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うたがわきしみの宇宙Ⅱ

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140文字では収まりきらなかった、うたがわきしみの世界観。コラムやエッセーやうわごとじゃない。あくまで、なにかしら、きしみの宇宙を匂わす作品になっているものたち。主に詩。ギャグ系…
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2020年4月の記事一覧

さっき、ずしん・・・ずしん・・・って 本屋が歩いてるの見たの 中には入らなかったの だってけっこう大股で歩いてるし お追いつくのも面倒だったんだもの #詩 #あるいは死のようなもの

まるで歩く手紙です #一行詩

時間に風はない

『黒猫の曲がり角』

その街で 曲がり角を曲がりかけた 黒猫の後ろ足と尻尾だけを 何度も見かけた だが一向に 面と向かってその姿を 拝める気配はなかった すぐに追いかけ 曲がり角を曲がってみても 毎度もぬけの殻 ある日 ひどく爛れた赤い夕陽が 西の空にもたれるようにしがみつき その血で 最後の仕上げとばかりに 曲がり角を真っ赤に染め上げていたとき ふいに あるいはついに あの黒猫と 出会い頭に鉢合わせした 猫は身じろぎもせず ずっとこちらを待っていたかのように 落ち着きを払っていた そ

『透明な私』

荒野にポツンと秘密小屋 裏には大きな焼却炉 焼かれる前の赤い下駄に 白い蝶々が優雅に止まる それもすぐに灰になった また少女が一人 人形を抱いたまま 顔のない夫婦に連れられて 小屋に入った レンガで骨を潰すような鈍い音と 鋸を挽くような小気味いい音が しばらく続いた 焼かれる前の人形に また白い蝶々が止まった やがてそれも灰になった 私はただ それを見ていた 小屋の中で あるいは外で 私はただ それを見ていた

私をあなたの海に沈めてください #一行詩

笑いたくても 笑えなかった人たちが 少なからずいたってことを 忘れずにいること #神々の手記

大丈夫大丈夫 もしそれがダメやったら また別の方法試せばええし あっちがダメなら こっちに行けばええし こっちがダメでも まだそっちもあるし 人間 眺め方を変えれば 道なんていくらでもある せやから まずは思うように やってみたらええやないか そう言ってくれる人が少ない国

あんた人の目見て笑えるんやなあ

これまでは ひたすら影が君たちに 寄り添ってきた 君たちが どこで何をしても 逃げもせず 文句も言わず 無報酬で付き従い ただじっと君たちを見ていた だが今日からは 君たちが影に付き従う番だ 逃げもせず 文句も言わず 無論無報酬で 影たちの気の赴くまま 断じて付き従ってもらう

言葉を滑らすだけでは 詩にならんでしょ もっと不器用にならないと 不器用に 絞り出しても 絞り出しても もうそれしか出てこない そういうものを ぽとりぽとりと呻くようにこぼしていって はじめてそこに重力が宿るんよ 学校では 誰も教えてくれんもんね 不器用になりなさい 詩人は

込める心が無いことを暗黒というのです #一行詩

めがおおきくて たのしいね てがひろくって うれしいね かみがくろくて ひかったね おはながちってて まっかだね おそらがまっさお よかったね みんなさわると あったかい みちもさわると あったかい うごかないのに おかしいね さむくなったら てをつなごう みちと

「後悔しかありませんよ」言って ニカッと笑う笑顔の深さ リアカーを押して進む黒い二の腕 汗を吸った軍手の上にだけ広がる青空 シワの隙間に探しかけた生の残滓 ただひたすら生々しく立ちのぼる影の匂い 車輪の下で溶け出した瓦礫 眼には動物のごとき”今”しかなく 今を生きてる詩だった