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うたがわきしみの宇宙Ⅱ

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140文字では収まりきらなかった、うたがわきしみの世界観。コラムやエッセーやうわごとじゃない。あくまで、なにかしら、きしみの宇宙を匂わす作品になっているものたち。主に詩。ギャグ系…
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2021年8月の記事一覧

巨大な大王ヒラメが雲の上を滑空していくのが見えた。追われているのか一心不乱に深めの雲海に潜ろうとしている。 ひと雨きそうだな、食料用に採取していた三メートルはあるヒカリクジラダケの傘の下で殻皮を丁寧に剥ぎながら独りごちると、手乗りゴリラの群れがその足下を涼しい顔で通過していった。

泣きたい時に 泣けなくなるのが 大人になるということなら 大人になんかなりたくない ならなくていい けして

花は咲く 人は死ぬ 種は残る 歴史も残る

三千層もの地獄を切り抜けここまで辿り着いたが、89点と90点の間に横たわる価値概念の溝の深さにはさすがの俺も足がすくみ、絶望の二文字が物理的に脳裏をかすめた。全ての言語や思想が具現化され、林立した世界を彷徨い一体何年の月日が流れたのか。”死後の世界”が文字通り眼前に浮かんでいた…

「あんたが描いてる作品は確かに見てくれはいいし、綺麗にまとまってる。だがしょせんそれは花束の美しさでしかないんだよ。花束をいくらかき集めたところで、大地にしっかり根を張って、自分の力で芽吹き、春夏秋冬を越え、生き抜いてきた素朴な花たちの生命力とそのリアリティには太刀打ちできない」

どんな方法も手段も 関係ありません 心しか届きませんよ 最初から

僕の中で誰かが叫んでる たぶん、俺だ

『とんとんとんのトントントン』

とんとんとん お疲れさん 誰かに肩を叩かれた これが噂の トントントン お役御免の とんとんとん そうではないよ とんとんとん ホントにホントの トントントン 毎日お疲れ とんとんとん 頑張ってるね トントントン 誰かに言って欲しかった 言ってくれない世界なら 自分で叩こう とんとんとん ホントにお疲れ トントントン ときには優しく ポンポンポン 温まるように ポンポンポン 調子に乗って とんとんとん まだ見ぬ明日に トントソトン 心の底から とんとんとん 自

ほんとは地球自体が、生命体を移植されたノアの箱船だったんだけどね 今じゃ、神様の実験施設だよ 放置気味だけど かれこれ50億年くらい… もしかしたら忘れちゃってるのかも あの人たちにとっては、50億年なんて マバタキみたいなものだからね

もしもこの星が 僕のために用意された 巨大な棺だったらどうしよう… #SF #詩人 #そんなことばかり考えています

なつかしさを 聴けなくなったらいけないよ 魂の重さは 小糠雨くらい 覚えておくといい 結局 螺旋にしか住めないし 流れながらとどまり 戻るようにしか進めない だから なつかしさを 聴けなくなったらいけないよ 動かない星があるのは あそこだけ 風の羅針盤で 声を辿るといい

月に見放された子供は 自らの灯りをひそめ 夜に身を寄せるしかない 上手に階段をのぼれない生き物が 転げ落ちていく吹き溜まり 不釣り合いの笑顔 狂喜殺人を犯すクラスメイト 世相を斬れないコンプライアンス 深海魚のそれ 天使という悪魔がいることを 知っているのは 夜の子供たちだけ

『名医の条件』 医者には三つの段階があるという 一つ目は、一時的に痛みや病を取り除くことができる医者 これでその場は凌げるが、時間が経てばぶりかえすため患者は何度も通わねばならない 二つ目は、完治させ医者いらずの人生を歩ませる医者 そして三つ目は、そういう医者を育て増やせる医者だ

要するに 太陽に見放された種族なんです 夜の空気しか吸えず 30年もの間 不謹慎病棟で暮らしてきました 胸の中の海が零れそうな日は わざとあくびをしたり 自分を犯したり 誰のせいでもなく 望んでもないのに 悪魔の鼻くそみたいな人生で 誰も人間の轍を 残してくれなかったから