コラム【2】距離短縮ってどういうこと?

そろそろクラシックを諦めて、マイル路線に方向転換する馬が現れてくる時期ですが、そんな時に役立つお話しを1つ。

競馬において、その馬の適性距離を知ることは馬券的中において重要なポイントの1つです。そんな中で頭を悩ませるのは、これまで使ってきた距離とは違う距離を使った場合です。

1F(ハロン)、つまり200m程度であれば、ペースの違いはそこまで大きくないため、おおむねどの馬でも対応は出来るのですが、400m以上の延長や短縮、例えば1,600m⇒1,200mや2,000m⇒2,500mといった場合、ペースがかなり変わってくるため、その馬にとってプラスになるか否か、すぐに分かるものではありません。

よく競馬専門紙の談話で「刺激になると思って」「気性が前向きなので」といった理由の下に、距離短縮する理由を話していますが、それら人間の思惑通りに変わるかと言えば、そうとも言えないことも多々。。

ただ、これまでの戦績、つまりどういった距離で、どういったペースで走った時に好走或いは凡走しているかが分かれば、ある程度推し量ることは可能です。

距離短縮はメリットよりデメリットの方が多い!?

2F以上の短縮はえてして1Fあたりのラップが速くなります。と言われてもイメージしにくいと思いますが、人間に置き換えれば、先日書いたこの話の通りになります。
(ちょっと長くなってしまいますので、リンク先をご覧ください)

かいつまんで言えば、距離が短くなればなるほど、ある一定の距離を走り抜くのに求められるスピードはより高くなるということです。競馬でもこれと同じことが当てはまります。

なので、距離短縮というのはある程度スピードがあり、長い距離ではスタミナが持たない馬や、気性が前向き(激しい)でスローだと掛かりやすい馬であれば成功しますが、逆にスピードがない馬は、そのスピードについていくだけで精一杯となり、バテてしまいます。

現在の日本競馬ではどの距離においてもスローペースが多い傾向にあります。

通常、マイル(1,600m)では600mの通過タイムはおおよそ35秒前後、1,000mの通過は1分を切るのですが、2018年2歳~2019年3歳の未勝利/新馬戦ではマイル戦で1,000m通過が1分2~3秒というレースが散見されました。これは2,000mのレースですらスローペースと判定されるような遅さです。

極端に言えば、マラソンを走る時のスピードで100m走をしているようなものなのです。

馬がそうしたスピードに慣れてしまうと、距離短縮はマイナス方向に向かいます。もちろん、能力でついていけてしまう素質ある馬もいるので、スローペースでしか走ったことがないから「消す」というわけではありませんが、もしもその馬が断然1番人気だった場合、敢えてその馬を軸にするよりも、他の馬を軸に予想を立てる方が儲かる可能性は高まるわけです。

距離短縮を、「走る距離が短くなる=楽になる」と単純に考える人もいますが、事はそうシンプルではありません。距離が短くなる分ペースが速くなるというリスクを背負うということを頭に入れないと、バカを見ます。

このことを覚えておくだけで、「何で人気してんの?」って思える馬が出てきますし、そういった馬を消せるので、決してマイナスではありません。

ここからは距離短縮に失敗した事例を見てみましょう。

【失敗例①】ヘリファルテ

2018年11月3日(祝)東京10R ノベンバーステークス 芝2,000m

ヘリファルテはレイデオロらと同じ世代で、デビューが4月と遅かったのですが、デビュー戦でいきなり未勝利戦を勝ち上がると、次走プリンシパルSでは負けたものの、500万⇒1,000万と連勝。降級後、1年の休みを経て10月の本栖湖特別でもいきなり勝利し、1,600万下まで進みました。これら実績と、M.デムーロが騎乗するということもあって、オッズは1.6倍の断然1番人気に支持されていました。

しかし、この馬について、注意すべき点が2つありました。
① 500万下から本栖湖特別まで3戦すべて2,400mで勝っている点。

デビュー戦こそ2,000mでしたが、それ以降は距離延長によってそれ程スピードは問われることなく勝ってきたわけです。しかもどれも1,000m通過が1分3秒前後とかなりのスローでした。

②ノベンバーSで一緒に走るメンバーに、コスモイグナーツという明確な逃げ馬がいた点。

この馬は、これまでの戦績を見れば分かる通り、とにかく速いペースで逃げる馬。ペースがかなり流れる(速くなる)ことが予想されました。

こうした危険な点があるにも関わらず、1.6倍という人気。仮にこの馬が馬券内を外せば、配当が上がります。上に挙げた危険な点があるならば、敢えてこの馬から賭ける必要性はありません。他にも上位に来れそうな有力馬がいましたので、そこから賭けることにしました。そして、結果は私の読み通りとなり、ヘリファルテは1着馬から0.9秒も離され7着と負けました。

前述の通り、ヘリファルテが馬券外に飛ぶ可能性は十分に予見できました。実際、コスモイグナーツは速いペースで逃げ、1,000m通過は59.7秒。ヘリファルテは最後方から追走しましたが、これまで経験したことのないペースに脚を使ったのでしょう、上がり3Fは34.3秒。3番手で先行した3着のマイネルファンロンよりも0.3秒遅かったのです。

【失敗例②】ホウオウパフューム

2018年12月28日(金)中山12R ベストウィッシュカップ 芝1,600m

そこまで人気があったわけではないですが、紐に入れた人は多かったかもしれません。
ホウオウパフュームはモズカッチャンやディアドラと同世代の馬で、2017年11月に未勝利戦を勝ち上がると、翌年1月の寒竹賞も勝って連勝し、4月に行われたフローラSでは1番人気に推されました。が、そこで大敗。その後のクラシックレースでも全く通用せず、秋は1,000万下からの再チャレンジとなりました。
1,000万下の条件戦では、距離延長して中山の2,500mを勝つと、長距離に拘ってローテーションを組みますが、またも振るわず、1,000万下降級後は2,600m⇒2,000mへと距離短縮をします。初戦こそ3着とはまりましたが、また次走で馬券外に飛び、完全に距離適性を掴めないまま彷徨っていました。そんな中での1,600m戦。

とは言え、そもそも2,500mや2,000mで戦ってきた馬なのに、いきなりマイル初挑戦は流石に無謀。さらに、2,000mの2戦を見直せば、初戦3着した時は馬場が稍重、2戦目は良馬場だったことから、追走スピードを問われるとダメであることが明らかです。そんな馬がマイルに行ったところで通用することはないのです。案の定、11着と大敗。2桁着順はオークス以来で、自己条件では初のことでした。

ちなみに、上記にさらっと書きましたが、馬場が重くなるとスピードよりもパワーが問われるので、距離短縮が上手く機能する場合があります。ただ、それはあくまで馬場が渋った場合であって、良馬場になると結局ダメということも多いです。

【失敗例③】ポルトラーノ

2019年1月27日(日)東京5R 3歳未勝利 芝1,600m

もう1つ、よく見かける飛び方をする事例を挙げておきます。自分は本命党でも穴党でもないのですが、配当は高ければ高い方が良い(誰でもそうか)ので、ルメールにはよく逆らっています。
そんな中でよくルメールがやってくれるのがこの人気背負って距離短縮で飛ぶパターン。

ポルトラーノは新馬戦で2着となりましたが、1,000m1分3秒というクソスロー。次走の未勝利戦は上位5頭が強かったですが、これも1,000m1分3秒。こんなスローになれた状態で流れるマイルに距離短縮したらそりゃ簡単に飛びますわな。

結果は2番人気で先行して1.1秒差9着の大ぶっ飛び。きっとヤジもあったでしょうが、自分からすれば距離短縮で危ないと見抜けない自分が悪いだろって言いたい。

簡単にラップの差を見てみましょう。

11/11 東京4R 未勝利戦
13.2-12.0-12.4-12.8-12.6-12.7-11.5-11.1-11.5

1/27 東京5R 未勝利戦
12.7-11.6-11.6-11.9-11.9-11.3-12.1-11.8

前半600mで1.7秒、1,000mで3.3秒も違います。なかなかピンとこないかもしれませんが、
だいたい5~6馬身で1秒の差と言われているので、これを基準にすればイメージが沸きやすくなるのではないでしょうか。

とまぁこんな具合ですが、挙げれば他にもボンボン出てきますので、
そういった馬を探してみるのも面白いかもしれません。

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