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私にとっての最高の一日を考えてみる

目覚ましの音ではなく、自然と目が覚める。
遮光ではない薄めのカーテンから光が入ってくるのを見てその先の窓に視線を移すと、白いビーチとそれに続く空色の海が広がっている。海がその色を映す青い空は、空と海とが溶け合ってしまったかのように海との境界線が分からなくなっている。一目惚れしたこの景色を毎日見たくてこの場所に引っ越してきた。淡い潮の香りがふわりと風に乗って髪と遊んでいる。絶え間なく聞こえる波の心地よい音を大きく吸い込んだ。

今日も一日がはじまる。

一緒にベットに寝ていたサバトラの飼いネコが足もとに来てまん丸な目でじっとこちたを見て空腹を訴えている。”わかったよと”頭をなでてあげると、小さく”にゃー”と返事をした。

”かわいいね”なんて言いながらご飯をあげていると、当たり前だと言わんばかりの目でこちらを見てくる。”それはあざといよ?”と小さくつぶやいて、私も朝ご飯のしたくにとりかかる。今日の朝ご飯はハムチーズたまごのホットサンドにしよう。

ホットサンドを温めている間にお茶の準備をする。透明のグラスに響くカラリという音が涼しい。昨日作っておいたピンクのハイビスカスティーをグラスにそそぐと、透明のグラスの中で氷が小さくカラカラと音を立てて泳ぐ。その様子が可愛くてグラスをのぞくと、ハイビスカスティーのピンクと窓の向こうに見える海の青のコントラストを見つけてしまった。思わず寝室に置いていたカメラとグラスをもってテラスに出た。

目を細めると水面を眩しく照らす太陽と目が合って思わず目を細める。それを笑うかのように、ほほを潮風がなでていく。陽の光が当たる場所にグラスを置いて、ピンクと青のコントラストを写真におさめていると、キッチンでネコが鳴いている。忘れていたホットサンドの存在に気づき、慌ててキッチンへと戻る。ホットサンドは無事に救出することができた。。

部屋の窓を全開にして、部屋の中をくるくると遊ぶ潮風とともに朝食を食べる。Maroon 5の”Sunday Morning”をBGMにぼんやりと外を眺めながら今日は何をしようか考えてみる。

真っ白の砂浜で散歩もしたいし、テラスのハンモックでお昼寝もしたい。
水平線に沈む夕日も見たいし、満天の星空も見なきゃ。
いつもより太陽が低いうちに起きれた今日は何でもできる気がした。

朝ご飯の片づけをして、朝の涼しいうちに散歩に出かける。
真っ白なさらさらの砂をはだしで散歩したくて、靴を履かずに浜辺へ出かけた。思ったより温度が上がっている砂浜と浜辺で遊ぶ白波の温度差が気持ちいい。そのまま波と遊びながらゆるりと砂浜を散歩する。

気づいたら家が小指の爪ほどに小さくなってしまっていた。太陽も高くなってきて、肌にじわりと汗が浮かんでいる。そろそろ帰らないと家に着くころには汗だくになってしまうと、慌ててきた道を折り返した。さっきよりも少し高くなった太陽を、手をかざして確認する。青い空に小さな雲がいくつか泳いでいる。”今日もいい天気になりそうだ”と小さくつぶやいた声はだれに届くこともなく、遠く青い空に溶けていく。

 

お昼まで仕事を頑張ったらお昼寝をしよう。今日はいつもより早く起きたから。と自分に言い聞かせてパソコンを開く。
「世界中どこへ行ってもいつても仕事ができるように」
そう言って始めたこの仕事も今はライフワークとしてすっかり生活の一部になっていた。
波の音や、潮風が木々を揺らす音が心地よく耳に入ってくる。
この場所にきてから、仕事中にパソコンでBGMを流すことがなくなった。

 

気づくとお昼ご飯の時間を過ぎていた。フルーツを切ってテラスへと運ぶ。昨日近くの市場で買ってきたフルーツは、おばちゃんに何度名前を聞いてもヒアリングできなかった、名前がよく分からないこの国でお気に入りのフルーツ。この家で一番好きな場所であるテラスのハンモックに横になり、サイドテーブルのフルーツをつまみながら小説を読む。もちろんBGMは波の音。
この場所に来てすぐには分からなかったが、少し時間がたった今、潮の満ち引きの影響だろうか、1日の中でも波の音が少しづつ変わっていくのが分かるようになってきた。

 

ふと目が覚める。いつの間にか寝てしまっていたらしい。きっとここで寝てしまったんだろうというページを開いたままの本がおなかの上で寝ていた。そのまま少し、波の音に意識を溶かていく。まだまだあたたかい風が顔の上にかかった髪を掃っていく。このまま再び寝そうになるのをこらえて上半身を起こした。少しだけ仕事の続きをしよう。そう思い立ってパソコンを開き、今朝の続きを書き始めた。

仕事が一息ついたとき、窓の外へ目線を映すと、ちょうど空がオレンジに変わり始めていたところだった。気づいたらカメラをもって外へ出ていた。
家の前の浜辺へおり立つと、同じように1日の終わりを見届けようと数人の人が浜辺へ来ていた。ここに住もうと決めたのも、この水平線に沈む夕日が見たかったからというのが一番大きな理由だったりする。

波打ち際まで絶妙な距離を保った場所で持ってきたストールを敷いて座る。
少しだけ涼しくなってきた風を大きく吸い込んだ。あんなに青かった海は、いつの間にか、オレンジ色に色を変え、太陽まで一本の金色の道ができていた。空には太陽のオレンジをまとった雲が浮かんでいる。

波の音を聴きながら地平線に夕日が沈むのを見る。
1日で一番好きな時間がゆっくりと過ぎていく。
まるでじりじりと音がしそうなほどに燃えるように光る太陽に向かって、シャッターを切っていた。

地平線に太陽が沈むその瞬間を迎えても、少しその場所から動けないでいた。オレンジが紫に変わり、紫はが星空に変わる一瞬一瞬から、ずっと目を離せないでいた。
移り変わる空と海の表情に、ずっとシャッターを切り続けていた。

満足したところで、すっかり周りは暗くなっていて、海とは反対の方をふりかえると、いくつかの家で明かりがともっている。窓から漏れる白やオレンジの暖かさに、早く帰らないとという気持ちにさせられる。

 

帰宅してすぐ、ネコにご飯をあげる。今日1日どこにでかけていたのか話してはくれないけれど、近くの公園に咲いている花の花びらを頭に1枚つけて帰ってきた。
一緒に私も夕食を取ることにした。簡単にパスタを作り食卓につく。夕食にお酒は欠かせない。ストックしてある大好きなお酒を一つあけた。今日一日を思い返しながら大好きなクリームパスタをほおばる。ふとカレンダーを見ると明日が新月だった。明日も晴れたら明日は星空を撮りに行こうと明日の自分と約束する。

朝がいつもより早かったからか、いつもよりも早い時間に眠くなってしまった。手早く寝る準備を終わらせて早めにベットに入った。頃合いを見計らって、ネコも一緒にベットに入ってくる。可愛いやつめ。

 

1日の最後にカーテンの隙間から見えた星空に、明日の晴れを予感して、そっとまぶたを閉じた。

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