今年の大阪杯を考えるにあたって
今年の大阪杯はメンツが豪華!
最強世代の呼び声高い4歳世代からダービー馬ワグネリアンに、
古馬重賞で馬券内に絡み続けるステイフーリッシュ、
古馬最強とも謳われたレイデオロを破ったブラストワンピース、
そして並居るマイル強者を倒したステルヴィオ、
さらに先輩世代から上がり馬エアウィンザー、
ジャパンカップ世界レコードの立役者キセキ、
天皇賞・秋2着のサングレーザー、皐月賞馬アルアイン、マイルCSで競り合ったペルシアンナイト…等々
GⅡ、GⅢに出てくれば厚い印を回さざる得ないような馬達が一堂に会するのですから、
なかなか予想しがいのあるレースになりそうです。
ちょっと長いですが、今回は自分が馬の能力を推し量る上で最も根幹になっている考え方を書いてみました。是非読んで頂ければ幸いです。
鍵はやはりキセキ
川田騎手がダノンプレミアムを回避させてまでキセキに乗るのですから、いきなりのGⅠ挑戦とは言え、状態が悪いとか叩きだとか、そういったことはなさそうな気がします。
馬場が悪くなりそうな宝塚記念よりも、ここを取りにくることでしょう。
メンツを見ても逃げそうなのはこの馬くらい。
鍵はやはりこの馬と言えそうです。
じゃあどう考えるか、ですが、ここでちょっと「スピード」について考えてみましょう。
基礎スピードという概念
皆さんは、100mの陸上選手と10000mの陸上選手が、1000mの距離を競ったら、どっちが速いと思いますか?
“スタミナさえ持てば”100mの選手の方が速いハズですよね。
何故ならば、100mの陸上選手と10000mの陸上選手とでは、普段、一定距離(例えば10m)を走るスピードが全く違うからです。
日本記録で計算してみましょう。
100m 9.98秒 ⇒10m 0.998秒
10000m 27分29秒69⇒10m 1.649秒69
10mを走るのにおおよそ0.6~0.7秒程度の差があります。
私はこれを「基礎スピード」と考えています。
つまり、短い距離を走る人ほど基礎スピードが高く、
長い距離を走る人ほど基礎スピードが低い、という考え方です。
もちろん、100mの選手も走る距離が普段より長いのは分かっていますから、10mを1秒切るようなスピードで走ることはないでしょう。
でも、いつもより少し緩いペースで走るわけですから、普段よりも楽な状況で走ることになるわけです。
一方、10000mの陸上選手は、普段よりも速く走ることが求められます。
普段10mを1.65秒とかで走っているところを、もっと速いペースで走らなくてはならない。ということは、100mの選手よりもきつい状況で走ることになります。
仮にスタミナが全く同じだった場合、どちらが先にバテるか…分かりますよね…普段よりきつい状況の方がバテやすいハズです。
意外とこういうことを分かっていない人っているんですよね。
昔、テレビ番組で短距離を走っている子供と、長距離を走っている大人とで、例に出したような中間くらいの距離を走ったらどうなるか、っていうのをやっていたんですが、子供ですら圧勝。
当たり前ですよね、基礎スピードが違い過ぎるんですもの。この企画を考えたやつもアホなら、通したやつもアホだなって思いました。
こうした考え方は競馬においても通用します。
端的に言えば、基礎スピードの高さは、
スプリンター>マイラー>ミドル>ステイヤー
こんな具合です。
ベースの距離の数字が大きいですが、1200mと1600m、1600mと2000m、2000mと2400m以上では求められるスピードがだいぶ変わってます。
キセキのつくるペース
このことを念頭に、昨年の毎日王冠~ジャパンカップまでキセキが参戦した3戦のペースを見てみましょう。
※有馬は流石にキセキがテンですぐに行けなかったように疲れなどもあったのと、稍重だったので除外
■毎日王冠 1,800m
12.8-11.0-11.5-12.0-11.7-11.7-10.9-11.2-11.7 (1,000m通過 59.0秒)
逃げ馬…アエロリット
■天皇賞・秋 2,000m
12.9-11.5-11.8-11.5-11.7-11.6-11.3-10.9-11.6-12.0(1,000m通過 59.4秒)
逃げ馬…キセキ
■ジャパンカップ 2,400m
12.9-10.8-12.2-12.3-11.7-11.8-11.7-11.4-11.4-11.0-11.4-12.0(1,000m通過 59.9秒)
逃げ馬…キセキ
スローペースが多い現代競馬において、1,800m以上の中距離では1Fあたり12秒~13秒台が当たり前なのですが、この2戦はスタートから200mを除けばすべて12.0秒以下、しかも緩んでもせいぜい中盤で11.6~7秒というかなり厳しいラップ。
ジャパンカップは流石に距離が長いので、序盤は少し緩んでますが、800m地点からは11秒台を刻み続けるラップとなっています。
※一般的に1F(200m)あたり11秒~12秒はペースとしては速いと判定されます。(200m12秒は時速にして60km)
さて、毎日王冠はマイル路線で上位にいるアエロリットが逃げたわけですが、キセキが天皇賞・秋で逃げた時のラップと比べてどうでしょうか?遜色ないと思いませんか?
ラップを比較する限り、キセキにはマイル馬並の基礎スピードがあると想定されるわけです。
ややこじつけ感がないと言えばウソになりますが、
例えば過去と比べてみると、天皇賞・秋でこれだけ淀みのないラップを刻んだレースは2008年のみ。
(それ以外は全体時計は速くても6~3F区間のどこかで少し緩んでいる)
昔からの競馬ファンならご存知でしょう。
ウオッカ、ダイワスカーレットが戦った天皇賞・秋です。
ダイワスカーレットは元々マイルを走っていましたし、ウオッカも言わずもがな。
こういったところからも、キセキの逃げが如何に高いスピードが要求されているかが分かると思います。
キセキに先着している馬の共通点
さて、そんなキセキですが、有馬を除く秋3戦はいずれも馬券内には食い込むも負けています。
キセキを負かしている馬達は、アエロリット、ステルヴィオ、サングレーザー、レイデオロ、アーモンドアイ
この5頭ですね。レイデオロはこの共通点から外れるので、除いて…
アエロリット、ステルヴィオ、サングレーザー、アーモンドアイ
この4頭を見て気づくことはないでしょうか?
皆GⅠ馬? サングレーザーが違いますね。
先行? ステルヴィオは毎日王冠で差してきました。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
答えは皆、マイルからの転戦馬であるということです。
アエロリットはNHKマイルを制覇し、安田記念では牡馬相手に2着、
ステルヴィオは昨年のマイルCS制覇、
サングレーザーはGⅠこそ勝っていませんが、一昨年のマイルCS3着、昨年のマイラーズC1着、スワンS1着、阪神カップ3着…等々、短距離実績は豊富。
アーモンドアイはシンザン記念、桜花賞制覇。オークスも1,000m1分を切るタイトな流れを先行して上がり最速33.2秒という驚異的な数値をたたき出しています。
そう、つまり、キセキの作りだすタイトなペースに対応するには、高い基礎スピードが求められるマイル以下での実績が必要だということです。
そういう意味でレイデオロはマイル実績はありまえせんが、キセキのペースに対応できるだけの高い能力を持っていると言えます。
マイルで勝てる程度に高い基礎スピードを持っているということは、中距離で多少キツいペースにも対応できるということなんです。
基礎スピードが高いからこその好走
例えばサングレーザー。彼が1着になった札幌記念(全16頭)では、
稍重ながら1,000m通過が59.1秒とハイペースになりましたが、
こんな具合でした。
これを見ると、1着と5着を除けばかなり後方にいた馬が上位にいます。
一方サングレーザーは中団より少し前、スティッフェリオは先行しています。
通常、こういう成績を見た時、「あぁ、後ろが恵まれたんだな」と解釈します。通常、フラットな決着だと位置取りはバラつくはずですからね。
つまり、後ろは前が潰れたから後ろから来れた、先行~中団に位置どった馬にはかなり厳しい競馬だったということです。
そう考えると、サングレーザーは結構優秀ですよね。
中団にいて追い込んできたマカヒキと遜色のない上がりも出しているわけですから。
これが、サングレーザーの基礎スピードの高さの一端を示しています。
例え稍重でハイペースでも、12秒台が何度もありますから、マイル経験馬にとっては多少楽できるペースなわけです。
それはそうですよね、安田記念で11秒前半が最後の200m手前まで続いた超タイトなペースを経験しているわけですから。あの時に比べたら全然へっちゃらなわけです。
でも、基礎スピードが低い中距離馬にとっては普段走っているよりもかなりキツいペースになってしまう。結果、凡走となってしまうわけです。
オークスで分かる基礎スピードの高低
もう1つ基礎スピードについて考える上で面白いレースが昨年のオークスです。
最初、このデータを見た時何が起こっているのか、よく分かりませんでした。
パッと見は先行勢が上位なので前残りと言えるのですが、ペースはミドルペースでタイト。ということは先行勢が決して恵まれたわけではありません。
さらに不可思議だったのは、先行馬が軒並み差し馬よりも速い上がりを使っているという点。
通常、「上がり3F(ハロン)」というのは後ろに位置どっている馬ほど速く出せる環境にあります。後ろにいる馬というのは、ペースについていけない鈍足馬を除けば、前の馬よりもスピードを落として走っているため、余力を残しているからです。
よく調教師や助手の談話で「前走着順はイマイチだけど、最後方から上がり最速を使ってきたから今回は期待」とかってコメントを見かけますが、前にも述べた通り、よっぽどの鈍足でない限り、普通は「そんなの出せて当たり前」なんです。(逆に言えば、先行して上がり最速というのはそれだけ強いということなんです)
にも関わらず、オークスでは後ろにいる馬の上がり3Fは先行勢よりも遅かった。これはどういうことか?
答えは上位勢のメンツを見れば分かりますが、1~5着まで皆マイルからの転戦馬なんです。サヤカチャンが引っ張るペースがきつくなっても、難なく対応出来たマイル勢に対して、サトノワルキューレやパイオニアバイオは1,800m~2,400mの中~長距離で結果を出してきた馬たち。
スタートもマイル勢の方が速いので、位置はとれないし、ペースはきついから早めに動くことも出来ないしで、成す術なく完敗という状態でした。
一方のマイル勢は、これもサングレーザーの時と同様、多少流れても平気なペースを経験しているので、皆最後まで余力があった。だからこそ距離の壁を克服して中距離馬たちよりも先着できたわけです。
また、ここでサトノワルキューレの基礎スピードの低さも伺えます。
前走1着で勝ったフローラSはほぼ最後方から追い込んで上がり3F33.4秒。
それに対して、オークスでは中団に位置取り、上がり3F34.9秒。
位置を取りに行った途端、速い上がりが出せなくなっています。
しかもすぐ後ろにいた、差しが得意でないオールフォーラヴよりも上がりの脚が0.5秒も遅い。
位置を取りに行った途端、スタミナに余裕がなくなり上がりの脚が使えなくなった、ということは、追いかけるのに精一杯になった=基礎スピードが低いということを表します。
※基礎スピードと上がりの脚の速さは別物ですが、それはまたとこかの機会で説明します
ちなみに、フローラSは前半スローですが後半は割と流れており、ラップ的にはオークスの方が前半キツいとは言え、そこまでかけ離れてはいません。
これにより、以降サトノワルキューレに対しては、ローズSで△、金鯱賞で消し、という具合に全く評価していません。
で、今回のメンツは?
さて、少し話が逸れてしまいましたので、話を戻しましょう。
今回の出走馬でマイル実績があるのは、アルアイン、サングレーザー、ステルヴィオ、ペルシアンナイト、この4頭です。
この4頭で決まるとは思いませんが、キセキ以外からいくのであれば、軸はこの中から選ぶのが最適かもしれません。
では逆にブラストワンピースやワグネリアンはどうでしょうか?
方や日本ダービーを制し世代の頂点に立った馬、方や有馬記念を制した馬。いずれも能力には疑いようがありません。
ですが、2頭ともにマイル実績はなく、ハイペースの中で勝った経験はあれどマイル並のペースではないですし、何より相手が弱かった。距離を2,400m~2,500mに延ばして勝ってきただけに、果たして基礎スピードがそこまで高いかと言われると疑問符が付きます。
例えばワグネリアン。弥生賞では上がり最速ながら、先行したダノンプレミアムに完敗しています。いずれも叩きということで本気で戦ってはいないものの、追いつきそうな気配はまるでありませんでした。ダノンプレミアムもマイルからの転戦馬だったように、結局基礎スピードが非常に高い馬には先着できていないわけです。
また、ブラストワンピースは1,800mの毎日杯で2番手先行した経験もありますが、これも中盤は12秒台が続いて少し緩んでいます。さらに、新潟記念では2,000mながら1,000m通過59.2秒とだいぶ流れたものの、相手が相手だし、後方待機。この手の戦法で勝ってきた中での相手強化は、サトノワルキューレの二の舞になりかねません。
もちろん、2頭ともレイデオロのように能力でスピードを凌駕してくる可能性もありますので、消しはしないと思いますが、あくまで押さえ。恐らく2頭並び立つことはあり得ないでしょう。この2頭を軸にする方はある程度その辺りを織り込んだ方が良いかなと自分は思います。
以上が、大阪杯を予想するにあたっての考え方です。仮にこの考え方を信頼するとすれば、自然と印も簡単に当てはめられるんじゃないかなと。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?