。

キャラデザがすばせかの人なのは言われてみればという感じで、特に今作はアニメ風ではない絵で好みだ。黒鈴ミヲのようなキャラをデザインしてちゃんと人気を出しているのが偉い。しかし多くのキャラにおちょぼ口の表情差分が用意されているのは気になる。ミステリアスながらに意外と普通の人なマダムが好きで、唐突に変な選択肢で推理を披露させるのが楽しかった。

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