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予言ではなく仮説

昨年支援した、とあるチェーン店のフランチャイズ店舗として創業した方から連絡をもらった。「加藤先生の予言通りの状況になりました。」というもの。

私は仕事では予言はしない。霊力も使わない。


私がやったのは、予言ではなく「仮説」


推理のようなものだ。この場合、予言が当たったのではなく、仮説が検証されたのだ。私の経営の師匠は、この「仮説検証」のやり方にとても厳しい。

このフランチャイズは、全国で有名なチェーンではなく、できたばかりで、加盟店は全部で20件に満たない。フランチャイズは飲食だが、もともとは全く違う業種である。店舗の出店費用や材料費・人件費は、店舗を運営する側の負担。逆にフランチャイズ提供側のほうは、毎月のロイヤリティ売上の30%のほかに、原材料の卸販売を行う。メニューの企画はフランチャイズ提供側が行う。POPや包装紙の制作については、フランチャイズ提供側が行い、店舗側のほうが制作費を支払う。

店舗側の売上は、場所にもよるが、私がアドバイスした店舗は、だいたい月80万円~150万円程度。

加盟店の支払いは以下の通り。

<本部向け>
30%のロイヤリティ =24万円~45万円
POP&包装紙代金=2万円
材料費(20%)=16万円~30万円
__________
合計 42万円~77万円

それ以外に、約13万円の家賃と、バイト3名の人件費だ。3名の人件費が月20万円と仮定すると、売り上げ80万円の時は、粗利がたったの5万円ということになる。初期投資分を返済すると、自分の給料は出ない事になる。持ち出しの状態だ。
150万円の月の場合、経費が110万円になるため、40万円手残りするが、そこから光熱費や税金の支払いと、借入返済を行う事になる。

この状況の加盟店が20店あるとする。

本部側の収入は、月840万円~1540万円。そこから経費を引いた残りが本部の利益となる。 ここからは完全推理だが、仮に本部に5名の従業員がいたとしよう。商品レシピ開発をする要員である。5名で1か月の人件費300万円程度と仮定する。大手広告代理店を使い、テレビCM等をバンバン流している。これはおそらく数千万かかっていると思われる。広告宣伝費月300万円と仮定する。300万円+300万円で、600万円の経費がかかり、840万円収入があるため、240万円の粗利となる。 ※ 実際はもっと細かく計算する

この条件下だと、加盟店側に不利である。

 
加盟をやめる店舗が増えてくると仮説を立てることができる。

大手広告代理店の仕掛けで、最初こそ珍しくて売れるかもしれないが、だんだん売上が下がってくる。売上80万円を切ってしまうと、加盟店は毎月自分の給料分と、借入返済分、約25万円くらいを毎月持ち出す事になる。初期投資が大きい業種なため、借入返済は15万円程度になる。

加盟店をやめる店舗が出てくる事になる。


フランチャイズ加盟をやめる店舗が出てくる


一方、加盟店が抜けてしまったフランチャイズ提供側は、材料の卸も減り、ロイヤリティも減る事になるが、膨大な広告宣伝費は減らない。 売上が、最低かかる経費600万を切る事になれば、今度は本部側が赤字となる。 1店舗の平均上納金が60万円だとすると、全体で加盟店が10店舗を切ると赤字になるという仮説が成り立つ。

こんな感じで仮説をたてるのだ。実際は上記計算は20分くらいで行う。

ビジネスモデルを考える


今度は、商材の特徴を考える。 このフランチャイズが取り扱う商材は、季節性のものである。 ここがもう、ビジネスモデルが破綻する原因になっている。売れる時期と閑散期を考慮して、また式を作る。
 
で、導き出した結果があと4件、加盟店が減ると、ビジネスモデルが破綻し本部が立ち行かなくなる というものだった。 売れる時期から逆算するとその状態になるのが、4月ごろという仮説もできた。

そして、私の仮説通りになり、本部から、「加盟料の値上げ」と、「材料費の値上げ」のお知らせが来る事になったのだった。


私はその時のためのアドバイスをした

今の売上のまま、加盟料の値上げと材料費の値上げは到底許容できない。店舗の立地から、売上が上がる要素があまりない。
なるべく早いタイミングで離脱したほうが良い。 設備は残るため、材料の仕入れ先を見つければ、店舗は看板を変えて継続できる可能性がある。

この過程で一ミリも霊力は使わない。
これが普段の私の業務である。

本当に予言するときはまた全然違う。一定の条件下でしかやらないし、限られた人にしかやらない( ´∀` )


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