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ポテサラ胡麻マ吉村貫一郎

ポテトサラダをよく作る。
ジャガイモを茹でて潰すのが面倒なのですが、何故か作りたくなる。ちょっとしたアレンジで様々な味わいの変化が楽しめるのも魅力。ということで、また新たな味付けのポテトサラダを作りながら、新選組でもっとも強かった男?を妄想した記録。


材料

ジャガイモ 4個
玉葱    半分
胡瓜    1本
人参    半分
水菜    1株
マヨネーズ 大匙4
練り胡麻  大匙2
塩麹    大匙1

南部盛岡藩士だった吉村貫一郎、脱藩して江戸で隊士を募集していた新選組に加入。剣術指南役、副長助勤等を歴任。
そんな彼が新選組に加わったのは尊皇攘夷のためとか、幕府を守るという志のためではなく、妻子五人を食べさせるため。
いくら内職をしても苦しくなるばかりの生活に耐えかねて脱藩、羽振りがよかった新選組に加わり、他の隊士が派手に散財して遊ぶ中、守銭奴と蔑まれながらも蓄財に励み、貯め込んだ金子は故郷で暮らす妻子へと送金。
天下国家のためではなく、妻子という自分にもっとも近い者のために剣を振るい続けた吉村。


胡瓜を小口切りにして塩を揉み込んで5分以上放置。

大政奉還、王政復興の大号令と時勢が移って行き、幕府が斜陽化するにつれて新選組も衰退期へ。
鳥羽伏見の戦いで奮戦した吉村、他の隊士達とはぐれて、大坂にあった南部藩の蔵屋敷へ出頭。帰参を願い出るが、家老の大野次郎右衛門は許さず、切腹を命じる。
吉村、もはや逃れられぬ運命として切腹を受け入れたものの、介錯もない切腹は相当に苦しく、なかなか死にきれなかったもののようで腹を切った後、喉を突き、目を突き、首を切りと凄まじい死に様。切腹した部屋は血塗れだったが、そこには二分金10枚が遺され、妻子への送金を頼むとの遺言。


拍子木形に切った人参を茹でる。

というのは、浅田次郎の小説「壬生義士伝」に描かれた吉村貫一郎。
映画やドラマにもなったので、多くの人が知っているかもしれませんが、この話の元ネタは子母澤寛の「新選組物語」
実録物のように書かれてはいますが、虚実ないまぜであり、読み物としては面白いものの、史料的な価値はあまりなさそう。
子母澤自身も面白い話はすべて私の創作ですと言っていたそうです。
「壬生義士伝」自体が子母澤と思われる人物が新選組ゆかりの人物を訪ね歩いて、吉村の足跡を調べて回るという構成の小説。


玉葱を細切り。

実際には南部藩には吉村貫一郎なる人物は存在せず。となるとすべてフィクションかというと、そうとも言えず。新選組関係の文書には吉村の名前は出てくる。
南部藩士の中で、吉村に名前と経歴が似た人物を探すと、嘉村権太郎なる人物がいるとか。
この人物、江戸で剣術修行していたが脱藩。この嘉村の変名が吉村貫一郎ではないかと言われています。
現実の吉村貫一郎は年齢も20代?妻子五人というのも疑問とか。
更に大野次郎右衛門なる人物も存在せず。


マヨネーズ、塩麹、練り胡麻を混ぜ合わせる。練り胡麻が固く、なかなか混ざらなくても根性で混ぜるべし。

どうやら新選組に加わるために脱藩したという辺りまでは本当かと思われる。
妻子がいた風が感じられないとなると、妻子を養うというよりも尊皇攘夷のためか?
死亡時の年齢も「新選組物語」や「壬生義士伝」に描かれている35,6歳ではなく31歳?
二百石という禄を貰っていた武士の倅だったので内職をしなければならない程の赤貧とも思われないとか。


茹で上がったジャガイモをマッシャーで潰す。

死亡時の状況も「壬生義士伝」とは異なる話が伝わる。
鳥羽伏見の戦いで戦死。或いは大坂にて脱走の末、殺害されたとも。
局を脱するを許さずが鉄の掟の新選組、特に負け戦だからと逃げ出すようでは粛清されたとしても止む無し?(あくまでも脱走が本当ならばという仮定の話です)


水気を絞った胡瓜、人参、細切りの玉葱と水菜を加えて混ぜる。

新当流の遣い手で江戸で北辰一刀流を修行したのは本当なようです。
「壬生義士伝」では油小路の戦いや天満屋事件等の血生臭い争闘の場面にも吉村はいたように描かれていましたが、実際の吉村は情報収集とか、新選組が屯所を不動堂村に移す時に西本願寺と交渉したりといった裏方仕事を担当することが多かったようです。
「ようです」とやたらと書いている自分に気付く。つまりは曖昧模糊とした人物ということ。


ジャガイモが冷えてから、胡麻マヨを混ぜる。でないと油分が分離してしまいます。

実際の吉村は監察方という言わば諜報部隊のような仕事をしていたことから、あまり自分のことを知られる訳にはいかなかったので、個人的なこともあまり明かしていなかったのでしょう。その辺りは山崎丞と似ているか。


ポテサラ胡麻マ吉村貫一郎

練り胡麻の濃厚味がマヨネーズに移り、とっても濃い風味。塩もみした胡瓜をそのまま入れているので塩味は十分。塩麹は補完的な物と思って下さい。
仄かな甘味あるしょっぱさの塩麹が深みを与える。

私は「壬生義士伝」や「新選組物語」は嘘っぱちだと糾弾している訳ではありません。むしろ逆。
実像がよくわからない人物を膨らませて、多くの人々に感動を与える物語へと昇華させた浅田次郎や子母澤寛の手腕に感動。
超一流の物語の作り手だったと思います。
また物語の読み手も、こうあって欲しいとかこういう人物がいて欲しいという潜在的な願望があり、その要望と吉村貫一郎の人物像がぴたりとはまったということか。
霧の中にいるような吉村貫一郎の虚実を妄想しながら、ポテサラ胡麻マ吉村貫一郎をご馳走様でした。

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