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Garmin トレーニングステータス攻略(実践編)

前回の記事、Garmin トレーニングステータス攻略(基礎編)で書いた内容を実際のトレーニングで私がどのように取り組んでいるかについて書きます。
基礎編を見ていないという方は是非そちらを先に見て頂ければ。



はじめに

この記事はともすればGarminの数値を良化させる小手先のテクニックと捉えてしまいがちな内容を含みます。

しかし本来的な目的はあくまでもGarminとうまく付き合い、アンプロダクティブを回避し、プロダクティブな状態を目指してVO2maxを向上させていくことです。
その過程でアンプロダクティブに陥る原因も理解することができますし、そうなれば回避することもそう難しいことではありません。

以下は私の1年間のステータスです。
Garminの仕様について理解が深まった後半はアンプロダクティブに悩むことはなくなりました。3月のアンプロダクティブも体調不良によるものです。
またこの間 GarminのVO2max値は 61→74 と上昇しました。

年間のトレーニングステータス変化


彼を知り己を知れば百戦殆からず

Garminは心拍と出力(パワー)の比から調子を判断しています。
どんな時に好調で、どんな時に不調なのか。まずはそれを可視化します。

私のデータを元にした話でも大まかには適用できるとは思います。
しかし心拍については最大値も維持できる数値も、エネルギー代謝の閾値も全く異なります。
さらに出力についても体型(体重)が異なれば数値は大きく変わります。
これら個人差の大きい二つの変数の比、どう考えても差が出てきます。

少々面倒ですがやはり自分の体についてはご自身で確かめることがオススメです。

パフォーマンスコンディションをリアルタイムで観測する

やり方は簡単。Garminのサイクルコンピューターのトレーニングページにパフォーマンスコンディション(以下、単にコンディションと表記します)を表示させましょう。

サイクルコンピューター上でのコンディション表示

難しく考えずとも、しばらく見ていればこれがプラスになりやすい状況、マイナスになりやすい状況が理解できてくると思います。
オススメとしてはやはりインドアでのワークアウトトレーニングですね。状況の再現性が高く状況と体の反応を照らして理解しやすいかと思います。

表示しなくともGarmin Connectで後から確認することもできますが、変化を見るならばリアルタイムで見るのが良いと思います。
また、Zwiftの場合 Garmin Connect へZwiftからの連携でログを転送するとコンディション値は記録されません。面倒ですが、サイクルコンピューターからログを転送しましょう。

コンディション観察の注意点

見ろと言っておいて何なのですが、コンディションを常時見ることそのものはオススメとは言い難いです。

それはコンディションが「メチャクチャ気になる」からです。
プラスでイイヨー!調子イイヨー!と言われてるうちはいいのですが、大きくマイナスだったりするととてもテンションに影響します。数字以上に調子が悪く感じます
正直あまり健全ではないかな と感じますので運用には注意が必要です。

私はインドアトレーニングでのみ常時表示、実走時は帰宅後にGarmin Connectで後から確認をするに留めています。

実際のアクティビティ中のコンディション変動

ということで、私のデータでアクティビティ中にコンディションがどう動いているか見てみます。

Ultimate Warm Upでの変動

Ultimate Warm Up時のパワー、コンディション、心拍

ウォームアップWOの多くは各段階にある程度滞在するビルドアップなので傾向確認に適しています。

最初のL1、L2パワーゾーンではコンディションが計測されていません。これは基礎編でも書きましたがコンディション計測がMAX比70%程度以上の運動を対象にしているからです。私の場合は140bpm辺りということになりますが、この段階ではまだその心拍への滞在が不十分ということです。
(実際にはL2の途中から計測は始まっていますが、値が確定するには数分程度の時間が必要)

この日はL3に入ってから計測されていますが調子がイマイチの日は心拍が上がるのが早く、L2ゾーンの終盤辺りでコンディション表示が始まります。
これだけでも「その日の調子が良い/悪い」ことを理解することができます。

基礎編でも述べたように低強度帯…というよりも心拍70%~75%の範囲では低い数値が出がちです(ここはかなり個人差があると思います)
なので計測の初めはマイナス値から始まっています。しかしL3,L4とゾーンが上がるにつれて心拍は80%付近になりコンディション値が上がっています。

その後1分のレストを挟みますが、ここの終盤でコンディション値が1下がっています。
出力が下がっているが、心拍の低下は遅れているのでここではGarminが「あれ? 出力の割に心拍高い…?」となっています。
ただGarminもバカではない、ちゃんと様子は見てるのでいきなり-5までドーン!みたいなことはしません。
コンディション値を下げないためにはレストで速やかに心拍を計測範囲外の70%以下まで落とすことがコツになります(1分レストでは短すぎるので落としきれませんが)

最後のL5パワーゾーンでも変動はありません。これは時間が1分と短い為でしょう。もう少しこのパワーで踏み続ければコンディション値も上がるはずです。コンディション値を上げるために一定時間の滞在が必要なことがわかります。

そしてクールダウン時にも変動はありません。この後さらに5~15分程流していますがそこでも変動はありません。心拍を意識的に計測範囲外の70%以下に落としているからです。
ここで何も考えず中途半端な強度で流しているとみるみるコンディション値がマイナスされていきます。

この日のコンディション値は最低値が-3、最大値が+3、最終的には+2で終了していますがこれは日によって変動します。
-5から始まる時もあれば+1までしか上がらないこともあります。終了時には±0という時も。その違いがその日の調子いうことです。

VO2maxの上がりやすいWO?

巷でVO2maxが上がりやすい? なんて話も時折流れるWOにCarsonがあります。実際にコンディション値はプラスになりやすいです。
その理由については上記ウォームアップの動きを見れば概ね理解できます。

Carson+2ワークアウト

・上がりやすいゾーンと十分な滞在時間
・メリハリのあるレスト
・インターバルという特性

L3、L4辺りの効率的なゾーンに5~7分滞在し、しっかり心拍の下がるレストを挟む。連続的な負荷では通常心拍は基本的に疲労によって徐々に上がっていくが、インターバルによってほぼリセットされる。

※)たまにレストの強度を上げている人を見かけます。
  心拍が十分に下がらない強度になっていればコンディション値としてはマイナスに働くことがあります。

じゃあCarsonばっかりやってたらいいじゃん。
と、思うかもしれませんが上がりやすいメニューで数値を上げてもコンディション判定の基準は自身のVO2max値である以上、根本的な体の機能が上がっていなければ基準だけが上がり続け頭打ちします。

また、いくら上がりやすいといっても疲労して調子が下がれば結局コンディション値は下がります。続けられるSSTと呼ばれるCarsonですが、疲労は決して小さくありません。

Carsonの繰り返しだけで強くなることもあれば、別の刺激が必要なこともあるでしょう。それ自体はその時々の状況次第ですが、GarminのVO2maxの値と共にCarson実行時のW/HRが上昇しているならちゃんと強くなっています。

アンプロダクティブを回避する戦略

コンディション観察を完了すれば、その時点である程度対策は出来ているようなもの。以下は私の戦略ですが特にこれに拘らず、ご自身のコンディション値の変動を見ながら調整頂ければと思います。
単純にコンディション値が負値でなければアンプロダクティブになることはありません

調子のいい日に頑張り、悪い日は素直に退く

風邪をひく等の体調不良を除外すれば、アンプロダクティブになる最大の原因は調子の悪い日に頑張ってしまうこと。
言葉にすれば当たり前のことですが、トレーニングを頑張っている人は概して例え調子が悪くても頑張ってしまうものです。

調子の良い時に中高強度を攻めた場合、コンディション値が負値になることはほとんどありません。
逆に悪い時は負値になるばかりか、心肺への疲労をさらに蓄積させてさらなる調子の悪化を招く悪循環に嵌ります。

これは私の経験から感じたことですが、
パワーは出せないことはないけれど思った以上に長続きせず力尽き、心拍は高いのにそれ以上踏めない
といった状態はかなりの頑張り過ぎ赤信号だと思います。

ウォームアップでその日の調子判断を

出来れば毎回同じようなウォームアップを実施してその日の調子を測ると良いと思います。

私の場合は上記の"Ultimate Warm Up"を実施してコンディション値が

3:優 2:良 1:可 0以下:不調

といった感じで確認しています。
この時にコンディション値に必ずしもあらわれない筋疲労の体感も併せて考えましょう。筋疲労を感じる場合「1:可」であっても中高強度を見送ることを選択肢にしています。

この"Ultimate Warm Up"でコンディション値が負値になるのは

・体調不良や病み上がり?
・基準になる現在のVO2max値がなんらかの影響で高い

ぐらいの印象です。

調子が良いなら中高強度を攻める

調子が良い時であればSST、閾値走、インターバル、各種TTいずれでもコンディション値は基本的にプラスになるはずです。
より良い状態を保ちたいならばこれらアクティビティ中はメリハリのあるレストを心がけるなどして効率を上げていきましょう。

つなぎの低強度でアンプロダクティブになる?

調子の良くない日、高強度による疲労をコントロールする日には低強度トレーニングを挟むケースが多くなると思います。
やり方は人それぞれですが、心拍の70%辺りをターゲットにするケースが多いのではないでしょうか? 私の場合も心拍ゾーンだけで決めているわけではないのですが、結果的に70%~75%辺りをターゲットにしています。

ただ、先にも述べましたが個人差はあると思いますが心拍70%~75%辺りはコンディション値が悪くなります。
何も考えずに低強度トレーニングしてると、人によってはグングンVO2maxが下がってアンプロダクティブ一直線になる可能性があります。

低強度でのアンプロダクティブ回避する方法

じゃあ低強度やめよう。 は、流石に極端です。
GarminのVO2maxの低下させず低強度トレーニングする方法は3つ。

  1. 心拍をMAX比68%以下に抑えてライドする

  2. 少しゾーンを上げて、インターバル形式にして強度調整する

  3. ウォームアップを実施してログを一旦切る

単純なのは"1"で目的がリカバリー寄りならば、これが一番良いと思います。そもそもコンディション値が計測されないため、VO2maxが変動することもありません。

"2"についてはコンディション値が悪くなるゾーンは避けつつ、負荷が高くならないようレストを設ける戦略です。気をつけないとついつい踏んでしまったりしがちなので低強度になるかどうかは貴方次第な所がありますね。

私は主に"3"の方法で低強度を実施しています。
まず20分程度のウォームアップでコンディション値がプラスのログをGarmin Connectに記録します。そこで一度ログを切り、改めて低強度のトレーニングを実施します。

同日のログでウォームアップのコンディション値がプラス値であれば、低強度のコンディション値が負値であってもVO2maxが大きく下げられることはないようです。安心して低強度を積みましょう。
判定の詳細は分かりませんが、調子違いの複数のログによりGarminさん側もこちらが良いのか悪いのか、決めかねる状況を作ることが出来ているのでしょうか。

心拍70%付近で私のコンディション値が悪い原因の考察

マスクをつけて呼気を計測しているわけではないので当然ですが、GarminのVO2maxは推定値です。アクティビティ中の出力と心拍数から算出されています。
公開情報を見る感じ、外れ値などをフィルタリングして精度を高めているようですが、基本的には計測値からの外挿で推定最大値を導いているようです。

以下は"Ultimate Warm Up"でのザックリした私のパワーと心拍の関係です。

Power/HRのイメージ

傾きに差が出ており、低い所で延長すると到達点にそれなりに差が出ます。この辺りの問題で低強度でコンディション値が低いのかな、と見ています。

さらに高い心拍域でもう一段傾きが良くなっていますが、この辺りの強度だと負荷が大きく時間と共にW/HRは低下していくので見た目ほどには変わりません。

個人差が大きいのでは? と考えているのもこの傾きの変曲点は人によると思われるからです。
皆さんはどうでしょうか? 同じように70%付近のコンディション値は良くないのか、是非教えてもらいたいです。


VO2maxについて

VO2maxを向上させてプロダクティブに! と言うからにはVO2maxが何かぐらいは意識しておくべきでしょう。

VO2maxとは何か

激しい運動を始めると心臓は鼓動を早め、体は多くの酸素を要求し始めます。さらにそれを継続すると次第に無酸素性のエネルギーも先細り、有酸素系への負担はますます増加し「もっと!もっと酸素を!」と要求は激しくなります。

しかし無限に酸素を活用できるわけではなく、どこかで酸素利用の限界が訪れます。いくら吸い込んでも もうエネルギーに変換できない! この限界状態が VO2max = 最大酸素摂取量 です。
(決してL5パワーゾーンやZ5心拍ゾーンの呼称ではないです)

最大酸素摂取量というとどれだけ吸い込めるか みたいな何か1つの能力のようですが、そうではなく「有酸素能力の総合評価」と捉えた方がいいかと思います。

  1.  呼吸によりに酸素を取り込み、肺胞で血液に取り込む能力

  2.  心臓が血液を送り出す能力(心拍数x心拍出量)

  3.  血液が酸素を運搬する能力(ヘモグロビン)

  4.  血液を体内にスムーズに拡散する血管の能力(毛細血管の発達)

  5.  筋肉が届けられた酸素を取り込む能力

  6.  筋細胞内でミトコンドリアがエネルギーを生み出す能力(量と質)

これら全体のボトルネックがVO2maxを決定することになるでしょう。
そう考えるだけでもいろいろな刺激が必要になりそうですね。これだけやってりゃいい!みたいなメニューはないだろうな と感じます。

VO2maxインターバルしたのに上がらないんだけど!

VO2maxインターバルしたのに数値が上がらない!アンプロのままだ!  とか逆に 
VO2maxインターバルしたら上がった!プロダクティブになった!最高!
というのをよく見かけるんですがよく考えて下さい。そんな訳がないんです。

筋トレした後とかどうですか? 
筋トレ直後にムキムキになってない! 詐欺だ!
なんて言う人いませんよ。筋トレして体の反応を促し、十分な栄養と回復を行って初めてその効果が出ますよね。
自転車も同じですよ。刺激して、促して、ようやく成果になります。やった瞬間何かが変わってるわけではないですよ。

上がったならそれはこれまでのトレーニングの成果がその日のトレーニングで発揮された結果です。
上がらなければそのトレーニングの成果をさらに休息や低強度を組み合わせて成長を促し、次のトレーニングに備えましょう。
実施と成果には必ずタイムラグがあります

また先に述べたようにVO2maxは有酸素の総合指標です。高強度だけでなく他の刺激も適切に組み合わせて伸ばしましょう。

GarminのVO2maxには意味がない?

先述のようにGarminのVO2maxは推定値であり、他者と比較した際に数値の優劣が競技パフォーマンスと一致しないことが多々あります。このことから意味がないと言われるのを度々目にします。

確かに他者との比較にはあまり向いていない側面はあるかもしれません。
しかし、自分自身の変動を見た際には数値と状態には明らかな相関があります。数値が上がれば単純に同じ心拍でより高い出力が出せているのですから当然と言えば当然です。意味がないことは決してありません。

以下は私のVo2maxが63~64だった頃(2023.3月頃)の低強度走のデータと74である現在(2023.10月頃)のデータを見比べたものです。

VO2max値の違いによるPower/HRの差

VO2max値が10も違えばもう別人みたいです。
絶対値というよりも値の変動に着目し、自身の有酸素能力を測る指標として有効であると私は考えています。
言い換えれば「トレーニングステータスを攻略することには意味がある」と考えています。
Garminの提示したステータスをただ眺めるのではなく、歩み寄り、理解し、自身の状態を高めていきましょう。


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