#1 髪は透くもの

「女子小学生」、とは言われなかった

「女子中学生」は、まだ便宜的に使うこともあったかもしれないが、中学生を指すときいちいち性別が強調されることはそれほどなかった。
 

「女子高生」が、何時からその存在自体にブランドイメージを孕み、現実のただの未成年の学生から、フィクショナルな記号として世の中に濫用されるようになったのだろうか。

通勤時見かける学生達を見ていると、わたしが学生だった頃に比べてどことなく身なりなどが洗練されている気がする。
都内の学生だからというのもあるだろうが、わたしが学生だった頃、当時周囲にいた子達の中でも「女子高生」とは気性は荒々しく、見た目は今の10代の学生と比べてずっと粗野だった。

髪とは透いてしかるべしもので、真っ直ぐ切り揃えられた黒髪は当時の田舎ではそれはそれはダサさの象徴であった。

「愛のむき出し」の満島ひかるちゃんのような(ウルフカットというらしい。名前からして獣性に溢れている)髪形が系統として近い。 眉は今よりもっと細く、薄い方が垢抜けて見られ全体の毛量は少ないほど良く、茶色く染めていれば尚良かった。携帯電話はまだまだ折り畳み式であったが、インターネットの存在は未成年者の生活の中にかなりの深度で食い込んでいた。

女子高生という名詞から、「コギャル」ほどインパクトのあるイメージは既に消え去っており、分かりやすくハッキリした言葉で表せられない、とらえどころの無い世代だったと思う(一応ゆとり世代という嘲笑的な世代名は有ったが、取り囲んでいた文化の特徴、政治、世界的出来事の影響の受け方等の包括性には欠けていた)。

が、女子高生のファッションに関しては一応上記のような「型」のようなものは、頼りなくもうっすらと有った。

そんな一応は存在していた当世の女子高生風の流行からも外れて、自分が学生で女であるということ以外は不定形で頼りない、アメーバのようだったわたしが女子高生を主役にした漫画を描くにあたり、度々(時には激しい)内面の葛藤が起こった。

「女子高生」という身の丈に合わない記号を背負わされて、何の輪郭も持たず、グチャグチャとした細胞の塊だった自分がどうやって女子高生を漫画のキャラクターとして客体化するかという問題と、1年強の間、ジタバタ格闘することになった


続く

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