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うたがわきしみの宇宙Ⅱ

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140文字では収まりきらなかった、うたがわきしみの世界観。コラムやエッセーやうわごとじゃない。あくまで、なにかしら、きしみの宇宙を匂わす作品になっているものたち。主に詩。ギャグ系…
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#ポエマー

『ラストクローン』

百万回蘇生を繰り返して、 生きながらえてきました。 もう一度貴方に会いたくて……。 でも、 そろそろ記憶の劣化が限界に達したようです。 もう、あなたの顔も声も思い出せません……。 ただ、あなたの欠片のような温もりだけ、 まだ、胸の奥にあります。 どれだけこの日を待ちわびたことか。 ついに、貴方が目覚める日が来たのですね。 なのに、それを、心から、喜べないなんて…。 だから、神様は、私に意地悪をしたのですね。 次のクローニングで、 「貴方を知ってる私」は 完全に消えること

「朝と夜と君と僕と」

朝陽は颯爽と君のもとへ。 風は激しく僕の背に。 夕陽はゆっくり君のもとへ。 闇は密かに僕の中に。 月光は静かに君のもとへ。 雨は優しく僕の上に。 星々は等しく君らのもとへ。 雪は儚く僕らの上に。

「求めるもの」

皆に遅れることがそんなにいけない? みんなと同じことが出来ないのがいけない? 授業をうけたくないのは、わからないからなんだ。 わからないから耐え難くつまらないんだ。 みんなはどうしてわかるのに、 僕にはわからないんだろう。 ただただ苦痛に耐え、 耐え切れずにサインをだせば、 比べられて叱られて叩かれて。 先生は死に神で、この世は地獄だ。 僕に生きる価値などないのか? 世の中すべてがつまらなく思えてくる。 どこかに行きたい。 ここではないどこかなら、ど

僕は君を見つけた。 君も僕を見つけた。 見つかりあった。 だから今ココにいる。

むなしい抱かれ方する夜人形 あたし

きちんと途方に暮れた空を連れていく

溺れても優しい

睡眠と同じくらい君が好き

花は言い訳しない

春を漕ぎ ぶつかり始めた 顔に虫

「自分はこのままでいい、変わらなくていい!」 と思えるように変わりたい。 (うたがわきしみ)

『夜空をポケットに』

むかし夜空がまだカーペットだった頃 砂漠には月の欠片がたくさん落ちていて それを目印に旅をしていた 星の骨を拾う気持ちで 涙の化石を探しては ただひたすら途方にくれていたっけ あのときの夜空が今では宇宙を包み込み まとった星さえ泣かせてる さざめくようにしか輝けない 僕の空みたいに

『雪』

眼を穿つ 白き声 流るる水に溶け そぞろ歩く盲の巨児となる "群れなす孤独"という名の嗅覚 大地の乳房は がむしゃらに齧りとられ 天球は乳白色の汚泥と化した 分裂する狂気細胞 アルビノの双子の蝶 絶望を信じた神々の息子たち 彼らは冬の壁に額を打ち付け みずから砕け散り 凍える夢となり果てた 舞い落ちる白銀の鱗粉 さざめく命の肖像 ――雪 ※詠み 穿つ(うがつ) 盲(めしい) 巨児(きょじ) 乳房(ちぶさ) 齧り(かじり) 天球(てんきゅう or そら) 汚泥(おで

『甘え裾』(あまえずそ)~突発的発作的うたがわきしみ句集~ 追いすがる 透かしむらさき 甘え裾 背に隠れ くわえ紫紺の 甘え裾 あと追いの 揺れて紅藤 甘え裾 母追いし 濡れるむらさき 甘え裾 母の背で しやぶるあやめの 甘え裾 甘えずそ たぐるレースの こむらさき