『や、愛したいじゃん』
や、宇宙を一皮ペラッて剥いたらもうみんな螺旋なわけじゃんか。人生=螺旋なわけじゃん?
あの、お婆ちゃんやお爺ちゃんの味のあるシワみたいな螺旋がさ、それぞれの螺旋に刻まれて進んでいくんわけじゃんか。どうしたって。
なんならもうDNAにしたって、はなっから二重螺旋なわけだしさ。こっちの世界じゃ人は死んだら骨になるけどさ、生きた証を――その本質をかたちにしなきゃならないとしたら、一枚向こうでは“飼い殻“なわけじゃんか。や、それはもうどうしたってそうしたいじゃんか。
つまりどんな人生もみんなそれぞれ美しいよって、肯定してる立場を暗に提示してるわけじゃん。骨より団子って言葉もあるし、武骨無骨(ぶこつぶこつ)したくないし、やっぱそこは螺旋で、貝で、ファンタジックに『飼い殻』なわけじゃん。じゃん?
そのさ、“螺旋を盗まれた“ってことはさ、「自分の人生がない」ってことじゃん。自分だけの螺旋を永遠に刻めない女の人なわけじゃないのゆさ?
そんなひとがさ、宇宙の向こう側でさ、人の骨もとい、それぞれどうしようもなく生まれて、生きて、精一杯死んだ証である“飼い殻“を拾ってくれてるわけでしょ。それを眺めて慈しんで、ことあらば、こんな人もいたんだよって、お店で待ってて、そっと寄り添ってくれるわけじゃん。
だのに、その張本人には螺旋がなくて、自分の人生がなくて、ひろい宇宙の真ん中で、ひとりぼっちでずっと飼い殻拾いをして、僕らを見守り続けてくれてるんじゃん。死んでいった螺旋たちを見つめて、慈しんで、愛でてくれてるんじゃん。
そんなひと、もう愛したいじゃん。アイロニーじゃん。ぼかぁ、愛したいなあ。って話じゃん。
でも、だれが、なんで、盗んだんだろ。
神様にいたずらした罰かな。
恋しちゃいけない人を愛して、いくところまでいったからかな。
人間が犯してきた、や、犯し得た罪の中でも、もっとも重い罪を犯したのかな。
それか、やっぱり人じゃない幻想世界の住人かな。
アゾットの神々のひとりかな。や、堕天使かな。
ま、どうあれ、愛したいじゃん (❀ฺ´艸`)
何があったか訊いてみたいなあ。
時間ならたくさんあるから。
なんなら永遠とひとつになってもいい。
千夜一夜、億夜千夜、寝物語を聞かせておくれ。
水もしたたる真っ白い豆腐がひどく焦った様子で煙草屋の角を曲がっていくのが見えた。醤油か猫にでも追いかけられているのだろう。今日はいい日になりそうだ。 ありがとうございます。貴方のサポートでなけなしの脳が新たな世界を紡いでくれることでしょう。恩に着ます。より刺激的な日々を貴方に。