まにうける

【風雲ガチンコ文章指南録!?】『真に受ける力』21~『きしみアルティメットドライブ発動!! の巻~

林さんの真心こもったメールに返信(割愛)したあと、
いよいよラストスパートで、西山さんからメールがこなくてもw
言えるだけのことは言っておこうと、スパートをかけるきしみであった。

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2007/10/31, Wed 13:56

西山さん

ラストスパートの蛇足です(。・ω・)_

昨日、言い切れてなかった部分を
捕捉させていただきます。

1つ、視点について
2つ、要約・洗練について
3つ、豊かな表現について

まず、視点について。

昨日、一場面、一視点のルール――
その時間軸内における語り部は一人にして、
その一人だけの視点のみで語るようにする、
というのを述べましたよね。

※「三人称の小説でも基本的にそうなってるよ」
とも書きましたが、実は神の視点といって、
誰の気持ちの中にも自由に入って語る手法もあります。
ありますが、これは熟練者じゃないと、
読者を混乱させてしまう恐れのある、高等技術ですので
私はお薦めしません。

で、混乱する例文も書きました。

---
文子は驚いて、光春を見つめた。
内心震え上がっている光春の顔を見ると、
急に気持ちがなえていく気がした。

光春はふらっと崩れ落ちそうになる文子の身体を
支えて思った。なんて軽いんだろう?
文子の肩に置いた手に、光春は力をこめた。

文子は寒々とした気持ちで、光春の目を見つめた。
---

本当に混乱する文章ですねー(゜∀゜;)
おかしいのが、わかりますか?

試しに“文子”視点だけで同じ場面を
言い換えてみますね。

---
文子は驚いて、光春を見つめた。
光春はかすかに震えているようだった。
その青ざめた顔を見た瞬間、
文子は急に気持ちがなえていくのを感じた。

力が抜け、あやうくふらっと倒れそうになった時、
肩をつかまれた。光春だった。
肩に置かれた手の力は、思いのほか強いものだった。

しかし、すでに思いの糸が切れていた文子には、
寒々しい気持ちで、光春の目を
見つめかえすしかできなかった。
---

文子視点に統一して、修正したものです。
同じ場面を描いたものでも、
文子の視点・気持ちだけに集中して書いているので、
読者はつつがなく、文子視点の同調し、
混乱せずに場面を理解できると思うんですが、
どうでしょうか?

文子には、光春の絶対的な気持ちはわかりません。
なので、文子視点では、自分の見えてることや、
自分の気持ち以外は、憶測で語るしかできません。

「○○~のようだ」とか、「○○~らしい」
っていう語尾は、別に格好つけた口調にしたいから
使ってるわけじゃないんです。

西山さんの課題文でいうと、
猫とねずみを目で追っているだけの人物(西山さん)には、
猫の気持ちや、ねずみの生理状態までは
当事者じゃないので、はっきりとはわからないはずですよね?

だから、憶測で、
「眠ってしまったようだ」とか
「リラックスしているらしい」としか
いえないんです。

ただ、実際に見えていることは書けるので、
「さすがに眠くなってしまったのだろうか、
猫はゴロンと横になった」
という風には書けるのです。

この一人の視点で統一して書くというルールを守ると、
第三者がとても読みやすくなるので、
再度、念を押しておきます。


では次。

2つ、要約・洗練について

昨日――
情景描写だけが濃く描かれても、
西山さんの気持ちの描写が少なければ、
西山さんが、どんな心理になったのかということの
伝導率は低いままになってしまうんです。

と述べました。

文字数もあるので、どちらかと言えば
情景描写より、心理描写に重点を置いて欲しいので、
結果、情景描写をうまく削ったり、
ポイントだけおさえるようにして
洗練させていく必要があると思います。

重ねていいますが、
確かにある程度克明に書かなくては、
心理描写をいうときに説得力はだせません。
ですが、そのシーンが第三者の脳裏に浮かびさえするなら、
どれだけ削ってもいいはずです。

> 猫が家中を走り回っている。お目当ては一匹のねずみ。
> ねずみは、人の目には見えない程の速さで逃げている。
> 逃げるんだったらもっと遠くへ逃げろ!

娯楽性の高い、目に浮かぶような
いい文章なんですけどねぇ。
これなら、読んでる人にも
ああ、そういう楽しげな絵が浮かんだんだーなるほどー
と思ってもらえるので、とってもいいんですが、

---
一匹のねずみを追って、猫が家中を引っ掻き回している。
ねずみもすばしっこいが猫も早い! 
---

ぐらいで、ハラハラしそうな絵が浮かぶようなら、
―― 逃げるんだったらもっと遠くへ逃げろ!
の部分は(心理に近いですが文字数的に)、冗長になってるということなので
削っても大丈夫でしょう。


> ねずみが家具の隙間に隠れた。
>猫は忍び足で探したが、見つからない。
> じっとしてあたりを監視していたが、
>眠ってしまったらしい。
> つかの間の休息だ。ねずみも猫が追ってこないと見て
>リラックスしている。
> 平和だ。何もないと物音一つない。
>こんなに静かなんて気づかなかった。

---
ねずみが家具の隙間に隠れ、見失う猫。
猫はしばらくじっとあたりを窺っていたが、
やがて疲れたのか横になってしまった。
猫とねずみのつかの間の休息。さっきまでの騒ぎが嘘のよう。
物音ひとつしない静寂なひととき。
---

臨場感は少し落ちたかもしれませんが、
脳裏に浮かぶイメージはあまり変わらずに、
短くなってませんでしょうか?

文字数的に削る必要があれば、
だーっと書いたあと、心理描写のために
伝えなければならないポイントだけ抑えて、
要約・洗練していきましょう。

重点を置いて、濃く、豊かに描かれなければいけないのは、
このイメージが浮かんだときの、
西山さんの心理の方のはずなので。


で、最後。

3つ、豊かな表現について

です。


人は、油断すると、
ラクにくくれてしまう言葉で
表現しようとしてしまいます。

---
とても感動した。

めちゃくちゃ楽しかった。

すごく興奮した。

なんだか悲しくなった。

かなり癒された。
---


これだけ、言われても
はっきり言って何も伝わりませんよね。

どんな風に、どれぐらい感動したのか?
どんな風に、どれぐらい楽しかったのか?
どんな風に、どれぐらい癒されたのか?

ここで手抜きしてはいけないんです。
むしろ、ここに一番力を入れて
深く考えるべきなんです。


たとえば、

「なんだか温かくなった」

という気持ちになったとき。

その温か味の手応えをぐっとたぐりよせて、
吟味し、第三者が
「なるほど、ああいう感じね!」
と分かるるようにたとえを出して
表現してほしいんです。

---
春の陽光がさしこんだ新緑の森の中で、
のんびり森林浴しているときの、
あの清々しい感じの温かさを感じた。
---

のか、それとも

---
屋根の上に広げて干してある布団の上に
ごろんと横になった時の、そう、あのホワホワとした
お日様の匂いに全身が包みこまれた時のような
そんな温かさだった。
---

のか。

どうでしょうか?

それぐらい掘り下げて書いてあげると、
その人の感性はもちろん、
どんな温かさを感じたのか、
第三者にも想像してもらえて
伝わりそうじゃないですか?

「ねぇ、ねぇ、ミスチルの新曲きいた?
メッチャいいい感じの曲っていうか、
マジ超感動したんだけど!」

友達間ではこれでもなんとなく伝わるでしょうが、
一般の大人の第三者には
きっとわかってもらえないですよね?
特に、実際に声で伝えてもらうわけじゃなく、
文面だけではなお更、何も伝わらないでしょう。

では、

「なんか結婚式とか、卒業式で歌われそうな曲なんだけど、
小さかった頃の思い出とかさ、
風邪ひいたときにお母さんがお粥作ってくれたときの
味とかさ、
足の骨折った時にお父さんが
半泣きで病院連れてってくれたときのこととかさ、
なんか、とにかくそういう昔の思い出がぐわーっと
頭の中をめぐってしまうようなさ、
そんな感じの曲で、もうわけわかんないうちに
心がヒリヒリしてきて、涙こぼれそうになったりする曲なの!」

な感じだったらどうでしょう?
大人でも分かってくれる人がいるんじゃないでしょうか?
その子なりの感性で、感動した感覚を
伝えようとしてますよね?

自分だけが分かるようにじゃなく、
第三者が、
「なるほど、そういう絵が浮かんで、
君がそんな風に感じるような曲だったのか」
と、分かるように、
感じたこと(心の動き)を具体的に
表現することを意識してください。
※自分の心の動きをつかみ、たどって、
その手応え・感覚を第三者にわかってもらえるには
なんて言ったらいいか、考えるようにしてください。

細くは以上です。
ラストスパート、焦らずに
のびのびと頑張ってください。

ではでは。

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水もしたたる真っ白い豆腐がひどく焦った様子で煙草屋の角を曲がっていくのが見えた。醤油か猫にでも追いかけられているのだろう。今日はいい日になりそうだ。 ありがとうございます。貴方のサポートでなけなしの脳が新たな世界を紡いでくれることでしょう。恩に着ます。より刺激的な日々を貴方に。